江利チエミファンのひとりごと

江利チエミという素晴らしい歌手がいた...ということ。
ただただそれを伝えたい...という趣旨のページです。

【127】 花木蘭(昭和49年9月江利チエミ特別公演)

2005年12月14日 | 続・江利チエミ(初期記事・後編)
「花木蘭」(はなもくらん/かもくらん...と読む場合も漢詩ではあるようです。)
これはディズニー映画にもなりました。そう、あの「ムーラン」です。
時代が実ははっきりしない・・・というか実在したかが定かでない女性で、「隋唐演義」という説話本には出てくるのですが、史書には登場しないのです。
民間伝承や京劇にはなっていますが、史書にはその名前を見つけることはできません。

花家の庭には木蘭の木が植えてあったのですが、どういうわけか全然花をつけないんです。
ところが、花家の最初の赤ちゃんが生まれたとき、その木は一斉に花を咲かせたといいます。
そこで、ついた名前が「木蘭」。
木蘭は、小さい頃から家事手伝いや裁縫などそっちのけで、近所の男の子を引き連れては剣術に熱中していたといいます。
17歳のとき、北方異民族の王が河北の竇建徳(とうけんとく)と戦うため、在郷の中国人兵士を徴兵しました。
木蘭の父・花孤(かこ)は、戦場で足を怪我しておりとても従軍できる体ではなかったのです。
木蘭は父の鎧を身に付け男装し、家出同様にして従軍します。そして手柄を立てて「英雄」となる...という物語です。
京劇では、兄貴分の好青年/賀廷玉と結婚して終わります。
「隋唐演義」では木蘭が女だと知った北方異民族の王が、側室にと所望したのですが、憤った木蘭は自殺してしまいます。

これは日本でいう「かぐや姫」「桃太郎」といった民間伝承が、様々にストーリーが膨らんでいったもの...と同じではないかと思われます。
一番スタンダードな伝承の元は、こうです。
>隋末、木蘭という女性が男装して、年老いた父に代わって戦場に赴き、十二年間戦い抜いて、手柄を立てて帰国した。
木蘭は中国では人気があって、お芝居になったり、小説になったりしています。
姓は花、あるいは魏、あるいは朱であるともいわれています。
その郷里も一定していません。

以下、木蘭の叙事詩を引用します。

>木蘭詩       北魏 無名氏

喞喞復喞喞   (そくそくまたそくそく)

木蘭当戸織   (木蘭戸に当たって織る)

不聞機杼声   (機杼(きじょ)の声を聞かず)

惟聞女歎息   (惟だ女の歎息を聞くのみ)

問女何所思   (女に問う何の思う所ぞ)

問女何所憶   (女に問う何の憶う(おもう)所ぞ)

女亦無所思   (女に亦思う所無く)

女亦無所憶   (女に亦憶う所無く)

昨夜見軍帖   昨夜軍帖を見るに

可汗大点兵   (可汗(こくかん)大いに兵を点ず)

軍書十二巻   (軍書十二巻)

巻巻有爺名   (巻巻に爺の名有り)

阿爺無大児   (阿爺(あや)に大児無く)

木蘭無長兄   (木蘭に長兄無し)

願為市鞍馬   (願わくは為に鞍馬を市い)

從此替爺征   (此より爺に替わって征かん)

東市買駿馬   (東市に駿馬を買い)

西市買鞍薦   (西市に鞍薦を買い)

南市買轡頭   (南市に轡頭(ひとう)を買い)

北市買長鞭   (北市に長鞭を買い)

朝辞爺嬢去   (朝に爺嬢を辞し去りて)

暮宿黄河辺   (暮には黄河の辺りに宿る)

不聞爺嬢喚女声  (爺嬢の女を喚ぶ声聞こえず)

但聞黄河流水鳴濺濺  (但黄河の流水鳴って濺濺(せんせん)たるを聞くのみ)

旦辞黄河去   (旦に黄河を辞し去りて)

暮至黒山頭  (暮れには黒山の頭に至る)

不聞爺嬢喚女声  (爺嬢の女を喚ぶ声聞こえず)

但聞燕山胡騎声啾啾  (但燕山の胡騎声啾啾たるを聞くのみ)

万里赴戎機   (万里戎機に赴き)

関山度若飛   (関山度って(わたって)飛ぶが若し)

朔気伝金柝   (朔気金柝(きんたく)を伝え)

寒光照鉄衣   (寒光鉄衣を照らす)

将軍百戦死   (将軍百戦して死し)

壮士十年帰   (壮士十年にして帰る)

帰来見天子   (帰り来たって天子に見ゆれば)

天子坐明堂   (天子明堂に坐す)

策勲十二転   (策勲十二転し)

賞賜百千彊   (賞賜百千彊なり)

可汗問所欲   (可汗欲する所を問えば)

木蘭不用尚書郎  (木蘭用いず尚書郎)

願馳明駝千里足  (願わくは明駝千里の足を馳せて)

送児還故郷   (児を送りて故郷に還らしめよ)

爺嬢聞女来   (爺嬢は女の来たるを聞きて)

出郭相扶将   (郭を出でて相扶将す)

阿姉聞妹来   (阿姉は妹の来たるを聞きて)

当戸理紅妝   (戸に当たって紅妝(こうしょう)を理(おさ)む)

小弟聞姉聞   (小弟は姉の来たるを聞きて)

磨刀霍霍向豬羊  (刀を磨きて霍霍として豬羊に向かう)

開吾東閣門   (我が東閣の門を開き)

坐我西閣牀   (我が西閣の牀に坐し)

脱我戦時袍   (我が戦時の袍を脱ぎ)

著我旧時裳   (我が旧時の裳を着け)

当窓理雲鬢   (窓に当たって雲鬢を理め)

対鏡帖花黄   (鏡に対して花黄を帖(つ)く)

出門看火伴   (門を出でて火伴を看れば)

火伴始驚惶   (火伴始めて驚惶す)

同行十二年   (同行十二年)

不知木蘭是女郎  (知らず木蘭は是れ女郎なるを)

雄兎脚撲朔   (雄兎は脚撲朔たり)

雌兎眼迷離   (雌兎は瞳迷離たり)

両兎傍地走   (両兎地に傍(せ)うて走れば)

安能弁我是雄雌 (安んぞ能く我は是雄雌なるを弁ぜん)


(翻訳)
パタンパタンまたパタン
木蘭は戸口で機を織る
今日は機を織る音が聞こえない
ただ木蘭の溜息だけが聞こえてくる
木蘭に聞いた 誰を思っているの?
木蘭に聞いた 誰を憶いだしているの?
思っているのじゃない
憶い出しているのじゃない
昨夜、軍の召集名簿を見たの
王が大掛かりに兵隊を集めている
軍書十二巻
その巻には父の名前があった

大きな男の子がいなくて
木蘭には兄はいない
自分の為に鞍と馬を買って
父の替わりに出征できたら・・と願っている
東の市場で駿馬を買って
西の市場で鞍や鞍鞍を買い入れて
南の市場で手綱を買って
北の市場で鞭を買い入れた

朝、父や母と別れて
日暮れには黄河のほとりに宿っている
父母の木蘭を呼ぶ声は聞こえない
ただ黄河の流れる音が聞こえるだけ
夜明けには黄河を後に
夕暮れには黒山のほとりに着きました
父母の木蘭を呼ぶ声聞こえない
ただ聞こえるのは胡の馬の悲しい泣き声
万里も遠い戦場に赴き
山々を飛ぶようにやってきた
北からの風はドラの音を伝え
冷たい光が鉄の鎧を照らしている
将軍は百戦して死に
兵士は十年にして帰る
戦場から帰って皇帝にまみえると
天子は明堂に坐している
論功行賞十二階進み
百千余りの賞与をもらった
王は欲しいものはないかと聞き
木蘭は尚書郎は要りません
足の速いラクダをお与え下さいと
私を故郷に帰して欲しい

父と母は木蘭が帰ってくることを聞いて
城郭を出て寄り添いながら待っていた
姉は妹が帰ると聞いて
化粧を直し
弟は姉が帰ると聞いて
包丁を磨いてすばやく豚や羊に向かう
東の門を開き
西の寝台に腰掛けて
軍服を脱いで
昔の衣装を着けて
窓辺で豊かな黒髪を整え
鏡に向かい花黄をつけた

門を出て戦友に会うと
彼はとても驚いた
共に過ごした十二年
知らなかった木蘭が女であるなんて
雄兎は撲朔して
雌兎は迷離して
二つの兎が一緒に走る時
どうして雌雄であると見分ける事ができようか
                    
    


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