ゆめ421 『花が咲いてゐる』 2012年11月24日 03時50分56秒 | だれかのゆめのにっき あの人の頭には花が咲いてゐるんだらうか、眞つ赤な。 さうぢやない、あれは疵口だ、穴が開いてゐるのだ。 血のかをり。
ゆめ420 『命の蝋燭』 2012年11月24日 03時49分55秒 | だれかのゆめのにっき 我が子の命が灯った蝋燭を手に、洞窟を進んでいく。 寒さと恐怖で手が震える。 火が消えて、娘が死ぬことを恐れているのか。 暗闇から脱け出せなくなることを恐れているのか。
ゆめ419 『同姓同名の人』 2012年11月24日 03時49分20秒 | だれかのゆめのにっき 同姓同名の人に会う。 うつむき気味に澱んだ目を泳がせ、時折「死にたい」と呟くその男は、よく見れば私だ。 過去のある時点で分岐した、また別の私なのだ。
ゆめ418 『郵便配達』 2012年11月24日 03時48分06秒 | だれかのゆめのにっき たくさんの郵便配達が街中を闊歩している。 背筋をぴんと伸ばして、機械のように整然としたリズムで進むポーカーフェイス。 彼らは家々に赤紙を届けるのだ。
ゆめ417 『マーカー』 2012年10月31日 23時57分14秒 | だれかのゆめのにっき 群青。あまやどり。シュノーケル。骨格。甲虫。ペイズリー。 私はぺらぺらと辞書をめくりながら、気に入った言葉にマーカーで印をつけている。 何の意味があるわけでもなくて、ただ暇だからこうしているのだ。 六法。サーモグラフィ。くす玉。蟻地獄。ダルメシアン。
ゆめ416 『壁』 2012年10月31日 23時56分32秒 | だれかのゆめのにっき 天高く聳え立つ鉄の壁は、左を見ても右を見ても、地平線の果てまで延々続いている。 表面に耳を当てると内部からゴウンゴウンという音が響いてきて、皮膚に微弱な振動を感じる。 赤土の大地を遮るこの壁を人々は「世界の終わり」と呼ぶ。
ゆめ415 『真っ赤な唇』 2012年10月31日 23時55分46秒 | だれかのゆめのにっき 宙に浮かんだ真っ赤な唇が何か言う。 か細い声なので何と言っているかよく分からない。 聞き取ろうとするうちに唇は消えてしまった。
ゆめ414 『魚が二匹』 2012年09月30日 23時26分19秒 | だれかのゆめのにっき 小屋の中を魚が二匹歩いている。 「あれは何、魚?」と聞くと、 おじさんは「何言ってるの。鳥だよあれは」と言う。 よくよく見れば確かに鳥だ。
ゆめ413 『妹の人形』 2012年09月30日 23時25分39秒 | だれかのゆめのにっき リビングのガラステーブルの下に妹の人形が置きっぱなしにしてある。 幼い妹の身の丈ほどあるその人形は、妹の落書きのせいでせっかくのかわいい顔がぐちゃぐちゃだ。 片付けておいてあげようと手を伸ばすと、僕が触れるよりも先に人形が僕の手首を掴んだ。
ゆめ412 『遠い残響』 2012年09月30日 23時24分51秒 | だれかのゆめのにっき 天井から吊るされた玩具のメリーゴーラウンド。 遠い残響のようなメロディ。 ホームビデオの解像度の世界で生後数ヶ月の私はうれしそうに笑っている。