つばさ

平和な日々が楽しい

同じ釜の飯を食って団結しよう

2013年08月06日 | Weblog
春秋
8/6付

 夏は合宿の季節である。合宿といえば緊張もするし、ワクワクもする。スポーツや楽器の特訓。大学のゼミや学習塾の集中講座もある。ほんの数日だけなのに、先輩や後輩たちと泊まり込みで頑張ると、驚くほど力がつくものだ。青春の合宿の記憶は汗と涙の味がする。

▼TPP交渉の作戦を練るため、約100人の官僚たちが研修所で合宿をした。直立不動の交渉チームを前に、担当大臣の甘利明さんが「同じ釜の飯を食って団結しよう」と熱く檄(げき)を飛ばしていた。まるで軍隊のようなその映像を、交渉相手はどう見ただろう。手ごわそうに映ったか。それとも奇異で滑稽な印象を抱いたか。

▼「合宿」の濃厚な語感に、ぴったり合う英語は見当たらない。強いていえば「トレーニングキャンプ」だろうか。参加した若手の官僚から「久しぶりに脳味噌が動いた」と興奮気味の声も聞こえてくる。普段は霞が関でライバルの他省庁と混成部隊を組み、缶詰めになって意見をぶつけ合うのは初めての経験だったらしい。

▼これまで日本の通商交渉チームは、諸外国から評判がよくなかった。立場が異なる外務、農水、経産の3省が同席し、相手国は同時に3人を相手にしなければならないからだ。合宿で事務方の結束力は高まっても、指示を出す肝心の政権や与党はどうか。官僚に団結を促した甘利大臣の言葉を、そのまま政治家に贈りたい。