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銀河のサンマ

何でもあり

トマトパスタ

2025-05-22 | 銀河食堂

正午になろうとしている。

ソファで眠ってしまっていたようだ。

雨の休日、とくに予定はない。

キッチンへ向かい、トマトジュースを1缶、手にとる。

プルタブをあけ、一口大きくゴクリと飲み、目を瞑り、深く呼吸を吐いた。

静かに目を開けると、ボクの視界に飛びこんでくる見覚えのある木札。

「梅雨の走りも営業中」

ん!?銀河食堂あらわる!

古びた戸を開ける。

奥から「ほら、座りない」と店主の声が響く。

並んだ椅子のひとつに僕は腰かける。

店主がテーブルへ運んできたのはパスタ。

「トマトパスタ好きだろ?」店主はいう。

朝から何も口にしていないので、梅干しを口にしたかのように唾液が溢れてくる。

「濃縮トマトが手に入ったからな」と店主はフフンと鼻をならした。

「いただきます」とボクは一礼しパスタを口へ運んだ。

トマトが実に甘い!果物のような甘味が麺に絡みつく。

「どうだ、いいだろう?」店主はニヤリとした。

「トマトって、どうしてこんなに麺と合うんだろう!」ボクの顔が綻び、手は止まらない。

静かな食堂で黙々と食べ終わってしまうと、店主は目を背けて言った。

「あの音色は好きだ」

「え?」

「…さ、帰りなっせ。今日は、もう店じまいだ」

追い払われるように戸の前まで行く。

「美味しいトマトをありがとう、ごちそうさま」と言い、ガラリと戸を開けた。

そこは、さっき居たボクの部屋だった。

飲みかけのトマトジュースがテーブルに置いてある。

そうだ、ふと思いたちボクは部屋の奥の少し埃かぶったギターケースをとりだした。

特に予定のない雨の休日、ボクは弦を弾いてみる。

 

 

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栗ごはん

2023-10-21 | 銀河食堂

 

 

肌に感じる陽射しが強い秋の朝、急に大粒の雨に見まわれ辺りの大気の熱が一気にさらわれた。

そんなボクはまったく備えをしていない。

降水確率を確認するくらいの余裕のある朝でありたいのが理想。

大粒の雨は肌に痛い。

空き店舗の軒に入り雨宿りをする。

西の方が明るいので直に止むだろう、とハンカチをとりだし濡れた肌を拭こうとした時

イテッ!!

左手の甲に何かが刺さる感触を覚え、少し驚き、片目をつぶった。

ー何!?何!?ー おそるおそる目を開けると

【急な秋の雨には銀河食堂の御利用を】と木札の文字に小料理屋風のお店。

ひさしぶりに銀河食堂あらわる!!

小料理屋風ならば、あの女将だろう。

呼吸を整え、スッと戸を開けた。

「なによ、びっしょりじゃない、雨降ってるの?」

ーえ…?ー 

ボクは言葉がでなかった。

女将は外の状況を知らないの?手書きの木札に「急な雨に…」と書いてたじゃないか。

少しの混乱が生じて止まってしまったボクに

「なに突っ立てるの?座りなさいよ、ほらぁ」

と女将が背中を押して、ボクは流れるように椅子に腰かける。

「あのね、栗がとても甘いのよ」

女将は話しながら奥に入り、向こうから盆を持ってやってくる。

盆にのっている一膳の茶碗からほんわり湯気がたっているのがみえたとき

「わぁ、美味しそう」とボクは少し大きな声をあげてしまった。

「ふふふ、美味しいわよ」

女将がスッと箸を置くと同時にボクはその箸を手にして

「いただきますっ!」と嬉しくて声を張った。

栗ご飯を口に運ぶ。

ー何という…う…美味すぎるー ボクは唇をギュッとつぐんだ。

女将はボクの顔をわかってか微笑む。

「ホクホクした栗と、ホワっとしたお米が美味いっ!」

「あらっ!すごいわ!栗も美味しいけど、お米は新米なのよ!!」

女将は一段高い声で驚いたように表情をし、ボクの箸は感動で止まらない。

「秋だね、秋の味覚って素晴らしいね」

「ふふふ、今年は当たり年だったのね、きっと」と軽くウインクをした。

あっという間に平らげたボクは「ごちそうさま」と手をあわせる。

女将は静かに頭をさげ、ボクは淹れてくれたお茶の湯呑みを手にしようとする。

ボクの茶碗をひきながら、女将は静かに言った。

「栗ご飯には織部が似合う」

「え…?」

ボクはゴクリと唾をのみ、手でとろうとした湯呑みが滑り、お茶の滴がとんだ。

「あっ!もぅ…っ」女将が小さく声をあげた。

肌に感じる陽射しが強い秋のなか、風がスーッと吹き心地よい。

イテッ!!

左手の甲に何かが刺さる感触を覚え、少し驚き、片目をつぶり再び目を開ける。

ボクはいつの間にか栗林に着いている。地面にイガグリがたくさん落ちている。

今日は職場の仲間と栗拾い。

ボーっとしているボクを、イガグリがチクりとしてくれたのだろう。

きっと今年は当たり年に違いない。

 

 

 

 

 

 

 

※ 9月29日の朝ごはん。

 栗とお芋は頂きもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

栗ごはん - 銀河のサンマ

栗ごはん - 銀河のサンマ

僕は林で栗の木をみつけたうぅ、涙があふれ目の前がぼんやり霞む涙を手でぬぐうと「銀河食堂1人前営業中」の文字またまた銀河食堂現る古民家な食堂に変わっている木の戸をガ...

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蕗のツナ煮

2022-04-10 | 銀河食堂

 

ボクの目の前で染井の吉野さんが、たくさん散ってゆく。

なんで急に暑くなっちゃうんだよぉ…。

3月中旬の気温の狂いに、桜が散る頃に、藤の花が7分ほど開花している。

秒速で過ぎたような3月だった。

大きな風がふぁーっと吹くとボクの前で、桜吹雪が舞う。

目を丸くして顎をあげ、思わず、わー!と叫けぶ。

こんな桜吹雪を体験したことがないのだ。

ー 桜、さくら、サクラ、sakura ー 

桜の花びらがボクの頭の何かの記憶に触れ何かを甦らそうとしている。

桜吹雪が地面に落ちる、目の前に文字がみえてくる。

ー思わずびっくりしたね、今からは八重も楽しみに営業中ー 

木札が…!!銀河食堂…現る!?

「おぉ、おぉ、来なすったかい。まぁ座んない。」

店主がとびきりの笑顔で案内してくれる。

「ボクは来たわけじゃない、たぶん現れたんだ」と呟く。

そして案内されるまま椅子に腰掛ける。

古い銀河食堂の店主だ。

「蕗がよ、とれてな。ツナっちいうもので炊いたのさ。揚げも入っとるよ」

ツナと蕗の煮物なの?

きっと店主は新メニューを突然思いつき、ボクを銀河食堂へ呼んだんだと思う。

「へぇ、美味しそう。食べちゃうよ!?」

ボクは店主の顔をうかがい、箸を手にとった。

「美味しかろう!!?」

ボクが飲み込む前に、きいてくる。

「うん!ツナが強く主張せず、良い具合!!」

大きく笑顔で頷く店主は機嫌がとても良く、最高の笑顔に思える。

その最高の笑顔は、さっき桜吹雪の中から思い出が蘇りそうだったボクの何かに触れた。

その笑顔、その笑顔だよ…桜、さくら、サクラ、sakura…そして咄嗟にでたボクの口から

ーおじいさん…ー

「ん?」驚いた様子の店主の前を風が流れ、再び染井の吉野さんの桜吹雪が舞う、いや乱舞する。

桜吹雪にボクは、包まれのまれてゆく。見事に心地よくのまれる。

「切な…」店主の小さく呟くより小さい声が、桜吹雪に包まれ消されてゆく。

飲み込まれてゆくがボクは店内へいることさえ分からない。

やがて、さぁーっと風が止み桜吹雪は消えてゆく。消えたあたりには桜はない。

…ボク…何してたんだっけ?…

そうそうボクは先日、ミモザ色のイヤリングをした子とお話をしたんだ(ふふっ)

あの子にまた会えるかな?

染井の吉野さんが散る頃、何かが甦りそうで切なくなるが、今年はなりそうにない。

 

 

 

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巻き寿司

2022-02-03 | 銀河食堂

 

週末は雪が降るかも、って言ってな。

薄曇りの空を見上げ、寒さの余り、足踏みしながら信号待ちをしている。

ラーメンを食べようか、チャンポンにするか…。

信号が青になり、足を踏みだすと、ボクはコケた。

そそくさと起きあがり、ズボンを手ではらう。

「何してるんだ?そんな所で」

「へ…?」

「なんともしれない顔すんじゃないよ、ストーブで暖ったまりない」

見わたすと銀河食堂のなか。

僕はストーブの前に腰かける。

「今日は節分だぞ。何や最近は、ここら辺でも巻き寿司を食べるんだってなぁ」

と店主が巻き寿司を運んできた。

「そっか節分かぁ。恵方巻のことだね」

一礼し、1つつまみ、口にする。

「美味しい!全部食べていいの?」

「おぉ、たくさん食べない」店主は嬉しそうに笑い、続けて

「お前さんが平凡に暮らせるように、豆を年の数だけ食べんだぞ」

「はい。豆を買って帰ります。28粒か」ボクは、巻き寿司を頬張りながら頷いた。

「28?お前さん、もう28になったのか」

「え?なに?ボクを前から知ってるみたいな言い方ですね」

すると店主の目からスーッと涙のような雫が。

「店主…?」

「すまんなぁ、全部、食べそこねたなぁ。またな」と店主はニマッと普段の様に笑った。

気づくと、ここはボクの部屋。

ボクの手には豆の袋を持っている。

さて、28粒食べよう。

静かな部屋で声にだし数えながら豆を噛む。

 

 

 

 

 

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きんとん

2021-03-25 | 銀河食堂

 

橋を渡り、隣町へ足を運ぼうと思う。

染井吉野が満開になったらしい。

今、ボクの住む場所の染井吉野は未だ5分咲きなのだ。

ただ天気があやしい。

まぁ、出かけるとするか、玄関の扉を開けた。

「いらっしゃい」そこは、古民家風の銀河食堂のなか。

あれ…?ボクは首を傾げる。

「さ、さ座りなっせ。きんとん食べてみなっせ」微笑む老女の店主。

「桜がのってるーっ!」

老女の店主はボクをみて嬉しそうに頷いた。

一礼し、一口ふくみ

「ふふ、春だね」とボク。

「簡単きんとんに、雰囲気だけ桜も良かですばい」老女の店主はニッコリし続けて言う。

「私の昨日の夕飯の芋の残りですがね、なんて」店主は、手を口にやり大笑い。

「…」

老女の店主が大きく笑うのを初めてみた。しかも揶揄うんだ、とボクは驚いている。

「春で、ちと浮かれてしまいました。食べなすったか?」笑いながらお皿をさげた。

参ったなぁ…俯いたボクは頭を掻き、気を取りなおすため

「お茶くださいっ!」と顔あげた。

ここは何処だろう。。。

ボクの頭上に桜が咲き乱れる。

見覚えのある景色。ボクの住む場所だ。

いつの間にか満開だぁっ!

咲き乱れる桜、老女の店主が、揶揄って浮かれた笑顔と重なってみえる。

ボクの記憶の奥に仕舞った誰かに似ているような気もする。

青空に桜が眩しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※今日の朝食風景。

 

 

 

 

 

 

 

 

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