私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

小泉流〝のぞみ301号外交〟の妙と今後の課題

2005年12月16日 | 極東情勢(日本とその周辺)

開業以来「ひかり号」の途中停車駅は原則名古屋、京都の二駅のみ。とりわけ毎時00分ジャスト発の博多行き「ひかり号」は山陽区間も岡山、広島、小倉のみ停車の最速達列車で、国鉄の末期には二階建て食堂車の新型車量が投入されるなどステータスの列車でした。(判り易いダイヤだけに平均乗車率は8割強と指定券も取りづらかったようですね・・・・)
長らく続いてきたこのパターンに地殻変動が起きたのが1992(H4)年3月14日、「東京(大阪)を朝一番に出て、大阪(東京)の会議に間に合う」といった触れ込みで早朝と深夜、1日2往復でデビューした「のぞみ号」でしたが、東京朝6時発の「のぞみ301号」のダイヤは、
東  京  6:00
新横浜  6:16

名古屋  ↓

京 都   ↓

新大阪  8:30
開業以来初めて名古屋・京都を通過する新幹線の登場(たった1本ですが・・・・)に、とりわけ名古屋の政財界は猛反発。地元マスコミも一斉蜂起して〝名古屋飛ばし〟(Wikipedia)は大変な騒動となりました。(JR東海も本社のある名古屋を通過させるという何とも大胆なことをやったものです)
高速鉄道ヲタクの私はこの開業初日の301号に乗りましたが、7:40分頃通過の名古屋駅のホームには、敵意の眼差しに満ちた地元マスコミが勢ぞろいでしたねぇ・・・・

◆中韓とは外相会談もなし 東アジアサミットで(河北新報)
◆日中、日韓首脳会談「要請するな」=首相官邸が外務省に指示(時事)
◆小泉首相、インドなど3カ国首脳と会談へ=東アジア共同体で中国と綱引き(時事)
◆小泉首相 外交も強気で展開 中韓靖国批判に再度反論(産経)
◆日本の麻生外相「台湾海峡の平和的解決と中国の軍事透明化を」(台湾週報)

「国際会議の場で中韓との首脳、外相会談がいずれも行われないのは極めて異例だ」
といったマスコミの報道を見て、高速鉄道ヲタクの私は、「開業以来停車していた名古屋・京都(=中国・韓国)は通過しても、新横浜(=インド・オセアニア)の客を拾って首都圏と大阪を2時間30分で結ぶ」という「のぞみ301号」の大胆な戦略を懐かしく(?)思い出した次第です(名古屋・京都には何の個人的恨みもございません)が、山陽区間に新たに加わった「のぞみ」停車駅に例えるなら、新神戸がインド、福山がオーストラリア、姫路がニュージーランドといったところでしょうか。(新神戸と福山は空路との競合で戦略的な重要性が高いですね)台湾は・・・・重要ではあるが「のぞみ」停車は現時点では難しい静岡といったところでしょうか。(何のこっちゃ?)

閑話休題、「開かれた地域主義」を提唱し、第一回の東アジア首脳会議にインド、オーストラリア、ニュージーランドの三カ国参入の根回しに成功したのは日本外交の際立った成果だったと思います。当然その狙いは中国流のモンロー主義と申しますか、<大中華共栄圏構想>にクサビを打ち込むことにありますが、玉虫色に見えるクアラルンプール宣言(日経朝刊でさらっと目を通した程度ですが・・・・)というのが今後の有り様を示唆しているようで何とも興味深く思えました。
その間、お決まりの〝歴史認識〟で日本を叩きたい中国と日本のシーパワーVSランドパワーとの激しい攻防もあったのでしょう。「私には何のわだかまりもない。日中、日韓関係を重視しており、首脳会談を行う用意がある」と首相は改めて中国・韓国の姿勢を批判しています。
しかしながら、靖国に限った攻防に手詰まり感があるのも否めないところであり、日本側の戦略としてはもう一工夫欲しいところです。即ち、反論の焦点を今後は靖国問題から敢えてずらして、今回日本がインドとともに民主主義、自由、人権を全面に押し出したような<民主主義VS非民主主義>の対立構造に持っていくべきではないでしょうか。
ライス国務長官は今年3月の上智大学における講演(在日米国大使館)で、日米同盟を「思いやりの同盟」と称し(最初「思いやり予算に基づく同盟」という意味かと思いました・・・・)、民主主義を伝播していく手段としての「戦略的開発同盟」に位置づけたいという考えを示しました。日米同盟を封じ込めの手段としてではなく、エンゲージメント戦略として利用するのは単独の軍事オプションがなくとも可能ですし、曲がりなりにも戦後60年、平和憲法の下で民主主義を掲げてきた日本こそがむしろその旗振り役としては適任かと思います。
「日米同盟が強固であれば、対アジア外交が上手く行く」といった日米同盟を蝶番的に捉える思考は、岡崎前駐タイ大使が絶賛するほど特段真新しいものとは思えませんが、それが単に「虎の威を借る狐」的な位置づけに止まるのであれば、「寝耳に水」のニクソン訪中や、クリントン時代の〝ジャパン・パッシング〟の再来も予想されるでしょう。
マハティール前首相が言うように、単に「米国の代弁をする日本」という受身の姿勢ではなく、むしろ同盟の相手国の米国を巻き込んでやろうといった戦略的な発想が今後の日本に求められるのは間違いありません。
東アジア関連は、<環太平洋同盟>と<大中華共栄圏>という攻防線上にあるかと思いますが、台湾海峡問題に関しても、2月の「2プラス2」での共同声明の文言を念仏のように唱えるだけでなく、「そのために日本の立場としてはこういう提案が可能である」という一歩踏み込んだ姿勢を示すことも可能ではないでしょうか。(さしあたって一番簡単な方法は、ブッシュ大統領の京都での演説をトレースして民主台湾へエールを送れば日米共通の認識として齟齬が生じることもないでしょう)
こうした日本からの提案は、同盟の相手国の米国はもとより(<極東三国>を除く)アジア諸国からも、日本ならではのプレゼンスとして歓迎される向きも大きいでしょう。

〝名古屋飛ばし問題〟は東京発6時07分発の「のぞみ」を続行させるという落としどころを作りましたが、小泉首相が日本外交の方向性に関して確固たるレールを敷いて有終の美を飾ることが出来れば、その名宰相ぶりは後世に語り継がれると思います。

※写真・・・・300系初代「のぞみ」号

当時長嶋監督がCMに出ていましたねぇ。それにしてもJR東海の葛西会長が読売に連載する程の強攻な対中警戒論者であるのに対して、JR東日本は媚中と・・・・民営化して20年弱でかつての「国鉄」も色々ですなぁ。

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5 コメント

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Unknown (kiki)
2005-12-16 14:24:59
TBありがとうございました。



新横浜(=インド・オセアニア)

新神戸がインド、福山がオーストラリア、姫路がニュージーランド



言いえて妙ですね。おもしろい例えだと思います。



「名古屋駅のホームにいる敵意の眼差しに満ちた地元マスコミ」は、当たり前ですが中韓ですね(笑)



またお邪魔します。
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Unknown (劇団たぬき)
2005-12-16 19:12:20
はじめまして。TBどうもです。



><民主主義VS非民主主義>の対立構造に持っていくべきではないでしょうか。



そうでしょうね。現にそういう風に持っていこうとしている感はありますよね。



小泉首相の頭の中には「アメリカの代弁をする日本」というように見せかけて、実はアメリカを巻き込もうといった戦略が練られつつあるのではと推察します。



集団的自衛権の行使はそのためのプロセスではないかと。



ただ、集団的自衛権。権利はあるけど行使できないっていう昔の禁治産者のような論理(安倍官房長官曰く)が正当化されるようでは、その戦略も画餅になりますが・・・



踏み込むことが必要ですね。





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Unknown (猫研究員。)
2005-12-17 00:16:34
新幹線愛用者にとっては、すごく分かりやすい例えですね(笑)

台湾は、駅名を変えてでも無理やりのぞみ停車に持ち込んだ新山口あたり如何?って、それじゃ独立宣言することになっちゃうのか…。



>むしろ同盟の相手国の米国を巻き込んでやろうといった戦略的な発想



これは全くその通りですよね。その前提として、まずはまともな同盟国になれ、そのためには集団的自衛権の行使を認めよ、ということですね。
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JR東日本=中華思想 (ろろ)
2005-12-17 11:52:57
>JR東日本は媚中



そういえば、週刊文春に「JR東日本労組の

幹部が、なぜかハワイに豪邸」とかいう

記事がありました。

労働貴族死ね!としょっちゅう言っている

私は、文春よくやった!と思いました。



組合が強いと、左傾化するのは、70年代

以降の朝日新聞をみれば明らかです。

JRも、国鉄労組を解体してホッとしたら、

また変なのが出てきてしまって大変です。



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マスコミもパラダイムの転換をした方がいい (tsubamerailstar)
2005-12-22 16:59:56
>kiki様、劇団たぬき様、猫研究員様



何か私の適当な思いつきでしたが、マスコミも自身「名古屋と京都には止まるもの」という先入観は改めた方がいいかと思いますね。

中韓と会談がないという現象面だけを捉えて大騒ぎするような愚鈍な連中は何社もいらないと思います。ヘリテージ財団のようなシンクタンクが日本にも欲しいなぁと思う今日この頃です。(汗)



>ろろ様



文春が「JR東日本に巣食う妖怪」の連載で東日本とドンパチやらかしたのはもう10年位になるでしょうか。

その時は中吊り広告の拒否は当然キオスクからも文春は消えましたねぇ。そんな訳であの記事読んだときは「懐かしいな」と個人的には真っ先に思った次第。







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