モンスター

シャーリーズ・セロンの役者魂炸裂映画。もうそれに尽きる感じ。とにかくスゴイ。

シャーリーズ・セロンと言えば、ラックスのコマーシャルに出ていたぐらいのヒトである。ここで動画を見ることができる。あらためて見てみるとやっぱきれいです。それから、そうそう、一番最近見た映画だと、「サイダーハウス・ルール」だ。あのベッドシーンの後姿の美しさと言ったら。「サイダーハウス・ルール」の感想をこのブログに書いた時は、まじめなテーマで延々と書いたのだけど、あの後姿はかなり良かったです。後姿だけであれだけ魅せるプロポーションを持った女優さんはそういない。とにかくきれいどころとして有名なあのシャーリーズ・セロンが、ですよ、この映画では、ブクブク太って、汚い前歯(入れ歯ですよね)、汚い肌で、もうとにかく役者魂、役者根性です。オスカーもらうのも納得。っていうか、オスカーあげてくださいよ、もう、ここまでやったんですから、ってぐらいの凄さ。

ひどい境遇で育ち、13歳から娼婦として生きてきたアイリーンが、セルビーというちょっと頭がおかしいような感じの女の子に出会い、愛してしまい、連続殺人をおかしていくストーリー。実話に基づいている。ストーリーはそれだけだし、どんな境遇で育とうが殺人が許されるわけじゃないから、見ていてもアイリーンに感情移入はなかなかできない。正当防衛と言えるのは最初の1件だけだ。あとの殺人はやっぱりダメです。だから見ていてツライ。彼女の中では無理やりな正当化がおこなわれていたと思うんだけど、それは「愛するセルビーのため」っていう自分勝手な正当化で、殺された側からすれば全く正当でない。どう考えたっておかしい論理だし、そこは彼女自身じゅうぶんわかっていたはずで、でも無理やり自分の気持ちをごまかして正当化しつづけていたんだと思う。それをずっと見ている観客はツライです。セルビーがやっぱりちょっと頭のネジが抜けているような女の子で、この子とさえ出会わなければ、いや出会ってもこんな変な子じゃなければあんなことにはならなかったはずで、「あ~セルビー、お前が悪い」って感じ。

シャーリーズ・セロンの演技がものすごいんだけど、セルビーを演じたクリスティーナ・リッチも、そういう意味でけっこうすごい演技をしていると思います。見ていてイライラするタイプの依存心が異常に強く、頭がちょっと弱い、それでいて自己中心的な性格。あ~、お前がそんなんじゃなければアイリーンは殺人なんて犯さなかったのに。

まぁ、とにかく、殺した側からの視点だけで物語は進んでいきますから、殺された側の被害者や遺族がどれだけ苦しんだのか全く描かれていなくて、ちょっとでも殺された側の気持ちを考えると、「おいおい、そこでお前が泣き崩れてもさぁ。殺しておいてそれはないでしょう。」って気持ちになってしまう。あくまでも、アイリーンの勝手な自己正当化の上で行われた数々の殺人を、アイリーン側から描いた映画で、はっきり言えばそれだけ。シャーリーズ・セロンの役者魂のものすごさで魅せる映画。

ただ、シャーリーズ・セロンがこの役にここまでこだわったのは、やっぱり彼女の心に共感するものがあったんだろうなぁ、きっと。太った体系はCGじゃないし、歯並びの悪さはアメリカでは子供時代の貧しさの象徴、シミだらけの肌だってああいう生活していれば誰だってああなるわけだし。つまり、アイリーンっていうのは、同じ環境で育てばシャーリーズ・セロンだってああなっていたかもしれないってことなのかもしれない。少なくともシャーリーズ・セロンには共感できる何かがあったのだろうなぁ。そうじゃなきゃ、やれないでしょう、あそこまでは。日本でできる女優がいるだろうか。この役で、オスカーも取ったし、得られたものも大きいと思うけど、やっぱり失ったものも大きいと思う。よくやったよ、ほんと。
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コメント
 
 
 
実話ですもんねー (ビアンコ)
2005-08-09 19:01:04
先日、シャーリーズ・セロンのデビュー作、「2Days 」について書いたんですけど、あんなお人形のような人が、こんな汚れ役を引き受けるとはびっくりでしたね。全くの「別人」でしたよね。

 実際に起こったこの事件のことを、本で読んだのですが、女の連続殺人犯というのは男よりも圧倒的に少ないんだそうで...しかもたいていの場合「○○のため」という「誰か」が影にいることがほとんど。この事件は、その典型的な例ですよね。

 
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