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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

初宮参りの扇と真綿と麻と

2024-08-26 23:47:48 | 民俗学

 今回の例会は高遠町の二十二夜様見学で終了だったが、希望者での懇親会を企画した。12名の参加で賑やかな懇親会を開くことができた。そして今日、遠方からの参加者あったことから見学会を企画し、8名の参加を得た。見学会で回ったのは次のような場所であった。

伊那市内の萱 横山井「水桝」
伊那市仲仙寺「神願様」
箕輪町木下法界寺「守屋貞治作佉羅陀山地蔵菩薩」
箕輪町長岡長松寺「守屋貞治作延命地蔵尊」
辰野町沢底鎮大神社
辰野町沢底道祖神
辰野町上辰野蚕神様
小野、弥彦神社

沢底鎮大神社(しずめだいじんじゃ)

 

鎮大神社に奉納された絵馬

 

箕輪町長岡神社

 

 このうち鎮大神社ではいわゆる絵馬を掲げる掲示板にあった「初宮参り」の扇が話題となった。初宮参りで扇を奉納する人がここでは多い。とはいえ、日付を見るとここ最近のものはなく、昨年、あるいは数年前のものまで掲示されている。何年掲示したら取り下げるという決まりがあるのかどうか不明だが、年を重ねると汚さが目立ってきて、そこそこの年数を経たら交換してほしいと思ったのは、あまりにも汚れが目立ち始めていたからだ。同じような扇は箕輪町の長岡神社にも見え、上伊那北部では扇を初宮参りに奉納するところが多いことがわかる。

 『辰野町誌近現代編』(昭和63年 辰野町誌刊行委員会)によると初宮参りの日は、男の子は生後32日、女の子は同33日目に行うのが一般的だと言う。無病息災や長寿を願って真綿(白毛)、麻(長寿)、扇子(末広がり)を拝殿の格子にしばりつけたという。今は絵馬などを奉納する人のために掲示板が設けられているが、かつてはそのようなものが無かったため、格子にしばりつけたのだろう。同書には羽場の手長神社の写真が掲載されており、たくさんの扇子が格子戸にしばりつけられている姿が掲示されている。この辺りの神社にはよく見られる光景なのかどうか、今まで注視してこなかったので、しばらくは注意していきたい。なお、現代の絵馬については松崎憲三氏が「現代神社・絵馬事情~神社を取り巻く環境に関する予備的考察~」を『長野県民俗の会会報』42号(令和2年)に報告されている。絵馬の絵は印刷されたものがほとんどの現在、結果的に裏側に願い事を具体的に書くようになって、松崎氏も「図柄を通してではなく、文字に願いを託す」が昨今の姿であると述べられている。


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