(公演パンフより引用)
天知君と私 宮川一郎(1925~)
早いもので、天知君とのつきあいは、そろそろ二十年近くなる。今はもうすっかり変わってしまった新東宝の撮影所で、どっちから声をかけたか忘れてしまったが、二人とも名古屋に縁があるという事で話しあったのが最初の様な気がする。
天知君は、御承知の様に名古屋の出身だし、私は、中学、高等学校(旧制)とも名古屋なので、そんな事がキッカケで、親しくなったのではないかと思う。
当時、全国から募集した新東宝のニューフェースは半年間、俳優座の養成所にあづけられ、一応の演技の基本を叩き込まれた上、撮影所へもどってくる事になっていた。
ABCの採点がついた付箋つきで、二十数人のニューフェースの紹介が、我々新米の企画部員の所まで廻って来た。
天知君はその中で、AA・・・つまり一人だけずば抜けた成績であった。
*松竹での経験(=シゲマツ時代)が活かされていたのかもしれない
しかし・・・何故か、天知君だけ、いつまでたっても役がつかなかった。我々は気をもんだ。「あれはいいですよ。・・・何とかしてやって下さい」。プロデューサーや、監督に口をきくのだが、いつまでたってもラチがあかない。聞いてみると、愛想がないのも原因の一つだと言う。名古屋地方の言葉で、「愛想もこそもない」というのがあるが、成程、そう言われてみれば天知君は愛想もこそもない。酒ものまぬ、賭け事もせぬ、実力者を取りまいて、ワアワアやるわけではない。いつもむっつり、静かで、必要な事以外は口をきかない、どこかの片隅で、本を読んでいるか、殺陣の練習をしている。監督や、助監督に自分を売り込むわけでもない。傍から見ていて、「なるほど、これでは前途遠しだな」と思ったものである。
*宮川さんが天っちゃんに「カメラマンにならないか」と勧めたのはたぶんこの頃(ワイズ出版の資料本より)
だが天知君は、同期のものがどんどん起用され、又、どんどん落第してゆくのをじっと辛抱してみていた。早く出れば、それだけ評価が決まるのも早いわけで、天知君はある日突然、際物の小品ながら主演をすると(*「恐怖のカービン銃」)、一躍びっちり評価が決まった。そうなると、愛想のないのも魅力の一つで、「仲々ニヒルな味があってよろしい」などという事になって、いつの間にか、新東宝に天知茂ありという事になってしまった。
そのころから、私は、企画の仕事の傍ら、脚本を書き始め、天知君主演のものを、次々と書く様になった。互いにやっと仕事が判りかけた所で新東宝は解散。天知君は大映へ、私は東映の契約ライターになって、しばらく一緒の仕事をする事がなかったが、テレビの仕事で再会。それから又七・八年、私は天知君のものを数多く書き続けてきた。天知君は次第に、芸域を拡げてきた。こっちも負けじと、従来の天知茂にないイメージを押しつけてきた。友人同志には言葉はいらない。天知君はだまって、演じつづけて来てくれた。気がついてみると、私の年間の仕事のうち、天知君の仕事が三分の一を超えていた。
やがて、天知君は芝居を始めた。これだけは、私の領域外と、手を拱いて見て来たのであるが、今度「清水一学」をやるから書けとの御薗座からのお話で、喜んで引き受けたもののハタと困った。一学に関する資料が全くない事は最初から判っていたので、それは問題ではなかった。困ったのは一学のイメージが、日ごろよく知っている天知茂と、どこまでいってもぴったりなのである。一学が天知茂なのか、天知茂が一学なのか、私の貧しい頭の中で、それがゴッチャになってどうにも動きが取れぬ。吉良上野介に殉じた清水一学という人間を創り出し、それを天知茂が演ずるという本来の形ができあがるまで、私はプロデューサーの林さんに相当厄介をかけた様に思う。(どうにか形になっているとしたら、それは林プロデューサーのおかげである。)ともあれ、私は私なりに、父恋いの一学、妻恋いの一学、友恋いの一学を描いてみた。あとは天知君に精一杯やってもらう他にはない。又精一杯やってくれるにちがいない。名古屋の皆さん!・・・どうぞ、期待してやって下さい。
*後に宮川氏が好きな作品として、星の数ほどある関連作からこの御薗座の清水一学を挙げていることから、出来は相当良かったようだ
天知君と私 宮川一郎(1925~)
早いもので、天知君とのつきあいは、そろそろ二十年近くなる。今はもうすっかり変わってしまった新東宝の撮影所で、どっちから声をかけたか忘れてしまったが、二人とも名古屋に縁があるという事で話しあったのが最初の様な気がする。
天知君は、御承知の様に名古屋の出身だし、私は、中学、高等学校(旧制)とも名古屋なので、そんな事がキッカケで、親しくなったのではないかと思う。
当時、全国から募集した新東宝のニューフェースは半年間、俳優座の養成所にあづけられ、一応の演技の基本を叩き込まれた上、撮影所へもどってくる事になっていた。
ABCの採点がついた付箋つきで、二十数人のニューフェースの紹介が、我々新米の企画部員の所まで廻って来た。
天知君はその中で、AA・・・つまり一人だけずば抜けた成績であった。
*松竹での経験(=シゲマツ時代)が活かされていたのかもしれない
しかし・・・何故か、天知君だけ、いつまでたっても役がつかなかった。我々は気をもんだ。「あれはいいですよ。・・・何とかしてやって下さい」。プロデューサーや、監督に口をきくのだが、いつまでたってもラチがあかない。聞いてみると、愛想がないのも原因の一つだと言う。名古屋地方の言葉で、「愛想もこそもない」というのがあるが、成程、そう言われてみれば天知君は愛想もこそもない。酒ものまぬ、賭け事もせぬ、実力者を取りまいて、ワアワアやるわけではない。いつもむっつり、静かで、必要な事以外は口をきかない、どこかの片隅で、本を読んでいるか、殺陣の練習をしている。監督や、助監督に自分を売り込むわけでもない。傍から見ていて、「なるほど、これでは前途遠しだな」と思ったものである。
*宮川さんが天っちゃんに「カメラマンにならないか」と勧めたのはたぶんこの頃(ワイズ出版の資料本より)
だが天知君は、同期のものがどんどん起用され、又、どんどん落第してゆくのをじっと辛抱してみていた。早く出れば、それだけ評価が決まるのも早いわけで、天知君はある日突然、際物の小品ながら主演をすると(*「恐怖のカービン銃」)、一躍びっちり評価が決まった。そうなると、愛想のないのも魅力の一つで、「仲々ニヒルな味があってよろしい」などという事になって、いつの間にか、新東宝に天知茂ありという事になってしまった。
そのころから、私は、企画の仕事の傍ら、脚本を書き始め、天知君主演のものを、次々と書く様になった。互いにやっと仕事が判りかけた所で新東宝は解散。天知君は大映へ、私は東映の契約ライターになって、しばらく一緒の仕事をする事がなかったが、テレビの仕事で再会。それから又七・八年、私は天知君のものを数多く書き続けてきた。天知君は次第に、芸域を拡げてきた。こっちも負けじと、従来の天知茂にないイメージを押しつけてきた。友人同志には言葉はいらない。天知君はだまって、演じつづけて来てくれた。気がついてみると、私の年間の仕事のうち、天知君の仕事が三分の一を超えていた。
やがて、天知君は芝居を始めた。これだけは、私の領域外と、手を拱いて見て来たのであるが、今度「清水一学」をやるから書けとの御薗座からのお話で、喜んで引き受けたもののハタと困った。一学に関する資料が全くない事は最初から判っていたので、それは問題ではなかった。困ったのは一学のイメージが、日ごろよく知っている天知茂と、どこまでいってもぴったりなのである。一学が天知茂なのか、天知茂が一学なのか、私の貧しい頭の中で、それがゴッチャになってどうにも動きが取れぬ。吉良上野介に殉じた清水一学という人間を創り出し、それを天知茂が演ずるという本来の形ができあがるまで、私はプロデューサーの林さんに相当厄介をかけた様に思う。(どうにか形になっているとしたら、それは林プロデューサーのおかげである。)ともあれ、私は私なりに、父恋いの一学、妻恋いの一学、友恋いの一学を描いてみた。あとは天知君に精一杯やってもらう他にはない。又精一杯やってくれるにちがいない。名古屋の皆さん!・・・どうぞ、期待してやって下さい。
*後に宮川氏が好きな作品として、星の数ほどある関連作からこの御薗座の清水一学を挙げていることから、出来は相当良かったようだ
あと、舞台で演じた高山右近。
舞台は、見てないけど、三浦綾子さんの『細川ガラシャ夫人』読んでる時、高山右近を天知さんに脳内転換して読みすすめてました。
私も、宮川一郎さんと同じ様に、清水一学や雲霧仁左衛門など、時代劇のキャラが好きですね。
今、時専チャンネルで、山崎務さんの仁左衛門やってますけど・・・。
同じ宮川脚本で、セリフも同じ事言ってる時あるんだけど・・・演じ手が代わるとこうも、仁左衛門のイメージ変るか!と。
どうしても、天知版と見比べてしまって・・・。
山崎版仁左衛門は、手下から畏敬の念でみられてる存在で、天知版では、お頭、手下からの信頼、人望厚くて、「お頭の為なら、俺たち、進んで命捨てますぜ!」みたいな(笑)
仁左衛門も、一手下の為でも、自ら出向いて尽力するし。
また、天知版は、ライバルの火盗改方長官阿部式部が田村高広さんだから!
熱いですよ、この二人のバトル!
対決シーン、見入ってしまいます!
ときおり、白髪鬼思い出したりしますけど(笑)
仁左衛門に関しては、原作者の池波正太郎さんが、当時、「天知君は、よくやってるよ」ってコメントしてるし。
原作者から認めてもらえるって、役者冥利につきるだろうな~と。
すみません、つい熱く語ってしまいました。
平に容赦を!!
山崎さんだったら、手下ほっといて自分だけ抜けちゃったりしそうで得体がしれませんね(←無宿侍の影響)
見てみたかったな~。
子供の時、宮内さん好きだったんですよ。
仮面ライダーでは、V3が一番好きだったし、
ゴレンジャーは、やっぱ、アオレンジャー目当てで見てたし(先月まで、東映チャンネルでゴレンジャーやってて、懐かしく見てしまいました)、なんと言っても『怪傑ズバット』でしょ!(笑)
その後も、戦隊もので(タイトル忘れたけど)、隊長役とかやってましたよね。
今、ファミリー劇場でやってるGメン、三週ぐらい前の話から宮内さん、やっとご登場ですよ!
『特捜最前線』とかにも、よくゲストで出てましたよね。
宮内さんて丹波さんのお弟子さんなんですよね。
デビューした時、宮内さん、かなり態度でかくて、そんなところは、師匠ゆずりって言われてたらしいですね(笑)
たぶん7月には「特救指令ソルブレイン」もまだやってるなあと、ちょっと楽しみだったりします。
ちっちゃい頃のヒーロー・宮内さんと同じくトラウマの天っちゃんが共演だ!と前の「闇を斬れ」は大変喜んだものですが・・・喜びすぎました。