ゆめ471 『招待』

会場にはぽつぽつと人が集まりだしていた。
招待状を手に誰もが、なぜ自分が呼ばれたのか分からないといった表情でいるのだろう。
"だろう"というのは、彼らが皆一様に羊の仮面を被っているからだ。

ゆめ470 『食感』

グミのような食感。
おいしい。
これはなんだろう。

ゆめ469 『ニュースキャスター』

テレビを見ている。
そこに映るニュースキャスターの顔面はテレビ画面になっていて、そこにはニュースキャスターが映っている。
そのニュースキャスターの顔面もテレビ画面で、それがずっと入れ子式に連なっている。
エコーの掛かったようなニュースが聞こえる。
「日本は死にました」

ゆめ468 『手品』

手品師の帽子から死んだ鳩が飛び出した。
気付けば手品師も死んでいる。
見世物小屋だと思っていたこの場所は、墓地の外れにある汚い物置だった。

ゆめ467 『とろける』

眼球がとろけて、流れてしまう。
悲しいことがあったのだ。
とろけた眼球は海へ流れて、やがて目のない深海魚になる。

ゆめ466 『絵の中へ』

もう誰かが死ぬのは見たくないと言って、自分の描いた絵の中へ入っていった画家を私は知っている。
画家は絵の中に掛けられたロープで首を吊って、今も絵の中で静かにぶらぶらと揺れている。

ゆめ465 『枯れたベゴニア』

滅んだ宇宙の微かな残滓がその寝室には漂っていた。
細く開いた窓の隙間から庭へと零れて、枯れたベゴニアの輪郭をなぞる。

ゆめ464 『園崎さん』

コートジボワールの経済に興味はなかったが、その教室に園崎さんの姿を見つけて、僕は講義に潜り込むことにした。
ホワイトボードには一瞥もくれず、園崎さんの耳たぶを凝視する。
園崎さんは福耳だ。
僕には目しかないので立派な耳を持っている園崎さんが心底羨ましい。

ゆめ463 『タマゴ』

ガードレールから一段下がった茂みの陰に、細い木の棒が何本も地面に立てられているささやかな空間を見つけた。
棒には白いビニル紐が結ばれていて、紐は空中で軽くたわみ、その先端は土中に消えている。
私がその空間を見下ろしていると、先生が「それはタマゴの墓ですよ」と言った。
なるほど白い紐はそういう意味かと合点しながらも、少し寂しそうな先生の笑顔に胸が痛んだ。

ゆめ462 『合わない』

鏡の中の自分と目が合わない。