ぽーるへ
すまぬ。
ちょっとわけあって
これまでのやりとりさておいて書きます。
昨日(3月30日)、2014年の初バスを釣った。
これを書いている今、そのバスの写真を見ることができるのか、さだかでない。
なぜなら、雨のなか撮影してもらったワダさんのiphoneが、浸水して故障してしまったから。
もう一度あのバスに会いたい。
iphoneが直ることを信じてるけど
万が一、写真がないとなれば、しのぶよすがは
ルアーにきざまれた歯形と、親ゆびの付け根の赤みをおびたささくれと、自分のカメラで撮ったヒットポイントの写真、しかない。
脳裏にも焼きつけようと、リリースするまで一生懸命に見たけれど
時間がたつにつれて、頭のなかのバスはどんどんぼやけていくばかり・・・
だから、今のうちに、思い出せるかぎりのことを書きとどめておきたいと思う。
話は2日前、3月29日にさかのぼる。
冬がおわり、三寒四温の日々もぬけて、暖かい日がつづいていた。
ついにきたか。シーズンイン。
ワダさんと明日釣りにいく約束をしているが、天気予報では嵐になるという。
今日はおだやかで暖かい。
よしと思い立って、ひとりカヤックで抜けがけすることにした。
向かったのは岩盤中心のダム湖。
朝イチ、バックウォーターに近いポイントから入水した。
上流に向かってカヤックを漕いでいくと、水のがだんだん透明になってくる。
すこし流速を感じるようになったあたりで
水深2メートルほどの底のあたり、上流から、2匹の魚が降りてきた。
鯉だろよ、と思いきや、まぎれもなくバス。
体側の黒い模様がはっきりと見える。
大きいほうは45cmはありそうだ。
トップウォーターを投げてどうにかなるような距離ではなく
今年もバスが泳いでいてよかった、と安堵のような気持ちでただ眺めた。
その後、4時間ほど釣りをしたが反応はなし。
睡眠不足と杉林の真っただ中で花粉症がひどく
疲れのほうが気になってきたので、無理せず帰ることにした。
1日たっても、嵐の予報はそのままだった。
ハードなコンディションだろうし、疲れも残ってて
と、すこしひるみもありながら
あのダムなら風を避けて釣れるポイントがあるはず。
気温は高いから魚は元気に動くにちがいない。
と自分を鼓舞して準備をはじめた。
ワダさんは3時15分に迎えにきてくれるという。
前日の岩盤系のダムとちがって、今から向かうのはオーバーハングやレイダウンだらけのダム。
それに合わせてルアーを入れかえようと思ってたら
仮眠から目覚めてシャワー浴びたらあと20分しかない。
えーと歯ぁ磨いて髪ととのえて5分、服の用意で10分、お腹が痛いからトイレにも行っておかねばならないので5分。
ルアーまじめに選んでたらたぶん30分・・・
と逆算して、まあいいかと、ルアー選びはしないことにした。
でも、これは持っていきたいと思ってたプラグをひとつだけ棚から出してきて、ボックスに入れた。
夜明けとほぼ同じくして釣り場に到着する。
行きしな、「今日は釣り人多いと思う」と言うワダさん。
「天気悪いからそんないないんじゃないですかねー?」と僕。
「釣り人はみんなバカですからねー」とワダさん。
釣り場には誰も居なかった。
われわれが一番のおバカみたい。
でもまだ雨は降ってない。風もほとんど吹いてない。そして、暖かい。
期待で胸がいっぱいになる。
切りかえのはやさには定評がある。
ふだんなら青く透きとおったダムの水は、この日濁っていた。
カッパを着てから
アルミボートを降ろし、エンジンとエレキをセット
荷物をつんで湖面に浮かぶと、ワダさんが「いいなぁ・・・」と声をもらす。
分かる分かる。
今年初めての釣りならなおさらですよね。
ボートを走らせれば良い水の場所もあるはず、と楽観して
まずは期待のシャローに向かってスタート。
グロー単色のアブサンを結ぶ。
「おれもアブサンにしようと思ってた!」というワダさんは、変えてプーリーにしたみたい。
だいたい、気持ちの昂ぶりに反して
朝イチから調子よく釣りするのはむずかしい。
ラインはくるくるしてるし、乗り物もちがうし、ロッドも変えてきたし。
昨日はスローなグラスの6ft、今日はサイドキャストメインになるから、カーボンの5.6ftにしてる。
ちなみにラインはナイロン15lb。
ロットンのあたらしいクリアのKRAFT。
それでも徐々になれてくると、プラッギンが本当に楽しくなる。
カヤックも便利だけど、このアルミボートの安定感とほど良い視線の高さは
やっぱりこの釣りにベストだと思う。
あ、ワダさん操船ありがとうございます。
しばらくするもバイトなし。
今日は桜の花も見られるかな、と思ってたけど、降雪地でもあるこのダムを見くびってたみたい。
あたりはまだすっかりモノクロームの景色に包まれていた。
それでもよーく見ると、木の枝の先っぽから、黄緑の芽が顔を出しはじめてる。
(見返したら、このフレーズ去年も使ってる。成長ないな)
湖のまん中で、ドパン!と鯉がジャンプする。
正体の分からない、小さな波紋が、ときどき水面におこる。
2月にあれだけ悩まされた渡り鳥たちの姿ももうほとんどない。
よい水を求めて上流にエンジンを走らせる。
本湖と支流の合流点。
支流からの流れがあたって深く掘れた岩盤のきわ。
おととしの12月のおわり、ここでアケタをボシュっと襲った50アップ&すっぽ抜け。
あれから来るたびに期待100%でキャストするも、反応はない。
そしてこの日もなかった。
合流点から上にはきれいな水のエリアが広がっているはずだった。
けれど、さらにとろとろした濁り。
これ以上進んでもムダだろうと話しあって、またエンジンをかけて引きかえす。
予報が言っていた「南からの風」がきているようだ。
蛇行する昔の川筋をボートで走っていると
冷たい空気から、いきなり、なま暖かくたっぷり湿った空気に包まれる。
と思うとまた冷たくなる。
雨は降ったり止んだりを繰り返す。
たまにけっこう強く降る。
そのつど、カッパのフードをかぶったりぬいだり。
水は、雪代水のようなところ、土濁りのようなところ。
手で触れると、水温も場所によってだいぶ違う気がする。
春はめまぐるしい。
ところどころ、もやがたちこめ、幻想的。やや怖い。
小さなワンドに入り、ダムサイトまわりを流し、また朝イチのシャローに入りなおす、も不発。
はじめの期待が影をひそめ・・・に反比例して、
疲れもあいまって、おしゃべりが多くなってくる。
プラッギンはおろそかになっていく。
ここでワダさんから、スロープに戻ってちょっと休憩の提案。
ひさびさに陸に上がって背伸びして
クッションに座るお尻がなんだか湿っぽいことに気付いたりしながら
魚肉ソーセージを食べてリフレッシュ。
ひととおりポイントを回って、もう11時すぎかと思いきや
時計を確認するとまだ9時半だった。
よし、と気合いを入れ直して、今度ははじめと反対方向に進みだす。
ここからは、あれだけ込み入ったポイントばかりのこのダムではめずらしい
とくにこれといった障害物のない、のっぺりと広がるシャロー。
ワダさんが「この時期はここがいいはず」と言う。
僕はぜんぜん実績ないけれど、春、スポーニング、を考えると、何だかこういうところが雰囲気のような気がした。
ロッドの先には、研ぎ出しワカメのルーピールーパーがぶら下がってる。
なんだか「森の住人」とでもいうようなたたずまいのプラグで
このダムの雰囲気にぴったりだと思ってたから
時間のない出発前にひとつだけ加えて持ってきたのはこれ。
だだっ広いこのエリアにはちょっと違うかな、と、交換のことがちょっと頭によぎったけど
まだ使いつづけることにする。
バスが隠れてそうなストラクチャーはとくにない。
どういう経緯か焦げ茶に枯れた竹が一本水中に突き刺さった場所、をたんなる目印として
その岸ぎわにキャストした。
ちょんちょん、申し訳程度に首振りさせただろうか、覚えてない。
岸からある程度はなれたところからただ巻きする。
べつに狙ってない、けど、まったく期待してないわけでもない。
回収とリトリーブのあいだくらいの気持ちで。
ダブルフックで、軽量なこのルーピールーパーは
いつもより切れをましたワイドなウォブリングで
黄色いセーム革のテールを激しくはためかせながら
白濁りした、緑の水のなかを踊る。
小さきものを一瞬でしとめる
圧巻のシーンだった。
ルアーから少し左に焦点をそらし、視界の右半分
そのまん中あたりでルーピーがこっちに向かって泳いでくる。
ボートまであと4メートルほどきたところ
白く光る横長の大きな影が、視界の上手袖(右端)からあらわれたかと思うと
そのままためらいなく
一定の、遅くも速くもない、堂々たるスピードで
スコーンと
ルアーをさらって去っていった。
ゴゴン!!
ロッドに衝撃が伝わる。
とっさに右方向に竿先をたおす。
去っていくはずの強者の動きが止まり、ぐわんとこちらに頭を向ける。
むちゃくちゃでかいバスをかけた、と思う。
リールを巻く。
距離は2.5メートル。
バババン!
大きな口をあけてエラあらいする。
ルアーはまだついてる。
フックの掛かり方を観察し、これからの展開をイメージして備える。
といった余裕はまったくない。
「がっつりいってる!大丈夫!」
ワダさんの声が聞こえてすこし落ち着く。
バスのつっこみがくる。
どうしよう怖い。ライン切れちゃう。
ロッドごと水中に引きずりこまれそうな格好になりながら
やっとクラッチを切ってしのぐ。
バスがこっちをむいて浮いてくる。
ワダさんが左でネットをかまえている。
ネットが遠くに感じる。
浮いてきたバスを反対に向かせる。
まだルアーは外れてない。
スーっとバスがネットに近づいていく。
ほんとうにこのままネットに入るのだろうか?
入った。
よっしゃー!
二人で叫んだ。
手を濡らしてネットのなかのバスの下アゴをつかんで持ち上げると
ルアーはフロントフックが分厚いクチビルにただ引っかかってるだけの状態だった。
「50あるで!」
「どころじゃないっすよ!」(と言ったらしい。記憶ない)
計測すると、56cmだった。
雨のなか、写真をいっぱい撮ってもらう。
お腹がふくれたバスが心配で、でも撮って欲しい気持ちの方がまさって
ときどき水にもどしながら撮影する。
途中から元気になったのか、ガブリと噛まれる。力が強い。
だんだんと持ちあげる右手がプルプルと震え、たえられなくなってくる。
リリース。
バスを水につけながら、全力で眺める。
大きくしっかりした顔のつくりと
少しだけくたびれた尾びれ
老練のたたずまい・・・・・・
ああくそ!
あんなに必死に目に焼き付けようとしたのに
断片的にしか思い出せなくて悲しくなってきた。
はっきりと覚えているのは、
しもやけのほっぺみたいにところどころ赤くなった、大きな口のなか。
それと、長い年月をかけて少しずつ成長してきたと思わせる大きなウロコの
一枚一枚がかさなりあって
オレンジ色に、虹色に、シャラリと粒子が光るあの輝き。
手をはなすと、バスは、ゆらゆらとボートの下のほうに潜っていった。
ワダさんとがっちり握手した。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
と、いうところまでいきおいで書いたら
翌々日に携帯に着信。
液晶画面にワダさんの名。
この瞬間を待っていたよ!!
「もしもしっ!」
「ざんねん。カメラの画像は消えちゃってた」
「!!」
「そうですかぁ。まあ、かくごしてましたので」
(ひざからくずれ落ちる)
「って、全部のこってるよー」
ポワソン・ダブリル。
4月の1日。
でかい!にごりのせいか白いからだ色
しもやけのほっぺ。この瞬間にもワダさんのiphoneには雨水が。にげて!
オレンジに輝く背中のうろこ。この写真がいちばんこみあげてくるものがある。たぶん僕の目線と近いから。
さようなら。ありがとう。どうかお元気で
ワダさん、タクロー、みなさんに
心より感謝申し上げます。
だしよ