私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

台湾の安全保障を毀損するKMT馬政権:対米関係もすきま風

2008年06月24日 | 極東情勢(日本とその周辺)

日曜日の時点で、聨合新聞網から<魚釣台主権論議>の項がスタメン落ちしていたのにはいささか呆れてしまいましたが、「喉元過ぎれば毒餃子も忘る」という我が国を顧るとエラそうなことも言えないか・・・・

◆Top U.S. Officials Stalling Taiwan Arms Package(washingtonpost.com)
◆US arms decision made last Christmas(Taipei Times)
◆DPP hails Rice's remarks on Taiwan-US relations(Taipei Times)
◆EDITORIAL: Wanted: a government with backbone(Taipei Times) 

<台湾への武器売却に米政府慎重姿勢 次期政権に持ち越しか>
【ワシントン=共同】12日付の米紙ワシントン・ポストは、米国から台湾への先進武器売却について、反対する中国への配慮からブッシュ政権高官が実施に後ろ向きなため、来年1月発足の次期政権に持ち越される可能性が出てきたと報じた。同紙によると、米国務省ではネグロポンテ副長官らがライス長官に対し、武器売却実施を大統領に進言するよう要請したが、北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の議長国・中国を刺激したくない長官は前向きでない。
 台湾当局も12日の中台交流機関トップ会談など中台関係が重要局面を迎えているため、ここ数週間は武器売却で動きをとらないよう米側に非公式に求めたという。

<The KMT, as an opposition party, was responsible for a delay of several years for many of the items on the shopping list. Should the delay continue until a new president takes up residence in the White House, the US may decide to make it permanent. This may seem implausible, but there is legitimate concern as Taipei cuddles ever closer to China that advanced US military technology may eventually fall into Chinese hands. As we saw last week, when Taiwan enters into negotiations with the Chinese at a disadvantage, all it can do is agree to what Beijing wants. It has no bargaining chips with which to stave off China’s aggressive agenda.>
(野党時代のKMTには、購入品目リストに上がった兵器の多くを何年も先送りにした責任がある。次期大統領がホワイトハウスで執務を始めるまで武器輸出の延期措置が継続されるとすれば、合衆国の凍結措置は恒久化する恐れもある。一見信じ難い話のようだが、親中志向の台湾政府が北京に擦り寄ることで、合衆国の最先端の軍事技術が中国の手に落ちるというもっともな懸念があるのだ。先週明らかになったように、台湾が不利な立場で中国との交渉に臨む場合、中国の意に添うようより他はなく、中国側が提示する前のめりな政策を食い止める切り札はない)

延期措置の決定そのものは昨年の12月に遡る話で、総統選前で中国を刺激しないよう北京の米国大使館筋から要請があった由。それが今回「無期限」となった背景には、両岸交流窓口のトップ会談を理由に「武器売却で動きをとらないよう米側に非公式に求め」(共同)てきたKMT馬政権にワシントンが不信感を抱いた経緯があるようです。もっとも、六者協議を前にしたライス国務長官(国務省)にとってはある意味「渡りに船」で、台北側の言質を上手く取った格好ともなりました。(後であれこれ言ってきても、「あの時延期するよう要請したのは台北側ではないか」とあしらわれて終わりでしょうね・・・・)
凍結された武器パッケージの内訳は、AH-64D戦闘ヘリ30機、UH-60汎用ヘリ60機、潜水艦8隻、パトリオットPAC-3 SAM 4セット、F-16C/D 66機を含む(P-3C対潜哨戒機12機は含まず) 120億ドル規模のようですが、米華双方の思惑のすれ違いは台湾の安全保障を毀損し、中国にも誤ったメッセージを送りかねないと懸念されます。

<Tkacik blames the Ma administration. “Taiwan is making a decision to transfer responsibility for its security from the United States to Beijing,” he told reporters, reasoning that Ma sees no need for new weapons if there is no danger of a Chinese invasion and that he is confident that China will not invade as long as Taiwan does not declare independence.>
(タシク氏は馬政権を非難する。「台湾当局は、安全保障に対する責任の軸足をアメリカ合衆国から中国へ移そうという思惑を抱いています」と氏は報道陣に述べ、馬氏は中国の侵攻の危険性が遠のけば新たな防衛兵器は必要でなく、台湾が独立を宣言しない限り中国が侵略することはないと確信していると結論付けた)


馬〝先生〟(このように呼んで欲しいようで)はF-16C/Dの購入に意欲を見せていましたが、ヘリテージ財団のジョン・J・タシク主任研究員らは、「台湾防衛というより、対中交渉を有利に進めるためではないか」といった不信感を抱いているのではないでしょうか。或いは、「両岸の軍拡競争には加わらない」「両岸和平協定を協議する」といった馬先生の言動から、<一国三制度>的な色彩の強い「期限付き現状維持協定」、「中華連邦構想」といったあたりに突き進む可能性を見ているのかもしれません。
何れにせよ、KMTへの政権交代で単純に対米関係を楽観視するのも早計(記事)というより、早くもすきま風が吹いている感は否めませんね。(合衆国側の責任も大ですが・・・・)

<"If [Taiwan] goes in the other direction [toward unification], if the KMT [Chinese Nationalist Party] and others try to move more rapidly toward the PRC, that would be cause for a re-evaluation [of US policy toward Taiwan]," Schriver said.>
(「もし[台湾が]別の方向[統一]へ向かうようであれば、仮にKMTその他の勢力がPRCへの傾斜に拍車を掛けるようであれば、それが[合衆国の台湾政策の]、見直しの契機となるであろう」とシュライバー氏は述べた)

シュライバー元国務次官補代理(記事)の卓見には改めて唸らされます。台湾への関与不足は合衆国の国益を蝕みかねないという警鐘を鳴らす論文(記事)も記憶に新しいですが、氏は両岸対談による「PRCへの傾斜」と、日本に刃を向けてきたという「別の方向」への動きをどう見たでしょうか。ROC側は「日米安保条約は日本の施政下にある尖閣諸島にも適用される」というエレリー副報道官(04年当時)の見解を承知の上で殴りこみを掛けてきたのか、単なるチキンレースのつもりだったのか・・・・
朝鮮戦争以来、台湾の生存空間を支えてきた命綱は合衆国のプレゼンスであり、蒋父子時代の〝以徳報恨〟、李登輝時代の〝日治肯定論〟といった対日工作の本質も、「敵の敵は味方」という呉越同舟を裏打ちするしたたかな戦略でした。タシク氏が指摘するように、馬先生が<国共合作>への思惑を抱いているのであれば、そうした日本へのおもねりや配慮は無用のものとなりますが、しばし「経過観察」が必要でしょうか。

朝鮮戦争当時はアチソン・ラインと台湾を死守した合衆国も、対北融和を目論む昨今は、米台・日米の連携を蝕みかねない動きを見せています。広範に及びかねない<地殻変動>を前に、なすすべもなく傍観しているのが我が国の現状ですね。


中国はジャーナリストにとって世界最大の監獄 国境なき記者団



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