私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

東アジア共同体という幻想

2005年12月06日 | 極東情勢(日本とその周辺)

何の拍子だったでしょうか、中学の頃「日本はアジアか否か?」という件について友人と、「まぁ・・・・あの辺のもっとゴチャゴチャしている国々がアジアで、日本は、その・・・・日本なんじゃないの?」といったことを話したことがありました。たまたま先日マレーシアのマハティール前首相の会見記事を新聞で眺めていてその時の他愛ない話を思い出した次第です。

◆東アジアサミット、域外国参加で懸念…マハティール氏(読売)

マハティール氏が首相時代に「ルックイースト政策」を掲げ、現在も毎年夏には高校生の合宿か何かの講師で福岡を訪れているほどの大変な知日派ということは存じているのですが、この読売とのインタビュー記事には正直疑義を抱いた次第です。
今月14日にクアラルンプールで開催される第一回「東アジア首脳会議」を目前に、マハティール氏は「失敗に終わるかもしれない」という懸念を表明するとともに、将来の「東アジア共同体」は、ASEAN+3というメンバーが望ましいとの認識を示しています。要は日本がインド、オーストラリア、ニュージーランドの三カ国を巻き込み、背後に米国の影も見えることが「気に入らない」ということのようですが、氏が思い描く「理想」と日本が置かれている事情や思惑に隔たりがあるのは間違いありません。

そもそも私自身「東アジア共同体」等と言うものは幻想に過ぎないと思っています。(従ってあまりよく詳細は存じないのですが・・・・)どうもマハティール氏が理想とする東アジア共同体構想というのは、大陸国家チックなブロック経済圏の構築であるように思うのですが、これだけグローバリズムが加速した中、そうした発想自体が既に前世紀的と言えるのではないでしょうか。
まして、欧州などとは極端に地域事情が異なるあらゆる面で両極端のぶれが激しい地域でそれをやろうという訳です。中国と日本が同居するというのは、冷戦時代のEECやNATOに東ドイツを加えるようなものでしょう。京都議定書やUNKTADのように先進国ばかりが一方的な義務を課せられる共同体になるのも目に見えているように思います。(それは勘弁!)
北京での開催を拒み、三カ国を引き入れた日本は、「21世紀の大東亜共栄圏」でなく「環太平洋共同体」こそが日本の進むべき道だという地政学的な直感と深謀遠慮に基づいてのことでしょうか・・・・何れにせよ、日本としては、シナジー効果が上がる国を取捨選択して合従連衡を組むという二国間外交に徹することがこの地域に関しては正解のように思います。(実際タイやマレーシアはFTA締結等で一本釣りしていますしね)
共同体云々に日本が首を突っ込む意義を見出すとすれば、中国の足を引っ張り、「大中華共栄圏構想」を阻止することでしょう。

マハティール氏自身、かつての植民地支配に起因する反欧米、反白色人種の思想の持ち主のようですが、今さらアジアで団結して前世紀のリベンジを果たそうなどと私自身はこれっぽっちも思いませんし、そんなことが日本の国益にも合致するとはおよそ思えません。
どうも日本人の中にも<大アジア主義>の亡霊は残っている(そもそも大平内閣がこういうことを言い出していたような・・・・)ようで、偏狭なナショナリズムと非現実的な妄言を撒き散らす漫画家が一部の支持を得たりもしているようです(漫画しか読まない層をちょっと賢くなった気にさせた功績は大きいのでしょうが・・・・)が、〝大東亜解放〟の大儀を果たした60年後のこの地域を顧みてどうでしょうか?
ASEANで団結して日本の安保理入りを積極的に支持してくれたり、極東三国の反日行為に援護射撃を送ってくれたりするのなら、多少意気に感じる向きもないわけではないのですが、戦後もODAや技術支援等で世話になっておきながら、ASEAN諸国の玉虫色の態度はちょっとあんまりではないかなぁと私自身は思います。インタビューで日中の対立に懸念を表明しているマハティール氏にしても、それならそれで北京にも等分に苦言を呈するのが筋ではないでしょうか。
外交・安保のプレゼンスをこれまで示してこなかった日本にもその一端はありますが、こういう「帯に短した襷に長し」みたいな連中に対し、十束一絡げに一肌脱ぐのは割りに合わないように思うんですよね。
先日、インドが主導する「南アジア地域協力連合」(SAARC)の準加盟国に中国と同時に日本が認められたそうです。加盟を希望する中国に対し「日本も入るならよい」とインドは譲歩を迫ったようですが、日本と連携して中国を牽制しよう、という意図は日本の国益とも合致しますし、有難い援護射撃だと思います。安保理入りに関してもパラオやナウルといった太平洋の国々は敢然と日本への支持を表明してくれました。

安保理の際も反対した国への経済援助等は見直すべきと思いましたが、この辺りもシビアに見させていただきたい。散々援助してきた国が最強の反日国という感情レベルを超越した厳然たる事実もありますしね・・・・・
マハティール氏は「共同体を日本が牽引(けんいん)すれば中国が不快だろうし、逆も同じ。代替策としてASEANが牽引する方がよい」とも主張していますが、日米英印のカルテット同盟という新戦略こそがブッシュ政権の世界戦略の基礎であるとする米紙の論調(AEI)もあります。こうした海洋国家連合が順調に進展したとすれば、逆にASEANこそが「中国か日本か」という踏み絵を踏まされることになると思いますし、日本自身もこのように戦略的に動くべきです。

後年S・ハンチントンの『文明の衝突』を読んで、中学時代の怪しい自説もあながち外れではなかったのかなと少々溜飲が下がった次第ですが、アジアに対しては超然とした是々非々の姿勢を貫き、シーパワー国家との協調姿勢を基盤とする『脱亜入洋』路線(記事)こそが日本の進むべき道だと思います。

※図表・・・ハンチントンによると、やはり「日本は日本」でした。

これを読まずには一日が終わらない!★厳選★ブログリンク集


最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (猫研究員。)
2005-12-06 22:34:46
論旨に諸手を挙げて賛成します!

日米に加えてオーストラリア、東南アジアの適切な国々、若干距離をおいてインド、ニュージーランド。これらによる緩やかな集団防衛機構を目指すべきでしょう。若干距離を置く理由は、インドは様子を見きわめるため、ニュージーランドは左派が強くて核持込をめぐってANZAS条約を脱退した前科があるという理由です。これらの理由がなくなればもちろん両国ともガッチリと組めます。NZは地政学的にあんまり役に立たないかもしれないですが。

マハティール氏の言説は、最近では評価しませんね。親日家で通ってますが、日本の国益に合致しないことを言われて支持できるわけがありません。
返信する
今日同僚と (ろろ)
2005-12-07 03:36:46
勤務後にこの話をしたばかりです。



  石油という観点から、インドネシアを中国側に絶対に渡すわけには行きません。日本のODAがもっとも多く支出されている国はインドネシアですが、もっと増やしてもよいかと思われます。(その代わり、支那への援助はゼロ。ザマーミロ!)

  また、華僑国家シンガポール・マレーシアが日本と敵対した場合、日本のタンカーがロンボク海峡を通らざるを得ないことを考えると、インドネシアとの同盟に近い友好関係は絶対に必要です。

  幸い、教科書に、「日露戦争に勝った日本万歳」「オランダを追い払って、インドネシア人に行政を任せたのは日本人」と書いてあるような国です。失礼がないように対応すれば、かなりプラスになるかと。



  マハティールも、親日とかいうより単なるアメリカ嫌いでこんな発言をしているんでしょう。何より、マレーシアでもっとも金を持っているのは華僑です。ごますりも多分にあるかと。それに、彼の母胎であるUNAM(?)とかいう政党は、汚職がひどいらしいですから、民主主義だの人権だの小泉さんに言われてカチンときたのかも(笑)。

  賞味期限の切れたマハティールはもういいので、他の親日的なマレー人、インド系マレーシア人を取り込む努力を政府はすべきです。

  

  あとは・・・やっぱり台湾ですよ。
返信する
いやはやです (tsubamerailstar)
2005-12-07 12:53:52
>猫研究員様



確かにNZそれ自体は「枯れ木も山の賑わい」てな感じですよね。何か左展開し過ぎて郵政改革も失敗したようですが・・・・

もう「大東亜共栄圏」は懲りました。(汗)



>ろろ様



お疲れ様でございます。・・・・ということで是々非々の選択外交で行くのが望ましいということです。連中を丸抱えするとか一致団結してどうのこうのは現実的でないと思いますよ。昭和十年代ですらあんな調子だったのですから。(汗)



マハティール氏自体李登輝さんのように退任後もギリギリのところで切った張ったやっているわけではないせいか、彼ほど周りが読めていないですね。

返信する
マレーシアとタイ (平凡会社員)
2005-12-07 18:10:54
昔、マハティール氏の親日本を読んだことがあります。日本人に勇気を持たせ、エールを送る内容の本でしたが…(テンテンテン)



マハティールさんの口癖は「アメリカの影響力から脱した日本がアジアには必要だ!」っていうやつですよね。アメリカに引きずられ過ぎるのも問題ですが、現在の状態で単身アジアに乗り込めば、中国に押さえ込まれて瀕死の重症を負うことになりませんか?



タイのタクシン首相は「我々はインドを引き込むことに成功した。(対中牽制役としての)日本への期待はしぼみつつある。」と述べてらっしゃるように、マハティールさんよりも「対中警戒感」が強いような印象を受けました。



ベトナムは「ベトナムは何があっても日本の常任理事国入りを支持する。」と言っていましたね。町村外務大臣の時だと思いますが。



シンガポールとインドネシアの外相は、岡田前民主党代表に対して「日米同盟は地域の安定の為に重要」とおっしゃっていました。



東南アジア諸国にも、けっこう温度差があるんでしょうか?東南アジアがみんなマハティール式の考えではないように思います。
返信する
東南アジアも色々・・・・ (tsubamerailstar)
2005-12-08 11:59:49
>平凡会社員様



インドネシアもマレーシア同様「ルックイースト」な国でしたね。まぁ、インドネシアは独立戦争絡みでの縁も深いのですが。



仰るとおり「東南アジアも色々」なのでしょう。タイ何かの事大傾向はちょっと機転が利く朝鮮といったような気もいたしますが。(汗)



まぁ、そういった塩梅でバラバラなのがアジアというものではないかなぁという気もしないでもないですね!(笑)

返信する