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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

諏訪形神社獅子舞

2022-10-03 23:16:49 | 民俗学

長持ち

 

獅子引き

 

悪魔祓い

 

 諏訪形諏訪神社御柱祭の翌日の昨日、同社の例大祭が行われた。午前9時40分から前日の御柱祭にも奉納された長持ちが行われる。ふつうは御柱祭につきものの長持ちだが、ここでは毎年実施される例大祭にも長持ちを奉納しているという。広域農道からの参道を進んで2回、拝殿前の庭で1回演舞がある。毎年行われるのは、後継者に引き継いでもらっていくためという意図があるようで、保存会によって継続されているが保存会の代表も若い人へ渡していくという意識が高い。長老の方が言うには「そうでなければ絶えてしまう」という。もちろん御柱祭に合わせて始まった長持ちなのだろうが、その起源はわからないという。長老の方でもそのあたりは聞いておられないようで、話のできる方は?、と聞くともういないようだ。

 わたしもかつて地元の御柱祭で長持ちに加わったことがあったが、ここの長持ちは1演舞が長い。どこから伝わったかも不明でこのことについては、伊那市教育委員会が刊行した『伊那市のまつり』(平成12年)にも記載されていない。

 長持ちが終わると、次は地元では「獅子引き」と呼んでいる獅子舞が行われる。これもまた例大祭に毎年実施されているものだが、こちらも長持ち同様にその伝播や時期について聞いても不明ということであった。「獅子引き」とは練りのことで、長持ち同様に参道を練って拝殿前まで上る。参道のうちで3回、拝殿前庭で1回、そして庭から拝殿前まで別に舞ったが、本来は庭から拝殿前まで一連のものなのかもしれない。今年は御柱祭のため囃子屋台を引かなかったという。例年は宵祭りに長持ちや獅子引きが行われているようで、その際には獅子の後ろに囃子屋台が引かれるという。囃子方の中心は囃子屋台であって、獅子方は囃子方の手を借りて舞っているという印象がある。保存会そのものは現在囃子方保存会となっていてその中に獅子方も加わっているようだが、そう捉えると獅子よりは囃子が中心だったという印象が強い。そのせいだろうか、獅子引きの際の囃子には三味線が加わる。駒ヶ根市の天竜川左岸地域の獅子舞には、囃子に三味線が加わるところが多い。その理由は囃子屋台が主の囃子方が獅子舞に協力しているせいなのかもしれない。こうした三味線が獅子舞の囃子に加わる例は、飯島以南ではあまり見られない。

 周辺というかここより南の地域の獅子舞には、道化役が練りに加わることがほとんどだが、諏訪形にはそれは登場しない。獅子引きの先頭は「獅子招き」と言われる女形を子どもが担い、その後ろに「獅子引き」の子どもたちが続く。いずれも獅子を誘導する役割で、現在は女の子がふつうに加わっているが、かつては男の子だけが担ったという。とくに先頭の「獅子招き」はオカメの面を頭の後ろに回して被り「女らしく」獅子を招くが、今は全員女の子が担っているから違和感なく映るが、かつては男の子に「女らしく踊るように」と指導されていたのだろう。今年は獅子招き4人、獅子引き11人であったが、その数は決まっていないという。参加できる子どもは全員参加するというようだ。

 拝殿前まで獅子引きが行われた後、前庭では悪魔祓いが行われる。いわゆる頭一人、幌を持つ後方一人の二人立ち獅子舞である。こうした形も上伊那南部の獅子舞の形式である。この際の言葉は次のようなもの。

エー 目出たいなアー 目出たアの 若松様だとエー
エー 枝もよオー 栄ゆうるウー ありゃ 葉も繁るとエー
エー 今年しゃえエー 世が世オでエー 穂に穂が咲いたとエー
エー おかめよオー 十六くう ささげの年だアとエー
エー 三尺の 御幣いいをオー 振り立て 悪魔を払ふとエー

ここに囃子言葉は


当村 ご繁盛 お悪魔払い 隅から隅まで しっかり 払った払った

となる。

 さて、諏訪形は200戸足らずの集落。この戸数で御柱を曳き、騎馬行列や長持ち、そして獅子舞まで担う。おそらく御柱祭には皆がみな関わるくらいでないと人手が足らないのでは、と見える。

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