伝えるネットねこレポート

「水俣」を子どもたちに伝えるネットワークのブログ。
首都圏窓口の田嶋いづみ(相模原市在住)が担当してます。

溝口さんを苦しめているのは、だれか

2012-03-03 00:09:15 | 水俣レポート
溝口さんを苦しめているのは、だれか 
~ 水俣に、私たちの意志を届けよう、という呼びかけ ~

2012年3月1日18:30~21:00
上告断念と溝口チエさん水俣病認定を求める3.1緊急集会
お茶の水 総評会館にて

正しいものを正しいという判決を得て

去る2月27日、亡き母親の水俣病の認定を求める行政訴訟の判決が福岡高裁で下されました。
原告は息子さんの溝口秋生さん。

お母様は、1974年水俣病認定を申請。しかし、認定の審査のための検診を受けることもなくその3年後に亡くなりました。以来、秋生さんは、毎年、お母様の亡くなった7月1日に、熊本県にその審査がどうなったかを問い合わせつづけてきました。そして、1995年、死後18年後に申請棄却の知らせを受けたとき、母親の生に対する悔しさがこみ上げてきたといいます。いのちを弄ぶ者への怒りだったでしょうか。
ご自身だけでなく、息子さんも1995年の和解に応じる被害を受けていながら、同じ土地で同じくらしをしてきた母親への仕打ちとして、到底許せませんでした。

行政訴訟提訴から9年。判決は、秋生さんの訴えを聞き入れ、お母様を水俣病と認めよと命ずるものでした。義務付けを含む行政訴訟の判決を勝ち取った意味の大きさは、秋生さんの生をあがなうものとしてだけでなく、これまでの水俣病認定にくさびを打ち込むものとなるでしょう。

判決を受けて秋生さんと山口弁護士さんたち一行は、環境省に申し入れを行うため上京、総評会館で報告と上告断念を求める集まりが持たれました。


左から溝口秋生さん、相思社職員で溝口訴訟を支える会の永野三智さん、
秋生さんの息子さんで胎児性水俣病患者の溝口知宏さん、
溝口訴訟を支える会会長の高倉史朗さん

溝口さんの書いた「勝訴」の文字、そして「壁」の字

溝口秋生さんは書道の先生です。だから、秋生さんを永野さんは「先生」と呼びます。
中国で買った筆で書いたという書が会場の壁に貼られました。
環境省交渉から遅れて会場に入った秋生さんが判決を前に書いたものです。


 溝口秋生さんが書かれた「壁」と「勝訴」の文字

どうしても思い出すのは、2004年10月15日関西訴訟最高裁判決のあとの、環境省交渉のことです。
あのとき、環境省の役人は、「日本は三権分立。だから、環境省の判断は別」と、この耳で聞かなければ到底信じられなかっただろう抗弁を聞かされつづけました。
環境省の三権分立の解釈に、泣きたい気持ちになったことをまざまざと思いだします。
そして、関西訴訟原告団長の川上敏行さんに水俣病の認定がおりたのは、さらに、川上さんが裁判所に訴えたあと、昨年2011年7月7日でした。

同じ抗弁を繰り返すつもりなのでしょうか。行政訴訟の判決は、認定義務を申し渡しています。
長々とつづいただろう環境省交渉を、チエさんの孫にあたる知宏さんは、感想を求められてひとこと「バカバカしい」と言われました。

かたわらで耳の遠くなった秋生さんのためにPCで要約筆記をしていた永野さんは、声をふるわせながら、「こんなことを言ったら他の方に悪いかもしれないけれど、先生のお母さんだけでも認定してあげてほしい」と心情を吐露されました。「先生を楽にしてあげたい」、と。

必ず、フクシマに映し出されるから、署名を呼びかけます

久しぶりにお会いした溝口さんに、伝えるネットの送っていただいたみかんのお礼をお伝えしましたが、お疲れのためかすぐには思い出していただけないようでした。
できたばかりの中王子みのりさんの著書『Hi!みのり』を、「私たちの仲間がエッセー集を出版したんです」と溝口さんにプレゼントすると、「ああ嬉しい、読む本が何もなくなっていたんだ」と快く受け取ってくださいました。

私たちは、子どもたちに「水俣」を伝えるとき、こう呼びかけます。
――私たちは、社会を構成するひとりです。
もし、水俣病の原因を知り、患者がどういう思いをして生きているかを知って、事実をたずね、学べば、患者さんをいたずらに差別し、イジメ、心無い言葉を投げつけることもしないでしょう。
知り、学べば、自分でしていることも気付かない差別をなくすことができる。
水俣病事件を私たちが知り、学べば、50年以上も、人の一生を奪うほど苦しめずに済んだはずです。
患者さんたちが悔し涙を流すような法律をつくらせなかったはずです。
私たちは、そうしないためにも、知り、学ばねばならない。知り、学ぶとは、そういうことじゃないでしょうか。


知り、学んだなら、社会のひとりとして、意思表示したいと思います。
これ以上、溝口さんを苦しめないよう、さらに10年の裁判を課すことのないよう、上告の断念を働きかけましょう。

以下に署名用紙を貼ります。この署名をA4サイズに印刷して、水俣に寄せてくださるよう、呼びかけます。
上告の猶予は2週間。署名など、なんの効果があるのか、と思わないでください。人は人と擦りあいながら生きています。波紋はどこかで、必ず、何かを動かすと、私たちは考えています。

そして、たぶん、「水俣」の前例は、いま100万年つづく放射能とともに生きることになった時代の意志となって、子どもたち、その子どもたちへの、ささやかな償いになるはずだと思わないではいられないのです。

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