Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

農道橋

2017-12-15 23:47:41 | つぶやき

対岸は牧之原台地

 

対岸は島田の町

 

 会社の慰安旅行に出かけた。目的地は飯田市の隣の市だから、近いのかもしれないが、面積が1558平方kmもある浜松市である。隣だからといって接している境界から入るのではなく、中央自動車を名古屋を経て入るという、距離的には遠回りの旅程であるが、今でもこれが一番早い。浜松方面に行くという話が持ち上がったとき、今年の大河ドラマの地だからと思い「井伊谷」を「行きたいところ」に書いたら、幹事さんたちはみな知らなかった。意外だったが、そんなものと理解していたもののなぜか目的地のひとつにそれを選択してくれた。欠かさずというほどではないが、いちおう大河ドラマは視聴している。ということで、週末には最終回を迎える大河ドラマの地に向かった。

 とはいうものの、浜松では近すぎるので大井川流域まで足を伸ばした。そして大井川にある蓬莱橋という木造橋に寄った。大井川に架かる橋で世界一長い木造歩道橋としてギネス認定されているというが、残念ながら認識はなかった。今では観光橋として存在しているが、まったく知識もなくこの橋の上に立って思ったのは、「なぜこんな橋ができたのか」であった。その歴史についてはウィキペディアに次のようにある。

江戸時代、大井川は東海道最大の難所として知られていたが、幕府がある江戸防衛の目的から架橋や渡船は許されておらず、川を渡るためには川越人足に頼るしかなかった。その大井川に、旧幕臣が茶畑として開拓した牧之原台地と、東海道の島田宿を結ぶために、1879年(明治12年)に架けられたのが蓬莱橋である。架設後の橋は大井川の氾濫で幾度も被害を受けたため、1965年(昭和40年)に橋脚部分だけはコンクリート製にする改造を受けている。

 橋ができた当時から通行料を徴収した「賃取橋」だったという。ただし開拓した農民が出資してできた橋だったから出資した農民は無料だったという。今は島田の町がある左岸側に車道があって橋のたもとに番小屋というものがある。新しい番小屋が今造られていて、現在は仮設の番小屋だが、この番小屋も当初から置かれていたという。対岸である右岸側台地上に茶畑が広がり、その台地から段丘を下ったところに橋は通じている。なぜ木造橋として今まで継続されたのかは、その歴史にかかわる。ようは農道橋だからである。これら知識はあらためてホームページなどで調べればすべて記述されているものであるが、わたしはこの日、橋を渡った対岸で案内をされていた方にすべて聞いたこと。その方は管理されているのは「土地改良区」と言われた。実際は島田市の農林課所管だという。橋そのものはそれほど古いものではなく、木造であるが故に踏み板も場所によっては腐りかけているところが目に付く。そして橋の途中にまだ最近補修したと思われるような部分も。その橋を渡り終えて、案内の方に「土地改良区」という単語を聞いて確信したのは、「災害復旧」であった。ようはこの橋は災害を受けるたびに災害復旧事業によって直されてきたというわけだ。ウィキペディアの記録にば平成19年の台風4号では、右岸側の約70mが崩落、橋脚ごと流失し、通行不能となったという。また平成23年には9月4日から5日にかけての台風12号の影響で橋脚3脚が流失したといい、復旧が進まないうちに同じ月の台風15号の影響によってさらに橋脚が流出したという。頻繁に被災しては復旧を繰り返してきたというわけだ。

 現状を見るととても農道橋の雰囲気がなかったので、下流側に大きく見えている島田大橋のことを踏まえて聞いてみると、やはり島田大橋ができたことにより、農道としての役割はほとんどなくなったという。たまたまギネス認定の際に長さが897.4メートルだったこと、また「長い木の橋」だったということから、「厄なし」「長生き」といった語呂をあてて観光化を図っているようだ。実は島田市農林課土地改良係の12月11日掲載のお知らせを見ると「蓬莱橋一部工事による通行規制のお知らせ」というものがある。「蓬莱橋上部工架替工事を大井川右岸側(牧之原台地側)で実施します。この工事により、工事期間中は蓬莱橋を右岸側へ渡りきることが出来なくなりますが、橋の真ん中より少し先までは渡橋(往復)可能となります。」とある。いつでも対岸まで渡れるというわけではないわけで、たとえば大洪水に見舞われると長期間通行止になることも予想されるわけだ。ちなみにわたしたちが渡っている間にも観光客らしき団体が来られたが、そのほとんどの方は途中まで渡ると引換していく。きっと「厄なし」と「長生き」を願うのなら、渡りきらないと成就しないだろうが…。

 橋の幅は2.4メートルほど。とても気になったのは欄干が低いこと。一歩間違えると転落しそうだ。夜も通行できるというが、酔っ払って渡らないことだ、そう思った。

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