新庄とユニフォーム

　引退宣言に襟付きシャツ、はたまたタイガースユニ着用騒動と、相変わらず新庄選手の周辺がにぎやかだ。そして、どれもこれも、新庄らしさに満ち溢れている。そんな彼には、三十四歳という年齢は何の意味も持たない。偉大なるナルシストは、永遠にプロ野球界の「ピーターパン」でいなければならない。そう、彼は「ピーターパン」になろうとしているのだ。だから彼は、目一杯のいたずらを残して、衆人の注目を集めるだけ集めたら、「イリュージョン」の如く姿を消し去るシナリオなんだろう。少々“行き過ぎる”ところはあるけれど、そんな現代のピーターパンに、私はスタンディング・オベーションで見送りたい。

「いいぞ新庄。僕たち、いつまでも君のことを忘れないから。」

　それにしても、彼ほど野球のユニフォームが似合う選手を、私は知らない。「ミスター・ベースボール」が長嶋なら、「ミスター・ベースボール・ユニフォーム」を新庄選手に捧げてもいい。そんな彼のユニフォームに対するこだわりは相当なもの。ジーンズがカッコよく穿けなくなると、筋トレを拒否する心理には、ユニフォーム映えも含まれているんだと思う。いつもグラウンドに飛び出すときは、自分のステージを気取っている。だからステージ（球場）では、最高のルックス（ユニフォーム）とエンターテイメント（打守走）を決め込んでいる。空中を飛び回らんばかりの「ピーターパン」のステージを。

だってそうだろ？筋骨隆々の「ピーターパン」なんて、誰も観たいと思わないじゃない。




ところで、最近のプロ野球のユニフォームについて、ひとつ気になることがある。


一体、この裾の広さは何なんだ？


　一部の選手が着用している裾広パンツだ。ユニフォームも時代とともに変遷していく。今時のパンツの傾向は、全体的にルーズ気味であることは知っている。それは認めよう。けれども、一部の選手のそれは、すこし度が過ぎてはいないか。一見するとトレーニングウェアと見紛うほどだ。誰からはじまったのかは良く分からないが、私が目にしだしたのは、数年前のジャイアンツ時代の清原あたり。今では、いろんな球団、選手に広がっているようだ。特に目に付くのはマリーンズ。それ以外にも、ホークス、ベイスターズ、ドラゴンズあたりに多い気がする。むしろ、清原が去った後のジャイアンツや、星野ＳＤの目が利いたタイガースでは、あまり見かけないように思うのだが。

　私の偏見かもしれないが、裾広パンツを身につける行為そのものが、スライディングすることを放棄している証にしか思えない。土のグラウンドに砂埃が立ち上る緊張感や、スピーディーでダイナミックでエモーショナルなプレーとは、どうしても結びつかない。野球の醍醐味は球際、ベース際で生まれるもの。裾広パンツは、それを否定している風にしか思えないのだ。新庄も、一時は分からないが、今はフィット気味なパンツを着用している。スピーディーでダイナミックなプレーを求めれば、当然の帰結だろう。

　アマチュア野球の世界では、裾が引っかかって危険を伴うと、禁止にしているところもあるらしい。いや、別に私は、だからプロで禁止しろとは言わない。ただ、どうしてもそれがカッコ良いとは思えない。むしろ見苦しく感じて仕方がない。




　見よ、この美しいフォルムを。裾広パンツでは絶対に出せない、流線型とは思わないかい？