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ただいま冷温停止中! d( ̄ ̄;)

必然の出会い (4)

2007-06-08 12:53:46 | スポーツ
コアラは一生、ユーカリの葉と芽しか食べない。
しかも、ユーカリなら何でもよいという訳ではない。
数百種知られるユーカリの中でも口にするのは10種ほどだとか。
そのユーカリにありつけないときは、
他のユーカリに見向きもせずに餓死するという。
神の啓示に背いて「禁断の果実」を口にするくらいなら、
潔く餓死を選ぶということが君たちの美学なのか。

私なら……。

苔をむしってでも空腹の足しにするぞ。


今度、コアラを見る機会があったら、目を合わすのがすこし憚(はばか)られる心境かも……。orz



yakisoba
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「必然の出会い」を遂げた夜。家に戻ってからも興奮さめやらぬ状態がしばらく続いた。
両手で容器を持ち上げては、上から下から斜めから、隅から隅まで舐めるように何度も何度も眺めまわしていた。
カップ麺には珍しいブルーを基調にしたパッケージは、デザインもトロピカルな薫りムンムンだ。
「トロピカル」に「焼きそば」という、いかにもミスマッチな取り合わせにもかかわらず、その傍らにダーウィンを配するだけで「あーら、不思議!」。それだけで見事にフュージョンしてしまう。

それにしてもダーウィン・クビアンって、八頭身のスタイリッシュな容姿に、目鼻立ちがきりりと引き締まった顔立ちで、ジャンはもちろん、ボギーにも見劣りしない美男子であることを改めて発見する。きっとモーガン・フリーマンの若かりし日ってこんな感じじゃなかろうか。そう思えて仕方がない。

ただ、なにげにユニフォーム姿がカッコ良いダーウィンなのだが、どうせならねじり鉢巻に法被姿で焼きそばを焼いている姿も見てみたかったなあ。彼ならきっと絵になるに違いない、などと勝手な想像をしてしまった。
もうひとつ残念だったのが容器の形状。できればここは洒脱の利いた楕円形にしてほしかった。深い意味はない。ダーウィンと楕円を掛けただけのこと……。

せっかく手に入れたレアな貴重品にもかかわらず、喰い入るように眺め回しているうちに無性に食べたい衝動がこみ上げて来た。
そこに「未知なる食べ物」があるから、人はそれを口にしてきたのだ。
人類は「悪魔の胃袋」を持つという万物霊長・無類の雑食動物。

「人は貪り喰う葦である」(ムハンマド・ハーレム・イワホー)

餓死してまでも、神との約束をストイックに守り続けるコアラ君には申し訳ないが、このときばかりはつくづくコアラに生まれなくて良かったと思った。


ついにパンドラの箱が開かれる時が訪れた。
封を切って恐る恐る表蓋をめくってみると……。

んん、トロピカーナ!コパカバーナ!



なんと麺の上にはキャベツではなくドライフルーツのマンゴーだった。
今まで生きてきて、いろんな焼きそばを見てきたが、マンゴー入りの焼きそばというのは、今の今までお目にかかったことはなかった。
この和風とトロピカルのアンバランスな取り合わせ、例えるならば掘りごたつで「おでん鍋」を突っつくダーウィンくらいのミスマッチか。
もうそれだけで私のおつむの中は、期待と不安が鳴門巻きのとぐろを巻いていた。

慎重に熱湯を注いでみる。

そして待つこと2分45秒……

な、なんて微妙やねん!
なんで2分と45秒なんだ?
つまりはなにか?時間にルーズでアバウトなカリビアンたちだけに「3分」と言っても、3分=3分00秒ではなく、3分=3分台と理解してしまうだろう民族性を心配しての細かい配慮なのか?2分45秒とすれば曲解のしようがないだろうから。
彼等には、私のようにストップウォッチ片手に、きっかり165秒待つ几帳面さなど到底、理解できるまい。
胸の高鳴りを抑えつつ、息を殺してじっと秒針の針を追った。

チーン!

いざ、その時が訪れた。
慣れた手つきで手早く湯切りをして、強引に表蓋を引き裂いた。



茹で上がったばかりの麺は、普段、絶対に人目にさらすことのなかった柔和で透けるような素肌が、風のいたずらで一瞬、露出した時のような、どこかセクシーで恥じらいに満ちた奥ゆかしいに溢れていた。
ここにソースをぶっ掛けることは、すこし犯罪めいた凌辱の後ろめたさがつきまとう。
だが、しかし、私は確信犯のような揺ぎない薄ら笑みを浮かべながら、あたり一面に「トロピカルソース」をぶちかました。
なんと罪深いことだろう。
この時の姿だけはコアラ君には見せたくないと思ったぞ。

早く食べたい衝動を抑えつつ、その「トロピカルソース」を丁寧に麺に絡ませる作業に励んだ。
ドライマンゴーもしんなりとして、ソースに十分なじんだようだった。



漂う湯気が芳醇なソースの香りを撒き散らす。
蓋の印刷にある「トロピカルソースが香る」の一文が否が応でも期待感を盛り上げてくれる。
そして、いよいよ口に運ぶ時がきた。
もちろんここで箸を使うのは野暮というもの。
ここはやはりダーウィンの決め球、「フォーク」を使って食べることにする。
マクドで使わずに持ち帰った、使い捨てのプラのフォークを引っ張り出してきた。
そのフォークにぐるぐる八重巻きくらいに麺をまきつけて、ソースを存分に絡めて口に運んでみた。


んー、おいしー


この言葉しか出てこなかった。
近頃、テレビでよく目にするグルメ番組に登場するグルメレポーターという連中。
一口、食すたびに、それはそれは大そうなリアクションとレトリックを駆使して、あざとく美味しさの最大級表現を競っている。ほおばるや否や、ひと噛みする間もなく、おびただしい語彙とレトリックが機関銃のように放たれる。

鼻白む思いだ。
そもそも、味を知覚する脳の部位と、言語をつかさどる脳の部位は全く別の場所に存在する。だから、食べ物を口に運んで直感的に発することのできる言葉は、5つの基本味である甘味、酸味、塩味、苦味、うま味に、せいぜい「おいしい」と「まずい」くらいまで。それ以上の言葉は、所詮はポケットに忍ばせておいた「レトリック」のカードを1枚ずつ切り売りしているようなもの。そんな言葉は信じられない。
以前、マイウ~石塚がご馳走をほおばったとき、言葉を飲み込んで、ただただ幸せな顔で悶絶していたシーンを見たが、それこそが最高のグルメリポートだと思った。
本当に美味しいと思った時、言葉はどこかに吹っ飛ぶものだ。

とにかくこの時の私は同じ状態だった。
「おいしー」という言葉以外に、言葉が出てこなかった。
後からじっくりと反芻するように、私はその美味しさを言葉に置き換える作業に取り掛かった。




~つづく~


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3 コメント

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その旅に終わりはあるのかい… (KEN)
2007-06-08 14:04:04
えーと、いわほーさん。
あなたはどこまで行ってしまうの…。

スーパーでドライフルーツを探すあなた。
乾麺の上にそれを乗せながら少し微笑むあなた。
実際に食べるときにはそれを除けて食べたあなた。

その旅に終わりはあるのかい…
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Unknown (Unknown)
2007-06-09 11:05:38
遂に発売されたのですね 焼きそばクビアン・・・
嗚呼、あなたはどこへ行くの・・・
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話が佳境にはいって (いわほー)
2007-06-14 00:53:59
だんだんコメが減ってきたか。
本当は92話まで用意しようと思ってたんですが。www

⇒KENさん、Unknownさん
>嗚呼、あなたはどこへ行くの・・・

私に聞かないで。私も知りたいんですから。
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