カイモの葉の中の玉の露。
銀に輝く玉の露をコロコロ落とさず最後まで持っていれるのは、だーれ。
梅雨終わりの旺盛に咲くカイモの葉たちは競うように銀の玉の露で遊びだす。
少しの風くらいへっちゃらよ。
あなた余り押さないで。
この土地ちょっと狭いのよー。
やだやだ、コロコロ転がるわ。
カイモの葉たちは笑う。
ところでね、言い伝えを聞いたことがあるの。
なにかしら。
カイモたちは葉を寄せ合う。
ある子がね、私たちの葉で傘になると聞いて隣の畑に行ったって。
あ、聞いたことあるわ。
隣の畑の大きなカイモの葉を鎌で切って、土砂降りの中、傘にしたっていう話でしょ(笑)
そうそう。
何でも絵本の中の動物が、カイモの葉を傘にしてたのを見たんだとか。
動物ってカエルだったらしいわよ。
それを、ある子が真に受けてチャレンジしたんだって(笑)
ふふ、らしいのよ。
さすがに土砂降りで、雨なんてしのげないわよねー。
そうなの、そうなの。
人間の子供が入れるものですかぁ(笑)
急いで土砂降りの中、隣の自分の家まで走って帰って、ずぶ濡れで叱られて風邪ひいたとか(笑)
土砂降りでするかしら?
子供だったのよー。
子供だったのねー。
いや、可笑しなチャレンジャーなのかも(笑)
でも大きくなるまでに3度したらしくて。
あはぁ、知ってるー。
懲りずに(笑)
思春期になってもチャレンジして制服ぐっしゃり。
帰るなり、脱ぎなさーぃ!!って風邪ひいて、やっと止めたらしいの(笑)
いつも土砂降りの時を選ぶらしいわね。
思春期も子供だからかしら?
いや可笑しなチャレンジャーなのよ(笑)
可笑しなチャレンジャーに成長したのね(笑)
あ、ほらほら、私たちを写真撮るんだって。
やだぁ、笑うじゃないっ!
言い伝えの子って、もしかして目の前のカメラ構える子じゃない?
どうして言うのよっ。
わかってても言わないのぉ、大きな葉を仰いで笑うじゃない(笑)
聞こえてたら、どうするのよっ(笑)
聞こえるはずないでしょ(笑)
やだ、笑うわっ(笑)
うっかり葉を仰いで笑っては駄目よっ(笑) 銀の玉の露が零れるじゃないっ。
そうよ、私たち銀の玉の露を最後まで持っていれるのは、だーれ。してたのよ(笑)
笑うわよ、ほら、真剣な眼差しでカメラ持って私たちをみてるわっ。
私たちを真剣に見てる顔を真剣に見ては駄目、この子だもの(笑)
笑って揺れちゃ、駄目よ。
銀の玉の露、ゆらゆら。
ほらっ、澄ました顔して揺れないで。
ほらっ、揺らさないで。
ほらっ、銀の玉の露を持ったまま美しく緑豊かな表情で。
さ、さ、この子が言うわよっ!
はい、チーズっ。
※昨日の朝の散歩道