弁護士法人かごしま 上山法律事務所 TOPICS

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会長就任のご挨拶

2018-05-09 | 弁護士会・弁護士
鹿児島弁護士会発行の 鹿児島県弁護士会ニュース 4月号に掲載されました。

 
会長就任のご挨拶
  
 平成30年度の鹿児島県弁護士会会長に就任しました上山幸正(うえやまゆきまさ)です。岩本研(いわもときわむ)、本田貴志(ほんだたかし)、溝川慎二(みぞかわしんじ)3名の副会長と一緒に当会の運営に当たります。
 平成30年4月1日現在で鹿児島県弁護士会は会員数211名(女性会員数は27名)、弁護士法人26事務所を数えます。法律事務所数は127ケ所です。登録順で数えて真ん中に当たる105番あたりの会員の修習期は63期、全会員の平均年齢はおよそ46歳です。新司法試験・新司法修習を経た会員が過半数を占めています。
弁護士会の運営の視点
 弁護士の使命は基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること(弁護士法1条1項)であり、弁護士はその使命に基き誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければなりません(同2項)。
 弁護士会の目的は弁護士(弁護士法人)の品位を保持し、事務の改善進歩を図ることにあります(同31条1項)。具体的な弁護士会の運営においては、内部的には、会員が日常業務を少しでも円滑に行えるような環境を整備して弁護士の使命達成に近づけるよう務め、外部に対しては、弁護士や弁護士会に対する信頼を獲得できる行動を実践することが重要です。
 第1の視点、内部の環境整備については、司法制度改革の結果として弁護士数が飛躍的に増えた状況を前提に「いかにして弁護士が職務を遂行するに当たって必要不可欠なスキルを学ぶ機会を提供していくか」に取り組む必要があります。たとえば、近時、刑事訴訟法が改正されました。弁護士が刑事事件を処理するにあたって法改正の内容とそれに基づく弁護活動の実践を身に着けることは必要不可欠です。日弁連の総合研修サイト(e・ラーニング)などを使って個々各自が研鑽に努めるのは当然の前提です。当会では、研修委員会を中心に各種研修プログラムを実施したり職務遂行に有用な情報を内容とする日弁連作成のDVDの貸出しを行い情報提供を行います。また、弁護士新規登録から年次の浅い会員を対象として複数のベテラン弁護士がチームを組んで日常業務や個別の業務で抱える課題について忌憚なく意見交換する機会としてチューター制度を採用し実施します。
 第2の視点、外部からの信頼獲得については、残念ながら皆無といえない弁護士の不祥事を前提に「いかにして不祥事が生じることがないような制度作りをするか」「不祥事が生じた場合にどのような対応をするか」ということが問題になります。
 もちろん、不祥事対策の根本は弁護士が倫理意識を常に持って職務を行うことに尽きます。日弁連では登録後一定期間経過ごとの倫理研修を義務付けています。弁護士倫理を具体化した弁護士職務基本規程も改定を重ね平成29年12月には同規程の解説書第3版も出版されました。さらに、近時、業務の中で必然的に生じる預り金の取り扱いに関する規程を整備し一定程度弁護士会の監督が及ぶ制度を設けました。未だ預り金口座の届出を済ませておられない会員は直ちに届出をお願いします。万一、不祥事が生じた場合については、激しい議論を経ましたが依頼者見舞金制度に関する規程も整備されました。また、弁護士業務がマネー・ローンダリングに利用されないよう国際的取決めに基づき依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程も整備され,この4月1日から制度運用が開始されました。一回目の年次報告書の提出期限は6月30日です。未だ提出されていない会員は直ちに提出をお願いします。当会では、これら制度の周知徹底に努め会員の具体的な行動を通じて外部からの信頼の確保に努めます。もっとも、これらの規程や制度は履行されたから直ちに弁護士や弁護士会に対する信頼が形成されるものではなく、社会からの最低限の信頼を担保する役割しかありません。結局、私たち弁護士が日常の業務において弁護士の使命を意識しながら誠実に職務を遂行して初めて弁護士や弁護士会に対する外部からの信頼が生まれるものだと考えます。
 また、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力する方策として重要な問題や案件について弁護士会としての意見を決議や声明の形で発信することも必要になります。社会的背景を十分に理解し社会に広く受容される内容であれば外部からの信頼確保につながります。ただし、この点については様々な思想信条を持つ会員の存在を前提とする強制加入団体(弁護士登録をしなければ弁護士業務ができない団体)である当会の立場を踏まえ個々の問題についての様々な利害を考慮して慎重に対応して行きたいと考えています。
 現在、弁護士・弁護士会は、法曹養成制度改革問題、活動領域拡大問題、刑事司法改革、民事司法改革、権利保護保険問題、給費制谷間世代問題をはじめとする多数の重要かつ複雑な問題に直面しています。当執行部では、上記2つの視点を意識しながら会としての意見のとりまとめを行い運営に当たりたいと考えています。
公益活動・会務活動の意味
 弁護士は依頼を受けたり担当することになった個別の事件を誠実に処理することを通じて弁護士の使命達成をめざすのが基本です。しかし、弁護士の活動は個別事件の処理にとどまりません。弁護士会が運営する有料常設法律相談をはじめとする各種法律相談事業に参加したり、遺言・相続に関する法律相談会の主催や電話受付による生活保護ホットラインや女性の権利110番の開設などのイベントに参加して時々の法律問題の対応に尽力します。また、人権擁護委員会、消費者問題対策委員会、刑事弁護委員会、犯罪被害者支援委員会、高齢者・障害者支援委員会をはじめとして当会に40以上存在する各種委員会に所属して当該委員会の活動、いわゆる会務活動を通じて弁護士の使命達成の努力をしています。
 会務活動をはじめとする公益活動が会員の担当する個別事件の処理解決に直ちに役立つのであれば、公益活動は黙っていても隆盛を極めるでしょう。しかし、残念ながら、公益活動への参加が個別事件の処理に与える影響は間接的であり明確に体感しにくいのも事実です。そのため、公益活動に対する意識や会務活動への参加率については会員間に格差が生じています。前執行部は、この問題を放置することは妥当でないとして本年2月10日開催の臨時総会において「会員の公益活動に関する規程」を提案して会員間の公平な公益活動の負担という問題に一石を投じました。結果として、負担金を徴収する内容の提案は否決されましたが、議論は当執行部において継続して検討することになりました。その際、浮かび上がった争点は、「はたして会務活動等公益活動に支障が生じている立法事実が存在するのか」という問題でした。当執行部では、公益活動の意味を今一度会員全員で考えていただくために実情を把握する調査・アンケートを行い公益活動に関する議論の前提となる基礎資料(データ)収集に努めたいと考えています。まず、法律相談事業、各種委員会への出席状況など会員の公益活動への参加状況を記録に残すことから始めます。会員の皆様にはお手数をお掛けしますがご協力のほどよろしくお願いします。将来的には公益活動の活性化が個別事件の処理に少しでも役立つような、いわば一石二鳥の方策実現につながることを期待したいと思います。
少しばかり先のことについて
 当会の執行部体制は1年ごとに刷新されますが、少しばかり先のことについて書きます。来年度、当会から初めて日弁連副会長が選出される予定です。平成17年度の九州弁護士会連合会理事会で7県会選出日弁連副会長の最後の順番くじを引き当てた木山義朗会員が予定者です。木山会員は、本年度はオブザーバーとして来年度は日弁連副会長として日弁連理事会に出席されるほか多忙な日々を過ごされます。木山会員の日弁連副会長としての活動への協力支援をお願いします。また、2020年には、当地鹿児島において日弁連人権大会という大きなイベントが開催される予定です。すでに松下良成会員が実行委員長の労を執られることが内定しており、今年度から徐々にその準備作業が本格化すると予想されます。この点についても皆様のご協力をお願いします。
 九弁連における活動も活性化の方策が取りざたされている昨今ですが、少しばかり先のことを見据えますと、九弁連各委員会活動等を通じて他会との交流を図り連携を深めておくことは大変重要であると考えます。平成30年10月26日久留米市での開催が予定されている第71回九弁連定期大会には当会から多数の会員が参加していただきますようお願いします。まずは、日程確保をお願いします。
おわりに
 弁護士数は大幅に増加し弁護士の活動領域も拡大しました。また、依頼者の価値観はまさに様々であり弁護士側の価値観も多様化しています。基本的人権の考え方や社会正義の内容ですら弁護士個人の思想信条により捉え方は人それぞれといった面も感じられます。表層的な法律知識はインターネット上にあふれており、相談者が自分に都合の良い情報だけをつまんで私たちの前に現れることもしばしばです。ビッグデータが集積されれば、今話題の人工知能・AIが私たちの業務を脅かす存在となるかもしれません。
 しかし、どんなに時代が変わっても私たち弁護士は弁護士の使命を達成するために目前の業務に真摯に取り組んで社会に貢献することが期待されていることに変わりはありません。
 選任時のあいさつでも述べましたように、当会が直面する多くの課題も会員間のコミュニケーションを密にすれば解決に近づけるものだと思います。一人でも多くの会員に当会の活動(懇親会が特に重要です。)に積極的に参加していただき一つでも多く本音の意見交換をさせていただきたいと切に願っております。読み返しますとお願いごとばかりになってしまい恐縮ですが、皆様のご協力なしには適切な当会の運営はできません。当執行部に対するご指導ご鞭撻をいただきますよう最後もお願いして挨拶とさせていただきます。
 一年間どうぞよろしくお願いします。 
                               


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