ボクはネクタイをしている。
節分も勿論、仕事だからだ。
ネクタイや蝶ネクタイは好きだ。
COOL BIZも締めていたい方だ。
だが今日のボクは、ネクタイを緩めたい。
何故ならボクは風邪気味だから。
なんてネチネチ考えていたら
ーハックションっーボクは大きなくしゃみをする。
「おう、寒いから閉めない」
「ん?あれ?」
ボクは古い食堂に中にいる。
はっ!?銀河食堂あらわれる!
「早よ、座んない。小鉢だが檸檬大根だ」店主はボクの顔をみて、ニヤっとした。
箸をとり、一礼し、檸檬大根を一口。
後をひかない爽やかな味。
「檸檬はビタミンCがたっぷりだ。発汗作用もあるから風邪に効くと思うがな」
「…え?」
食べ終わるのを見計らって、店主がボクの胸ぐらを掴み立たせる。
ドキリとした心臓と同じタイミングで、箸を落とした。
店主は無言でボクのネクタイを締めなおし、一言。
「ワシがつくったから、もう治ってるさ。さ、仕事へ戻りな」
そうしてボクは店の外に出され、ピシャンと戸が閉まった音がした。
そぉっと店の方を振り返ると、ボクは信号待ちをしている。
寒い曇り空の節分。鼻は痛くない。
信号は青に変わり、ボクは歩く。
締めなおしてもらったネクタイに檸檬の香りが揺れる。
2021.1.23朝食風景