つばさ

平和な日々が楽しい

子どもの命を弄ぶ蛮行をすぐやめさせてこそである。

2013年08月30日 | Weblog
春秋
8/30付

 54、55……。おでこやおなかに無造作に貼られたガムテープに数字が書いてある。外傷はなく、ちょっと見には口を半開きにほうけて昼寝しているようでも、じつはもう息絶えている。10歳にもならないだろう子どもの死体、それが何十も丸太ん棒のように並んでいる。

▼21日にシリアで使われたという化学兵器(神経ガス)の犠牲者の映像がある。反政府側が公開した。見れば「もう憤りだけでは足りない」(仏ルモンド紙)という気になる。憤りより強いもの、つまりは米国などのアサド政権への武力行使が間近だとされる。子どもの死に顔はその空爆に大義を与える大切な要素でもある。

▼シリアの内戦では2年半に10万人が死に、200万人が難民になって国外に逃れた。化学兵器を使ったという話はかつてもあったが、誰が使ったか、結局は藪(やぶ)の中だった。国連は化学兵器について現地で調査はしている。しかし、アサド政権を非難する米英仏と後ろ盾になるロシアの対立ばかり際立ち、何も決められない。

▼そんな中で迫る大国の軍事介入である。空爆があれば、そのためにあらたな犠牲も出るだろう。それでも大義があるとすれば、内戦を一刻も早く終わらせるという正義と結びついてこそである。子どもの命を弄ぶ蛮行をすぐやめさせてこそである。「アラブの春」などと知ったふうに使ってきたが、その何と多難なことか。