~必然の出会い(1)~
~必然の出会い(2)~
「焼きそば ダーウィン」を手にした私は、足取りも軽く「日の出通り商店街」を北に向かって歩いていた。
玉造駅が近づくにつれて、営業している店舗の数も人通りも徐々に増えつつあった。
はやる気持ちが私の足を自然と急がせるのだろう。気がつけば「川藤歩き」は「欽ちゃん走り」に変わっていた。それに呼応するように、口ずさむ歌も川藤幸三の「浪花夢情話」からC-C-Bの「Romanticが止まらない」に変化していった。
いよいよ商店街も終端に近づこうというのに、「欽ちゃん走り」のスピードは増すばかりだった。
その時、前方のほうから南方系の原色の物体がこちらに向かって突進してきた。
「さすべえ」「引ったくり防止ネット」「後部荷台かご」の三種の神器をフル装備した、この辺りでは見慣れた「大阪のおばちゃん仕様」のママチャリならぬオバチャリだった。
「あっ、危ない!」
そう思ったときは、すでに遅かった。
衝突寸前、わずかに体をかわしたことで正面衝突だけは回避できたが、オバチャリのブラッシュボールを完全にかわすことは出来なかった。
ハンドルが右肘、べダルが右膝の皿を直撃した。
「痛っ!」
デッドボールを喰らったように、その場にうずくまる私。
「にいちゃん気いつけてんか……」の捨てゼリフを残して、すこしだけバランスを崩したものの、停止することもなく走り去るオバチャリ。
ライダーは言わずもがな。泣く子も黙る「原色系大阪のおばちゃん」だった。
猛毒を持つ動物ほど、派手な原色の色使いをしているという。原理は同じなのだろう。
(商店街は歩道なんやぞ!アンタが気いつけんかい)
そう思ってみたところで、なにせこの辺りは「オバチャリ無法地帯」。
11トンダンプでさえもオバチャリだけは避ける土地柄。おとなしくやり過ごすしかなかった。
まるで私は、今日の試合でロッテの藤田に「報復死球」を喰らった金本のように、しばし動けない状態でいた。でも、この時ばかりは痛みよりも、手に持った「焼きそば ダーウィン」のほうが気になって仕方なかった。幸い、こちらは無傷だった。
胸を撫で下ろした私は、膝の痛みを引きずったまま、おもむろに起き上がると再び帰路へと急いだ。
ただ、「欽ちゃん走り」は、いつしか「キン(ケード)ちゃん走り」に変化していたのだが……。
◇
私は「インスタント・ジョンソン」だ。
違う。「インスタント・ジェネレーション」だ。
インスタント=時間短縮=コスト削減=経済成長
こんな公式が成り立った世代だ。
「インスタント」が大いにもて囃され、「インスタント」に「いざなぎ景気」が投影された時代でもあった。だから、物心ついたとき、すでに身の回りは「インスタント」であふれていた。
中でも「インスタントラーメン」は、その象徴的存在だった。
もし、私の体の組成成分を調べたとしたら、10%以上はインスタントラーメンの成分で形作られているはずだ。それこそ「インスタント・ジェネレーション」の証し。きっと、私と同じ「インスタント・ジェネレーション」は少なくないはずだ。
実は簡単に「インスタント・ジェネレーション」かどうかを見分ける方法がある。
調べたい相手に、さりげなくこう話題を振ってみるのだ。
「やっぱりラーメンといえばチキンラーメンに限るよなあ」
このネタ振りに、「いやいや、やっぱりラーメンといえば昔からxxxxに限る!」と食いついてひとくさり講釈をたれるようであれば、間違いなく「インスタント・ジェネレーション」である。実践してもらえば納得してもらえるはずだ。
これら「インスタント・ジェネレーション」を、生物学的分類学上「ホモ・サピエンス」から「ホモ・サピエンス・インスタント」という亜種に分類するべきだと主張する学者(インドのムハンマド・ハーレム・イワホーを中心とした一派)もいる。その説が認められれば、私は間違いなく「ホモ・サピエンス・インスタント」に属するに違いない。でも、ご安心アレ。種と亜種との間では生殖行為は可能なのである。(え?それがどうしたって?www)
ということで、当然ながら私も「インスタント食品」については一家言持っている。
ちなみに、私のフェイバリット・インスタント食品は「日清焼きそば」である。
誤解なきように言っておくが、「焼きそばUFO」とは似て非なる別物である。近頃はカップ麺におされぎみではあるけれど、いまでも現役の袋麺としてスーパーなどで売られている。
フライパンで茹でて「粉末ソース」をかけ、軽くボイルして水分を飛ばして出来上がるやつである。[参考記事]
「日清焼きそば」がカップ系の焼きそばと一線画す理由は、このソースを絡めて軽くボイルする点にある。これがカップ焼きそばでは味わえないソースの香ばしさの秘密といえよう。インスタントと言いつつ、本当の意味での「“焼き”そば」なのである。
もうひとつ「日清焼きそば」の美味さを語るとき、「粉末ソース」のスパイスを抜きにしては語れない。この「粉末ソース」、かなりの優れものなのである。オレガノ等のハーブ系スパイスが何種類もブレンドされていて、かなりスパイシーで絶妙な香りなのである。マヨラーのようなカルト的「粉末ソース」嗜好者も多いらしくて、この「粉末ソース」という調味料欲しさに買っている人もいるという。麺はラーメンに足して使って、「粉末ソース」を調味料としてソバメシ、野菜炒め、チャーハン、スパゲティーに使用するらしい。「粉末ソース」だけ単体販売して欲しいとの声も多いらしいのだ。
私も年に一、二度はこの「日清焼きそば」が無性に食べたくなることがあって、家内がいない隙を見計らって、こっそり買ってきて二袋をいっぺんに「大人食い」してしまうことがある。
これこそ「三つ子の魂、百まで」である。
今日、手に入れた「焼きそば ダーウィン」は、サンプル数が限られているとはいえ、かなり美味しいと噂されている。
はたして「日清焼きそば」を凌駕することが出来るのだろうか?
カップに印刷されている「トロピカルソースが香る」とは、どんなソースだろうか?
私の好奇心はどんどんと膨らんでいくのであった。
~つづく~
~必然の出会い(2)~
「焼きそば ダーウィン」を手にした私は、足取りも軽く「日の出通り商店街」を北に向かって歩いていた。
玉造駅が近づくにつれて、営業している店舗の数も人通りも徐々に増えつつあった。
はやる気持ちが私の足を自然と急がせるのだろう。気がつけば「川藤歩き」は「欽ちゃん走り」に変わっていた。それに呼応するように、口ずさむ歌も川藤幸三の「浪花夢情話」からC-C-Bの「Romanticが止まらない」に変化していった。
いよいよ商店街も終端に近づこうというのに、「欽ちゃん走り」のスピードは増すばかりだった。
その時、前方のほうから南方系の原色の物体がこちらに向かって突進してきた。
「さすべえ」「引ったくり防止ネット」「後部荷台かご」の三種の神器をフル装備した、この辺りでは見慣れた「大阪のおばちゃん仕様」のママチャリならぬオバチャリだった。
「あっ、危ない!」
そう思ったときは、すでに遅かった。
衝突寸前、わずかに体をかわしたことで正面衝突だけは回避できたが、オバチャリのブラッシュボールを完全にかわすことは出来なかった。
ハンドルが右肘、べダルが右膝の皿を直撃した。
「痛っ!」
デッドボールを喰らったように、その場にうずくまる私。
「にいちゃん気いつけてんか……」の捨てゼリフを残して、すこしだけバランスを崩したものの、停止することもなく走り去るオバチャリ。
ライダーは言わずもがな。泣く子も黙る「原色系大阪のおばちゃん」だった。
猛毒を持つ動物ほど、派手な原色の色使いをしているという。原理は同じなのだろう。
(商店街は歩道なんやぞ!アンタが気いつけんかい)
そう思ってみたところで、なにせこの辺りは「オバチャリ無法地帯」。
11トンダンプでさえもオバチャリだけは避ける土地柄。おとなしくやり過ごすしかなかった。
まるで私は、今日の試合でロッテの藤田に「報復死球」を喰らった金本のように、しばし動けない状態でいた。でも、この時ばかりは痛みよりも、手に持った「焼きそば ダーウィン」のほうが気になって仕方なかった。幸い、こちらは無傷だった。
胸を撫で下ろした私は、膝の痛みを引きずったまま、おもむろに起き上がると再び帰路へと急いだ。
ただ、「欽ちゃん走り」は、いつしか「キン(ケード)ちゃん走り」に変化していたのだが……。
◇
私は「インスタント・ジョンソン」だ。
違う。「インスタント・ジェネレーション」だ。
インスタント=時間短縮=コスト削減=経済成長
こんな公式が成り立った世代だ。
「インスタント」が大いにもて囃され、「インスタント」に「いざなぎ景気」が投影された時代でもあった。だから、物心ついたとき、すでに身の回りは「インスタント」であふれていた。
中でも「インスタントラーメン」は、その象徴的存在だった。
もし、私の体の組成成分を調べたとしたら、10%以上はインスタントラーメンの成分で形作られているはずだ。それこそ「インスタント・ジェネレーション」の証し。きっと、私と同じ「インスタント・ジェネレーション」は少なくないはずだ。
実は簡単に「インスタント・ジェネレーション」かどうかを見分ける方法がある。
調べたい相手に、さりげなくこう話題を振ってみるのだ。
「やっぱりラーメンといえばチキンラーメンに限るよなあ」
このネタ振りに、「いやいや、やっぱりラーメンといえば昔からxxxxに限る!」と食いついてひとくさり講釈をたれるようであれば、間違いなく「インスタント・ジェネレーション」である。実践してもらえば納得してもらえるはずだ。
これら「インスタント・ジェネレーション」を、生物学的分類学上「ホモ・サピエンス」から「ホモ・サピエンス・インスタント」という亜種に分類するべきだと主張する学者(インドのムハンマド・ハーレム・イワホーを中心とした一派)もいる。その説が認められれば、私は間違いなく「ホモ・サピエンス・インスタント」に属するに違いない。でも、ご安心アレ。種と亜種との間では生殖行為は可能なのである。(え?それがどうしたって?www)
ということで、当然ながら私も「インスタント食品」については一家言持っている。
ちなみに、私のフェイバリット・インスタント食品は「日清焼きそば」である。
誤解なきように言っておくが、「焼きそばUFO」とは似て非なる別物である。近頃はカップ麺におされぎみではあるけれど、いまでも現役の袋麺としてスーパーなどで売られている。
フライパンで茹でて「粉末ソース」をかけ、軽くボイルして水分を飛ばして出来上がるやつである。[参考記事]
「日清焼きそば」がカップ系の焼きそばと一線画す理由は、このソースを絡めて軽くボイルする点にある。これがカップ焼きそばでは味わえないソースの香ばしさの秘密といえよう。インスタントと言いつつ、本当の意味での「“焼き”そば」なのである。
もうひとつ「日清焼きそば」の美味さを語るとき、「粉末ソース」のスパイスを抜きにしては語れない。この「粉末ソース」、かなりの優れものなのである。オレガノ等のハーブ系スパイスが何種類もブレンドされていて、かなりスパイシーで絶妙な香りなのである。マヨラーのようなカルト的「粉末ソース」嗜好者も多いらしくて、この「粉末ソース」という調味料欲しさに買っている人もいるという。麺はラーメンに足して使って、「粉末ソース」を調味料としてソバメシ、野菜炒め、チャーハン、スパゲティーに使用するらしい。「粉末ソース」だけ単体販売して欲しいとの声も多いらしいのだ。
私も年に一、二度はこの「日清焼きそば」が無性に食べたくなることがあって、家内がいない隙を見計らって、こっそり買ってきて二袋をいっぺんに「大人食い」してしまうことがある。
これこそ「三つ子の魂、百まで」である。
今日、手に入れた「焼きそば ダーウィン」は、サンプル数が限られているとはいえ、かなり美味しいと噂されている。
はたして「日清焼きそば」を凌駕することが出来るのだろうか?
カップに印刷されている「トロピカルソースが香る」とは、どんなソースだろうか?
私の好奇心はどんどんと膨らんでいくのであった。
~つづく~