![]() | デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 死人驛使 (ファミ通文庫)蕪木 統文エンターブレインこのアイテムの詳細を見る |
大正二十年、帝都。
存在するはずのない歴史の中に、人々の陰で帝都を怪異から守る十四代目葛葉ライドウの姿があった。
東京駅の近辺に、死んだはずの人があらわれるという話を聞いたライドウは調査におもむくのだが……
PS2ゲーム『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』のプレストーリーとなるノベライズ作品。
自分の本棚(読みがなは「ブックオフ」)を眺めていたらいつの間にか入荷されていて「あれ、これ微妙に品薄なんじゃなかったっけ?」と思い、普段はゲームのノベライズはスルーすることにしているのだが、なんとなく読んでみることに。
ノベライズ、それも原作をなぞる形ではなくオリジナルストーリーで、というと、原作の設定を生かしつつも、原作を知らない人間が読んでもわかるような間口の広さが重要になってくると思うのだが、その点では思いっきり落第で、あらゆる設定やキャラのあつかいが原作知らないとまるでわからないという状態。
大正時代で探偵でデビルサマナーという、魅力的なB級世界観も、時代がかった遠まわしな文章で表現しようとしているのはわかるのだが、どちらかというと手馴れていない読みにくさの方が先に立ってしまい、やたらとふらふらとぶれる視点と相まってどうも素直にストーリーを追うことが出来なかった。
ストーリー自体も、せっかくの魅力的な世界観をまるで生かしていない普通すぎる出来ばえだが、しかしこれは原作ゲームからして二作連続で世界観台無しストーリーをしていたので仕方ないのか。つうかなぜおまえらは探偵という設定をこれっぽっちも活かそうとしないのだ……
一方で、ノベライズの一番の問題点となるだろう原作とのキャラの齟齬はほとんど感じなかった。いささかライドウたんがウェットにすぎる気もしたが、もともと一言もしゃべらないキャラを主人公としてしゃべらせなけれはならなかつたのだから、この程度の違和感て済ませたのはむしろ奇跡的な手腕。
職業ニートの鳴海所長も、原作のニートからワンランク上のダメ人間へと成長していて、ほんとにもうこいつはダメだった。原作では「やる気なさそうに見えるけど、ここまでやる気なさそうな上司なんてあらかさまなフラグだから、いざという時はきっとすごいことをしてくれる」と思わせつづけておきながら最後の最後まで本当になにもしないという一味違うキャラだったので、普段はもっとダメだということがわかって素晴らしい。
仲魔もおなじみのジャックランタン、悪路王アテルイ(石原知事を殺したりする二世じやない方)、狗悪魔ドアマースと三体出てきて、いずれも魅力的に描かれているのかメガテンとしては嬉しい。
特にドアマースはライドウ大好きのツンデレ女悪魔で、発言が基本的にラブコメというよくわからない仕様で、メガテンに望まれているのとは違う層の気持ちをがっちりキャッチしようという貪欲さが凄かった。
原作では二作連続で「結局おまえはなんのためにいたんだ?」という意味不明さだったモガのタヱちゃんもなぜかライドウに対してラブコメ全開で、きつとこの作者は普段はラブコメ時空に住んでいるんだな、ということが察せられた。
なにより後半になって出てくる初代葛葉キョウジが、そのめちゃくちゃな発言と強さ、横暴な戦い方とやたらめったらとキャラが立っていて、初代デビルサマナー大好きな人間としては嬉しかった。
そんな感じでキャラクター小説としては及第点なのだが、やはり基本の文章力に疑問があるし、なによりストーリー構成がよくない。というか明らかに後半でページ数が足りなくなって駆け足で終わらせている。文章にも構成にもメリハリがないので盛り上がる場所で盛り上がらず、いつの間にか戦闘が終わっていつの間にかキャラが死んでいつの間にか物語も終わっている。
その駆け足のおかげでキョウジたんがやたら手早くしょっぽく頭悪くやられて自分的にはおいしかったのだが、やはり盛り上がり的にはどうかと思う。
本編へとつなげる物語として作るのも悪くないのだが、もともとの世界観は魅力的なんだから、一本の作品としてちゃんと作ってほしかったなあ、というのが率直なところ。
まあ、ゲームや漫画には甘いくせに、小説になると物語の構成とか終わらせ方に途端にうるさくなる人間だから、あまりノベライズ作品に読むには向いてないんだよなあ。
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