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不利益変更禁止

2016-02-22 | 労働
退職金減額「十分な説明を」 最高裁初判断、労働者の自由意思必要


労働契約の内容である労働条件は,労働者と使用者との個別の合意によって変更することができるものであり,このことは,就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合であっても,その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き,異なるものではないと解される(労働契約法8条,9条本文参照)。もっとも,使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても,労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており,自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば,当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく,当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである。そうすると,就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきものと解するのが相当である。

上記のような本件基準変更による不利益の内容等及び本件同意書への署名押印に至った経緯等を踏まえると,管理職上告人らが本件基準変更への同意をするか否かについて自ら検討し判断するために必要十分な情報を与えられていたというためには,同人らに対し,旧規程の支給基準を変更する必要性等についての情報提供や説明がされるだけでは足りず,自己都合退職の場合には支給される退職金額が0円となる可能性が高くなることや,被上告人の従前からの職員に係る支給基準との関係でも上記の同意書案の記載と異なり著しく均衡を欠く結果となることなど,本件基準変更により管理職上告人らに対する退職金の支給につき生ずる具体的な不利益の内容や程度についても,情報提供や説明がされる必要があったというべきである。

本件基準変更に対する管理職上告人らの同意の有無につき,上記(ア)のような事情に照らして,本件同意書への同人らの署名押印がその自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から審理を尽くすことなく,同人らが本件退職金一覧表の提示を受けていたことなどから直ちに,上記署名押印をもって同人らの同意があるものとした原審の判断には,審理不尽の結果,法令の適用を誤った違法がある。


産経新聞の記事からです。

※引用

退職金減額「十分な説明を」 最高裁初判断、労働者の自由意思必要

 山梨県内の信用組合が合併を繰り返し、誕生した山梨県民信用組合(甲府市)が退職金を大幅に減らす規定変更を行ったことは無効として、旧峡南信組出身の元職員が山梨県民信組に合併前の基準での退職金を支払うよう求めた訴訟の上告審判決で最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は19日、賃金や退職金を減額するなどの不利益変更には「事前に経営者側が十分な説明を行うなど、労働者側が自由意思に基づいて同意していることが必要だ」とする初判断を示した。

 その上で、原告側敗訴とした2審判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。高裁では、原告側敗訴の判決が見直される可能性がある。

 山梨県民信組は平成16年に新たな退職金規定を導入し、職員側も同意した。しかし、旧峡南信組出身の職員にとっては、退職金がゼロになるか大幅に減額される内容だった。

 1、2審はいずれも「職員側の同意は有効」として請求を棄却したが、第2小法廷は「労働者は経営者側の命令に従うべき立場にあり、意思決定の基礎になる情報収拾能力も限られる。形式的に同意しているだけでは不十分だ」と指摘した。


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