Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

“文化財”からの地域づくり・前編

2016-03-08 21:52:54 | ひとから学ぶ

 自治体の内々で作成される「○○計画」というものは、住民にとってわかりづらいということは否めない。それを覆すためというわけでもないだろうが、かつては自治体自らが作成していたものを、住民参加によって作成するようになったのはご存知の通り。自治体自ら、というより専門家が作成する、ということも多かったのだろう。ところが、わたしにはいまだにこの○○計画がどのように生かされているのかについては理解できないでいる。そもそも住民に参加してもらったとして、どれほどその参加した人々が理解しているかというところに疑問も抱く。平成22年に地元の町が作成した総合計画の計画策定ワークショップというものに加わった。その名の通りワークショップであるから、思いつくものをたくさんあげてその中から総合計画に汲んでいくものを議論し合った。あれから5年、町は新たな総合計画策定に取り組んでいるようだが、あの時とはまた違った策定方法をとっているのかどうなのかは、興味を持たない限り知る由もない。そして○○計画なるものが実に多いこと。自治体はこういうものを作成することで追われているのではないか、そんなことを強く抱くところだ。とりわけ小さな自治体は職員が少ないから一層大変なことだろう。

 ○○は目的ごと異なってくるのだろうが、近年こうした計画が他分野とクロスするようになったのは自治体の方たちはご存知なのだろうが、行政から遠いところにいるとまったく知る由もない。今日はある市の歴史文化基本構想策定に関係する会議に出席してきた。その目的は「地域に存在する文化財を,指定・未指定にかかわらず幅広く捉えて,的確に把握し,文化財をその周辺環境まで含めて,総合的に保存・活用するための構想」(文化庁ホームページより)だという。さらに「各地方公共団体が「歴史文化基本構想」において,文化財保護の基本的方針を定めること,さらに,文化財をその周辺環境も含めて総合的に保存・活用するための方針等を定めることにより,「歴史文化基本構想」が文化財保護に関するマスタープランとしての役割を果たすことが期待されます。加えて,文化財を生かした地域づくりに資するものとして活用されることも期待されます。」とある。最終的には「地域づくり」といっており、その材料が「文化財」だということなのだ。そもそも前段で触れた総合計画の中にも「地域づくり」は求められるだろうし、個別の事案として文化財は切り口となるのだろう。ようは歴史文化基本構想とは、「文化財」行政(文化庁)から見た総合計画のようなものなのだ。しかしながらこの基本構想を策定するにあたって、自治体の内部には壁を越えた横断的な庁内検討委員会なるものを設けている。「文化財」を切り口にしているからとりあえずその関係部署が音頭をとっているが、目標は縦割りされた担当のある部署の業務ではなく、総合的な「文化財」活用行動とでも言えようか。あくまでも「文化財」から展開する地域計画のようなものなのだ。

 危惧されるのは前述したようにいろいろある○○計画の一つで終わらないこと、だろうか。仕事がらそうした○○計画なるものに携わったことは何度となくある。「作れば終わり」という計画がなんと多いことか。農水省系にはかつて(今も策定しているところがあるのか知らないが)農村環境計画なるものがあった。その簡易的なものを田園環境整備マスタープランと言ったが、「環境に配慮して事業を進めます」と宣言するために作成されたもので、作成されたその内容が補助事業を受ける際にどうのこうの言われることはほとんどなかった。簡単に言えば「あればいい」的な存在なのである。たとえば農村環境計画を策定する際には、地元から農村環境としてどんなものがあげられるか、とまさにワークショップが行われた。その中にはここでとりあげられる「文化財」が対象になることもあった。その最終目的が地域づくりではなかったが、地域にとっては自らの地域を自ら見出す良い機会になったことは事実だ。が、では作成された以降、そうした流れが継続的に生かされたかといえば、前述したとおり「作れば終わり」的感覚があって、とりわけ農水省関連の自治体部署ではそうした計画を持て余してしまうのが実態ではなかっただろうか。同じようなことは縦割りで見れば多くの○○計画書で発生しているはずだ。

続く


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