今度は『阿賀に生きる』フイルム版のために
~ どこまで 深くなるぞ 音声ガイド ~
~ どこまで 深くなるぞ 音声ガイド ~
フイルム版のための録音・編集作業 4月9日 、14日
● DVD音声ガイドから、フイルム音声ガイドに進化!?
昨年度、私たちは新潟水俣病のドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』に音声ガイドを作成し、それを録音し記録として残すという作業を果たしました。
それは、現在売られているDVD版に対応するものでした。DVD普及版に対応した音声ガイドを作成することで、いつでもどこでも、バリアフリー上映会が可能になってほしい、そんな願いを込めて、誰に依頼されたというわけでもないのに、録音してその録音を、畏れ多くも、この作品のカメラマンであった小林茂さんや、製作実行委員会の旗野さんにお送りしたりしました。
それなのに、録音し直し? はい、そうです。
DVD版だけでなく、フイルム版に対応したものを作ってください、と小林さんから声を掛けていただいたからです。そのことを身に余る光栄と思いました。
DVD版とフイルム版の編集が異なっていることは、知っていました。
しかし、私たちは、特別のノウハウを持っていません。音声ガイドを作るためには、シーンごとに何度も再生をかけなければいけないので、DVDでないと取り組めませんでした。
そんな具合に作成したのを知って、昨年の5月4日、恒例の<阿賀の集い>では、それまでのフイルム上映にかえてDVD上映としてくださいました。
もちろん、本末転倒です。
フイルムだからこそ、味わえるものがあります。また、恒例の上映会で上映することは、フイルム保存のためにも必要なことでした。
メンバーからも、DVD上映に変更させてしまったことを反省する声が挙がりました。
でも、私たちの力に余る。せめて、次はぜひフイルム上映とするように私たちから言おう、と思っていました。
そんなところに、小林茂さんから、フイルムを上映したものを撮影し、DVDにしてくださったものが届いたのです。フイルム版の音声ガイドを作ってくれ、と。
オマケに、私たちの作成したガイドの校閲・手直しもしてくださったのです。私たちは、本当に何も知らない、まったくの発意だけのオバサン・グループなのに。
ね。再録音に取り組みたくなっちゃうでしょ。

4月9日の作業風景。 背中は編集の荒金さん。画面を覗き込むのは、我らが誇る朗読の有山さん。

編集の荒金さんは、さがみはら市民活動サポートセンターの紹介で出会った力強い助っ人です。
PC持込で、録音したらすぐに取り込んで編集。
ガイドをコンマ1秒ずらすだけでも、聞こえてくる音が変わることにビックリ。人間の耳ってすごいよね。
PC持込で、録音したらすぐに取り込んで編集。
ガイドをコンマ1秒ずらすだけでも、聞こえてくる音が変わることにビックリ。人間の耳ってすごいよね。
● 音声ガイドから映画の奥行きを知りなおす
DVD版とフイルム版が違うことは、当初から知っていました。『焼いた魚も泳ぎだす 阿賀に生きる 撮影の記録』の採録シナリオがそれを教えてくれていました。もっぱら普及版になったときに、字幕スーパーが編集されなおされたからでした。
削除された字幕部分の録音をつづけるなか、気づいたことがあります。
それは、遠藤さんが閉じきっていた船作りの作業場に久々に入ってくるシーン。DVDとフイルムとは、字幕スーパーが画面に現れるタイミングが違っていました。
視覚障害の方は、その障害もさまざまです。光は感じられる方、もやっと影がわかる方。
したがって、音声ガイドも極力画面に合わせて入れていきます。字幕朗読も、字幕が画面に現れるタイミングに合わせていきます。
そのシーンでは、タイミングを合わせるために、描写のガイドと字幕読み上げと順序を入れ替えたのです。
そうしたら――。
映像のニュアンスがはっきりと変わったのです。その場に居あわせたメンバーと思わず深くうなづきました。
そうか、って。字幕のタイミングひとつで、映像の意味が変わるのか、って。
映画を専門とされる方には、当然過ぎることかもしれません。
どちらかと言えば、映画が好きで、よく映画館にも足を運ぶ方だと思っています。
しかし、なんて映画って深いんだろう、って、改めて驚きました。
DVDが便利だからって、どっちも同じだからって、それは乱暴でした。昨年の<阿賀の集い>で、フイルム上映をDVD上映にさせてしまったことの意味を改めて知りました。
まるで、ボランティアだから、善意でやっているんだからトーゼンって、どこかで思っていなかったか。ボランティアの思い上がりを知らされた気がします。

こちらは4月14日の作業風景。左から、荒金さん、有山ゆうきクン、有山恵子さん。
有山さんは母子で参加。字幕読み上げを息子さんが担当。声質の似ているところを狙いました。
有山さんは母子で参加。字幕読み上げを息子さんが担当。声質の似ているところを狙いました。
● フイルムだからこそ伝わるものがあるから
<阿賀の集い>の元締め・旗野秀人さんは、こう書かれていました。
――DVDで『阿賀に生きる』を最初に見たとき、綺麗すぎて違うものに見えた。画面の皆さんもなんだか居心地が悪そうだった。やはり『阿賀に生きる』はフイルムで見なきゃと思った。
はい、フイルムだからこそ感じられるものがある、と素直に思えます。
だから、いま、フイルムの技術が生きているうちにニュープリントしようという呼びかけに応えたいと思います。
今年の5月4日、恒例の<阿賀の集い>からフイルムのニュープリントのためのカンパ呼びかけが始められます。それは、かつて阿賀の岸辺にくらしていたひとたちへの愛惜の表れとして、また、阿賀の岸辺のくらしを大切にしていく意志として、支えるものになる予感がします。
そして、ニュープリントされたフイルムが生きつづける限り、私たちのつたない音声ガイドが、どこかでささやかに役立ってくれるかもしれない・・・。
今始まるニュープリントの動きに、私たちもまた夢を見ています。
『阿賀に生きる』フイルム・ニュープリントのカンパ受付窓口
郵便振替口座 00660-4-10904 加入者名 旗野秀人
1口 = 5000円
郵便振替口座 00660-4-10904 加入者名 旗野秀人
1口 = 5000円