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宮本輝/睡蓮の長いまどろみ

この作品は、う~む、宮本輝、なんか迷ってるのか? 今までの自分の作風に飽きたらなくなって、次のステップに変化しようともがいているのかなぁ。とにかくなんだか変です。いつもの宮本輝じゃない。今までよりもリアルな人間を描きたいという模索中? 今まで描いていた「立派な大人」もやっぱ普通の人間だしちょっと変わった性的趣味ぐらい持っているんだよ、ってことなのかぁ? とにかく読んでいて気持ちの良い作品ではなかった。どんな悲惨なストーリーでも、幸せを追い求める人達の姿が読んでいて気持ち良いのが宮本輝だったのに…
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宮本輝 / 草原の椅子

「星宿海への道」があまりにも素晴らしかったのと対象的に、だらだらと長いだけで、おじさん2人がなんだかやたらとお互い誉め合いながら、今の日本を嘆くだけ嘆くというつまらない作品でした。
どうしちゃったのでしょう、この作品。なんだか、たいしてカッコヨクもなく偉くもないおじさん達が、「自分達は偉くて、でも日本はひどくなってしまった。若者なんて特にひどい。」と言ってるだけのような。大体、「星宿海への道」と同じ外国の土地が出てきて、取材手抜きですか?と思っちゃったし。長い割にはテーマもはっきりせず、駄作??
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宮本輝 / 星宿海への道

肺炎で寝こんでいる時に読んだ本について、電車の中から携帯電話で投稿。
肺炎で医者に「安静にしていなさい」と言われてまず買い込んだ本。こんな時は安心して読める宮本輝だ。この小説は、本当に良かった。戦後昭和期の日本が今よりずっとずっと貧しかった時代の、その中でも最下層、底辺で暮らした人達。これぞ宮本輝作品。やるせなさ、くやしさ、怒り、いろんな感情が沸き上がってくる。重くてつらいストーリー。川三部作並みの作品のように思いました。素晴らしい。読んでるあいだは、すっぽりこの世界に浸りきってました。さすが。
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博士の愛した数式 / 小川 洋子

この本も「これも面白かったわよ」と言って母から渡された一冊だ。

中学、高校と数学が好きだった。数学の「美しさ」っていうものも理解しているつもり。うん、数学は美しい。でもこの本を読むと、ああ作家とはこんなに上手く美しい文章で数学の「美しさ」を表現できるのだなぁ、って感心してしまった。本当にうまい。改めて数学の「美しさ」にため息が出てしまう。

主人公の「私」が、だんだんと博士に影響されて数学の「美しさ」に目覚め、それと同時に一見ただの変人にしか思えない博士のまっすぐな性格やきれいな心、博士の心根の「美しさ」を理解し、博士を尊敬していく、この過程がすごく良いですね。

出てくる人がみんなまっすぐで、みんな相手を思いやって、きれいな気持ちになれる本でした。数学しか興味がないと思っていた博士の阪神、特に江夏に対する思い入れとか、なぜか子供に対しては全身全霊を傾けて保護しかわいがり尊重するところとか、不思議なアンバランスさが博士をとてもチャーミングな人に見せてくれる。愛すべき博士。

読み終わったあととてもすっきりした気持ちになれる、美しくやさしい物語でした。
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西 加奈子 / さくら

今年の春、母が入院しました。大腸を患って大きな手術をしたのです。母は読書が好きなので、手術前にお見舞いに行く度に何冊か本を買っていきました。この本は、そんな中の1冊です。手術も無事に終り、退院して元気になった母から「これ、面白かったわよ。」ともらいました。この本は、新宿の東急ハンズの近くの方の紀伊国屋書店で、時間がなくて、「店員おすすめ」みたいなコーナーで「家族の愛が描かれている」というような紹介文を見て、「これでいいや」と買ったものです。母の入院は、僕達兄弟に衝撃を与えました。超ヘビースモーカーの父ではなく、いつまでもずっと元気だとなんとなく信じきっていた母が大病を患ったのは、まるで夢を見ているようでした。病室で会う母はやはり元気がなくとても小さく見えて悲しかったのです。この本は、(中身も読まずに送ったのですが)、家族みんなが付いているよ、という気持ちを伝えたくて選びました。母は入院中は読む気分になれなかったそうで、結局退院後に読んだそうですが。

そして僕は、こんどは自分が肝臓を悪くして病院に通っている今、この本を読みました。読み始めた時、こないだ読んだ吉本ばななと比べてあまりにも文章が幼稚な気がして(ごめんなさい)気になってしまったのですが、主人公の子供の頃に戻ったところぐらいからは、完全にこの本の世界に入り込みました。そして一気に最後まで読んでしまいました。

ああぁっ、なんという話でしょう。正直こんなに泣いたのは久しぶりです。最後の章を、僕はCTスキャン検査を受けたあと、ドトールコーヒーで読んだのですが、右隣には勉強中の女子高校生、左隣には談笑をする若い女性2人という状況で、もうボロボロボロボロ泣いてしまいました。ああなんとも、素晴らしいお話でした。

僕は、4人兄弟・7人家族というとても賑やかな家で育ったのですが、この小説のようなエキサイティングなお兄ちゃんやエキセントリックな妹がいたわけではないですけど、でも子供の頃の気分をぼんやりと思い出しながら自分の家族とちょっと重ねながら読みました。今回の母の件で、札幌の兄と大阪の妹がわざわざ母を元気付けるために東京に来てくれました。東京に住む僕と姉もできる限り頻繁にお見舞いに行きました。いつもはバラバラだけど、いざとなれば協力して母を助ける、そんな自分の家族の(こっぱずかしいけど)愛を再確認できた後だっただけに、この作品はもう、ど真ん中という感じで僕の涙腺を刺激してくれました。いやぁ、いい話ですね。まだ小さな子供達2人と僕達夫婦がこれからこんな(こんなむちゃくちゃな家庭はちょっと困るけど)家庭を築いていけるのかなぁ、いきたいなぁ、とも思いました。

内容にはあえて触れません。ありきたりですが感動しました。
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吉本ばなな/虹

こんなお気楽なブログを毎日のように書いてるけど、実は今、肝臓がぶっ壊れています。
4月ぐらいからものすごーく体が疲れるので、こないだ人間ドックにはじめていってきたら、その3日後に自宅に直接電話があり、「肝臓関係の値がかな~りヤバイので、できるだけ早く医者に診てもらえ」と言われてしまった。
で、家の近くの大病院に行ったら待たされる待たされる。あまりに待たされるので、血液検査のために血を抜かれた後、看護師さんに「30分で戻ります」とことわって病院を抜けて本屋に向かった。本当は「半島を出よ」を買うつもりだったけど、かなり弱気ぎみだったため、癒されることを求めてこの「虹」を買っちゃったのだ。

いつもいつも吉本ばななの小説には癒されます。なんか心が澄んだ感じになって、きれいな気持ちで満たされるような気がするのです。
この「虹」も言ってみれば「再生」のストーリーといった感じで、病院のいや~な、元気が吸われていくようなあの雰囲気の中で、僕の心をすっきり清らかにしてくれました。
吉本ばななの小説は、ふつうは存在しないような浮世離れしたきれいな性格の主人公が、この世に存在しないようなおかしな環境で育ち、これまた存在しないような相手と恋をし、という感じのふわふわした設定が多いように(勝手に)思ってます。登場する人達の心の美しさ、清らかさ、そして、そんな人達が自分らしくまっとうに清く正しく精一杯生きて、そして幸せを手にする。だから、読後感としては、心がきれいな気持ちで満たされて、「自分らしく、しっかりと生きていけば、自分らしい幸せを手に出来る」って気持ちになれるのです。だから癒されるのです、僕は。

この「虹」は、そんなこれまでに読んだ吉本ばなな作品と比べると、もうちょっと現実的な感じがしました。ふわふわしてない。いかにもいそうな嫌な人(決して悪い人ではないのですが、つきあいづらい人)が登場するし、主人公の置かれた状況も窮屈でむずかしいのです。でも、やっぱり僕は癒されました。いいですねぇ、吉本ばなな。タヒチの写真や、きれいな挿絵もあるのかもしれません。南の島のきれいなビーチには本当に癒されます。タヒチいいなぁ、行きたいなぁ。

あ~、てなわけで、今はビールが飲めません。この暑い日々に、ビールが飲めないなんて…。
きのうは超音波エコー検査を受けました(そのあと「宇宙戦争」を見たのですが。えへへ。)。来週はCTスキャン検査と、検査結果を受けて診察があります。まだ何が原因かを探っている段階なのです。
さっさと早く結果を知りたい。
でないと、落ち着かず、映画も小説も音楽も全部癒し系をついつい選んでしまうぢゃないかぁ。

未読の吉本ばなな作品でも読もうかなぁ。久しぶりに読んだ吉本ばななはやっぱり上手い透き通るようなきれいな文章を書くなぁと思いました。読んでるだけで癒されていく不思議な書き手ですね。

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