2008 No.17 7/20
作者:アガサ・クリスティー(早川書房クリスティー文庫)
評価・・・★★★★★ 5.0
クリスティーが別名義「メアリ・ウェストマコット」で身分を隠して発表した普通小説6作品のうちの1作です。
平凡な主婦・ジョーンは自分の家族や人生に満足しきっていた。
ある日、病気になった末娘を看病しに訪れたバグダッドからロンドンへ戻る途中の駅で足止めをくらってしまう。話し相手もいない、することもない状況の中で、これまでの人生を振り返ったとき、思いがけない別の面が見えてきて・・・というのが本作のあらすじ。
自分が信じていた幸せな人生が、実はそうでなかったことがわかり、愕然とする・・・
これほど怖ろしいことってないだろうなぁ。
ジョーンは事実を自分の信じたいようにしか見ないということをずっと続けてきていて、そのせいで気づかないうちに家族との間に大きな溝ができてしまっていた。砂漠の真ん中で足止めにあい、やることがなくなってしまって、自分のことを考えることしかやることがなくなってしまって、初めてその事実に気づいた訳だけど、自分の信じたいように現実を歪めて受け入れるってことは誰もがしかねない過ちなだけに、怖さが身に染みる感じ。
最初に読んだときもそうだったけど、二度目に読んだ今回もやはり衝撃的でした。
自分も同じように現実をごまかして生きないように、ときどき読み返したい作品です。