今日の天っちゃん

天知茂関連作品の情報

梅田コマ劇場公演(S54年8月)

2009年11月04日 | 舞台公演
「演劇界」(1979年・S54年9月号)より引用

関西劇信
勉強芝居に挑む人々
大鋸時生

梅田コマ
天知茂公演


TVで放映中の『雲霧仁左衛門』(池波正太郎原作)を主演の天知茂が、劇化上演した。例によって誠実な舞台ぶりは快い。それを御木本伸介(兄蔵之助)、北町嘉朗(捕方の長官・安藤式部)らが例によって、よく主演者をかばいつづけていた。ストオリィは上層部の圧力から自決をせまられた兄をかばい浪人となった雲霧仁左衛門が、天下を騒がす大義賊となる物語だが、林成年(木鼠の吉五郎)、カルーセル麻紀(因果小僧六之助)、東てる美(おみつ)らの部下ぶりが快かったのに比し、西尾美栄子(黒塚のお松)、茶川一郎(山猫の三次)たちは今ひと息。高田美和の仁左衛門の恋人おりょうと女賊で仁左衛門を慕うお千代の二役も、なぜか目立たずじまい。また伊藤雄之助(家老・八木重右衛門)には例によって引っかかりつづけた。

テレビ作品の劇化とあっては視聴者の感銘保持が大事なのだろうかして、客席の反応は十分だったが、それにしても、劇場の表で仁左衛門とお千代が大鳥にのって江戸城の大屋根から昇天逃走すると解説していたそうだが、舞台にそれが実現しなかったのは淋しかった(三日目所見のせいかしら)

*舞台写真はこんな感じ

*大衆演劇には辛口批評が多い「演劇界」にあって、“例によって誠実な舞台ぶり”というのはかなりのほめ言葉だと思う。ところでスーパー歌舞伎もびっくりのクライマックス、ほんとに実現しなかったのだろうか?
コメント (3)
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梅田コマ劇場公演(S44年9月)[2]

2009年10月14日 | 舞台公演
(昭和44年9月 梅田コマ公演パンフより)

全力投球の天知茂の魅力

「四谷怪談」のニヒルな浪人民谷伊右衛門は、昭和元禄の世に生まれて育って「ひとり狼」となり、なお執念深く生きつづけた。その「ひとり狼」は板の上の舞台に出て、三島戯曲のスリラー劇「黒蜥蜴」で、キザで明快な明智探偵に扮して、現代の女形丸山明宏の女賊、黒蜥蜴を追いつづけた。

その時の明智探偵と黒蜥蜴の渡りゼリフのおしまいで、二人は「最後に勝つのはこっちさ」と言葉がダボる。この時の気迫にみちた天知茂の男臭い表情をいまも覚えている。

そして明智探偵は、いまではテレビの「さすらい」でスパイになり、そして、やがては「赤ん坊夫人」の犬の散歩係となって三角関係におちいるのだ。

以上は「痴楽綴方教室」ではないが、天知茂の出演した映画と、芝居とテレビの題名を挿入してのリアルな芸歴ではある。

天知茂といえばすぐに黒の魅力を思う。それは新東宝時代に「四谷怪談」で、これまでの二枚目的なキザな匂いを、伊右衛門という歌舞伎におけるむつかしい敵役を演じて、しぶい役者として再生したからだ。

天知は自分で自分のトレード・マークを変えた意志的かつ個性的なタレントなのだ。

大映では田宮二郎とコンビで“犬シリーズ”に出て、しょぼくれ刑事役で喜劇的な面を示した。これで天知は演技力の振幅を広めた。

この自信がテレビドラマの「一匹狼」の主役で表れ、天知は非情なまでの横顔と鋭い眼で新しいファンを獲得したに違いない。

三船敏郎とは違った天知の男臭いあの直線的な魅力は、まさに丸山明宏好みの黒のビロードなのかも知れない。

天知茂の舞台初出演は、4年前の梅田コマで「雪夫人絵図」で(*コマはその時が初だが、その2ヶ月前に新橋演舞場で「道場破り」に出ている)、その時の経験が「黒蜥蜴」への出演のきっかけになったことはたしかだ。

この丸山と共演による「黒蜥蜴」は42年4月(*正しくは43年?)の東横劇場、翌年8月上旬の名古屋御園座、この月の天知は故郷の名古屋で錦を飾ったのである。

そして43年下旬の京都南座でも「黒蜥蜴」を上演。天知としては、映画俳優として専念していた京都での舞台出演は思い出深いものがあった。顔見世の招きを眺めて俳優として生きる以上、いつかはこの南座の舞台をふみたいと願っていた。

9月は天知茂という一枚看板で1ヶ月の長期公演である。勿論、書き出しであるから座頭である。それだけに天知の責任は重く、同時にその興行成績によって今日的人気と将来への賭がかかっているのだ。

天知のセリフは低声だが力強い。それは説得力をもつと共に迫力もある。

いま天知はABCテレビ(毎週火曜・後9・30分)の「さすらい」に出ており、御崎という産業スパイに扮し、野際陽子の同業の女スパイ美矢子と愛しあうという役どころ。

また関西テレビ(毎週火曜後・10・00)の「赤ん坊夫人」では、京マチ子の未亡人多恵を慕う犬の散歩係三上に扮してコミカルな味も見せている。高橋悦史の多恵の夫君秘書役長沢と恋のさやあてをするという天知になかった役柄で“しぶい役者天知”ファンにまた新しい魅力を発見して、新しい茶の間のファンがふえつつあるそうな。

「鹿鳴館異聞・影を追う男」における天知茂は、明智探偵プラス明治的ムードでどんな演技を見せるかたのしみだ。

天知のシルクハットにステッキ姿はきっとダンディだろう。

復讐をする男を、9月は舞台で見せている天知だが、関西テレビ(毎週土曜後・10・30)の「ああ忠臣蔵」では吉良への復讐を誓いながら、病気のため脱落していく悲しい赤穂浪士毛利小平太に扮している。

天知の小平太も今月の巌窟王もその暗い運命の下に生きる人間としての共通点があるのもおもしろい。

また「影を追う男」では12面相(*20面相?)ばりに早替りを天知は見せるが、これは「黒蜥蜴」で実験ずみ。東京タワーで黒蜥蜴をつけるために掃除夫に化け、また船中ではセムシの醜い老船員になって黒蜥蜴をだましおおした。

淀かほるという柔軟性のある女優と全力投球型の天知茂との初共演は「影を追う男」に明治のロマンの灯をつけることだろう。

演劇の秋9月に登場したひとり狼天知茂はどんな役者根性を見せるのか。

期待して損はしない。(東川松治)

(「さすらい」より、おそらく北大のポプラ並木をバックに野際陽子さんと抱き合っている写真が付いている)

*1969年、いろんな役にチャレンジしている年なんだなあと感心。

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梅田コマ劇場公演(S44年9月)あらすじ

2009年10月13日 | 舞台公演
(昭和44年9月 梅田コマ公演パンフより引用)

デュマ原作「巌窟王」より
鹿鳴館異聞 影を追う男 三幕二十四場

作/演出:竹内伸光
美術:古賀宏一
音楽:植村圭一、中川昌
振付:関谷幸雄
照明:鳥居秀行
衣裳:牧和夫
効果:古間伸
擬闘:的場達雄

【ストーリー】

明治……日本は新しい夜明けを迎えた……文明開化……丁髷は切られて、散切り頭、着物は洋服。そして、かつて幕府倒幕に力のあった、所謂、勤皇派の武士達はその功労によって、下級武士だったにかかわらず、政界に入って爵位が授けられ、そこに上流階級の人達となったのである。

折りしも鹿鳴館では、外国の高官を招いて舞踏会が催されていた。外国文明に追従しようとする日本の高官達……。

そこへ現れた一人の紳士。八十島侯爵(天知茂)と称する男に居並ぶ紳士、淑女は好奇の目を寄せた。

彼こそ十何年前、無実の罪によって八十島へ流刑された青江源之進であった。

勤皇派でありながら、幕府に寝返ったと密告された彼は、弁明の余地すら与えられず流刑されたのである。

彼は愛し合う恋人波路(淀かほる)との間もさかれ、島で屈辱の日々を送った。

ただ彼の心中に、如何にして無実の罪を晴らし、そして彼を落し入れたと思う人達に復讐をするか、そればかりであった。

彼の敵、友人の佐伯織部(金田龍之介)、それに廻船問屋の島田屋藤兵衛(石山健二郎)。彼等は御一新のどさくさまぎれに大変な出世をして、佐伯は検事正になり、島田は横浜で銀行の頭取になっていた。

そして彼の愛する女波路は、佐伯の妻となっていたのである。

義賊むささびの竜(芦屋雁之助)に助けられた彼は、島抜けに成功して、東京と名の変わった江戸へ戻ってきた。彼の妹小夜(雪代敬子)は、落ちぶれてらしゃめんとなっていや。妹とのめぐり合いによって、彼は誰が自分を無実の罪におとし入れたかを知る事が出来た。

仇討ち禁止令となった世の中で、彼は合法的な手段を以って、次々と復讐を遂げて行くのであった……。

*「黒蜥蜴」の次に挑戦した4時間の大作のあらすじ。学芸会なみのスター公演のひとつと評されてはいたが(こちら)、いかにも似合う役だけに見てみたかった。


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梅田コマ劇場公演(S54年8月)[2]

2009年10月07日 | 舞台公演
(S54年8月 梅田コマ劇場公演パンフより引用)

雲霧仁左衛門

池波正太郎 原作
宮川一郎 脚本
山本和夫 演出
仲川吉郎 美術

演出補:中畑八郎
音楽:奥村貢
照明:鳥居秀行
効果:作本秀信
殺陣:安川勝人

【ものがたり】
雲霧仁左衛門――。
その名のように雲か霧か、文字どおり神出鬼没、権力に取り入ってあくどい商いにうつつをぬかす、悪徳豪商をねらって、今も暗夜を走る男。一度ねらいをつけた獲物は絶対に逃さない。数多の手下たちをまるで手足の如くあやつって、人一人殺傷せずに、めざす金蔵に押し入って、ごっそり頂戴つかまつる――。

手足となる手下の数はおよそ三百。主なるところを紹介すれば、小頭・木鼠の吉五郎(林成年)、因果小僧六之助(カルーセル麻紀)、おみつ(東てる美)、お松(西尾美栄子)、加うるに七化けのお千代(高田美和)と山猫の三次(茶川一郎)と、いずれもしたたか者揃い。

さて舞台は、そんな大盗賊が江戸に現れる、およそ五年程前に幕を開ける。

美濃国加納藩六万七千石、ここは勘定方辻蔵之助(御木本伸介)の屋敷。折しも、蔵之助の只一人の弟伊織(天知茂)が、藩内一の美女おりょう(高田美和・二役)と婚約間近、ひときわはなやいだ邸内の風情である。

二人は相思相愛の仲。やがて縁組の許しの出たおりょうをともなって、伊織が帰宅する。兄夫婦の喜びはひとしおだった。だが、その幸福もつかの間、突然やって来た藩の重役、八木重右衛門(伊藤雄之助)から、藪から棒に公金着服のとがにより上意討ち、と迫られる。寝耳に水の兄弟二人。このままむざむざと討たれては、それこそ無実の罪の証しもままならぬ。

老中職につきたい一心で、幕府に金品を贈っている殿の所行をかぎつけ、それを口実に藩政を握ろうとする重右衛門にとって、蔵之助兄弟は邪魔者。有無を言わせず討ってとる魂胆だった。

今死んではならぬ。何とか逃れて江戸へ出よう……伊織の眉宇に深い復讐の決意が刻まれて――。

火付盗賊改メ方長官安部式部(北町嘉朗)にとり、雲霧一味の跳梁を阻止することこそ急務だったが、そんな火盗改メの酷しい探索の手をかいくぐって、雲霧一味は不適な仕事ぶりを今夜も見せた。油問屋武蔵屋が襲われ、五千両が煙のように消えてしまった。

半年前から女中に化けて住み込ませた因果小僧六之助の手引きで、一家中を一服盛って眠らせておいたスキにユウユウと金蔵から運び出される千両箱――。そんな一味のやり口をこっそり見とどけていた奴がいる。これが人にきいた雲霧一味のやり口か……舌をまく七化けのお千代と山猫の三次の二人だったが、ついに六之助に発見され、首領の雲霧の前に連れて来られる。

生かすも殺すも勝手にしろ。そこは度胸の坐ったお千代だ、頭巾を取って、艶然と微笑む。初めてお千代の顔を見て、仁左衛門はあっと声をあげそうになった。似ている、おりょうに生きうつしだ……。この時のお千代には、仁左衛門のそんな驚きなぞ分かろうはずもない。俺と一緒に仕事をせよ、という言葉にただ意外に思うお千代だった。

常に先を読む仁左衛門である。筋書きをこしらえるのは早い。今度の一世一代の大仕事にこのおりょうによく似た女は役に立つ。松屋善兵衛(武藤英司)の想いものにさせて、じっくり時を稼いでおいて、ごっそりと根こそぎいただこう――。

新参者のお千代ばかりが重宝されて、お松とおみつは面白くない。

仁左衛門の思惑どおりに事は運んだ。京のさるお公家の若後家というふれ込みで接近させたお千代を、すっかり気に入った善兵衛は、宿の主人になりすました吉五郎に、ぜひ妻にとたっての懇望。今では首尾よく老中職に納まった加納藩主安藤対馬守にとりいって、これ又まんまと幕府御用達の豪商に成り上がった善兵衛だった。

今のお千代の気持ちは複雑である。お首領(かしら)のためなら何でもする気でいる。だが、当のお首領は自分をどう思っているのだろう。命を助けてくれ、そして自分を抱いてくれた。それもただの酔興だけではない気持ちで……お首領の心の中には何があるのだろうか。

そんなうちにも、善兵衛とお千代の縁組の準備はどんどんすすむ。気のすすまぬお千代だったが、これも一時のしんぼう、大仕事が終わったら、晴れてお首領と暮らせるのだ。その頃、やっと弟伊織の消息をつかみ、今の有様に驚き怒った蔵之助は、何とかして弟の気持ちをひるがえさせようとするが、無駄であった。

一方、雲霧一味を追う安部式部は、ふとしたことから邂逅した伊織の口から、脱藩のことをきき、事情を知るために家老八木重右衛門がいるのをさいわい、松屋を訪れる。

伊織とは若い頃、同じ道場で剣の道を学んだ仲だ。その彼が今どの様な人物であるか、神ならぬ身の、式部は知る由もない。重右衛門の口からきかされた伊織達の罪状の意外さ。

お千代ともどもに松屋へ入りこんだおみつの口から、御側室おりょうの方と面ざしがウリ二つ、ときいてハッと目をひらかれるお千代。だが、そうこうする間にも、時は刻々と迫って来る。

雲霧仁左衛門にとって、これは最後の大仕事になろう。松屋を襲うのは、これまでの仕事とは訳が違う。これが済めば、あとは八木重右衛門ただ一人……。兄上、わしが一人でやろうとしたのは、兄上をまきこむまい、との心からだ。首尾よくとげられるか、どうか……兄上、よく見守っていて下さい!

最後の独白、熱すぎですと言いたくなる気合いの入ったあらすじ。雲霧誕生秘話から始まるとはさぞ見応えがあったことだろう。…でもこの弟キャラ全開の雰囲気だと、原作みたいに兄さんが代わりに云々という展開ではなさそうな(クライマックスは江戸城の大屋根が舞台みたいだが、どうなったんだろう?)

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梅田コマ劇場公演(S54年8月)[1]

2009年10月06日 | 舞台公演
(S54年8月 梅田コマ劇場公演パンフより引用)

【御挨拶 天知茂】
本日は盛夏の中、御来場を賜り誠に有難うございます。
今回私の芸能生活三十周年記念の公演を、当梅田コマ劇場にて皆様にご覧頂く機会を得ましたことは、何にも勝る役者冥利と観劇致しております。
思えば梅田コマは、私の大阪での初舞台を踏みました想い出多い劇場であり、此度は十年振りに古巣に戻った心持ちで、いわばホームグラウンドでの全力投球をいたしたいと思って居ります。
私の三十年は良き先輩、素晴らしい仲間によって支えられて参りましたが、今回も伊藤雄之助さん、高田美和さん、茶川一郎さん、西尾美栄子さん、御木本伸介さん、そして林成年さん、東てる美さん、カルーセル麻紀さんの初参加を得て、一段と舞台に重厚さと華麗さを増すことと存じます。
又、旧友である宮川一郎先生の脚本、山本和夫先生の演出による池波正太郎先生原作の『雲霧仁左衛門』は、現在関西テレビより放映中の私の主演作であり、今回の公演により一層の当たり役に致したいとの決意です。そして『うしろ姿のバラード』は、私の歌心を通して新しき一面をお見せしたいと思います。
皆様の変わらぬ御支援を受けて三十年この道を歩いて参りましたが、尚、三十一年目よりの自己の可能性をこの公演に賭けて、一層芸の道に精進する覚悟でございます。今後とも皆様の御支援、御鞭撻の程、御願い申し上げます。

【役者が好きでこの道に入って三十年――天知茂の肖像】(土手善夫)

「芸能生活三十周年を迎える来年は文字通り翔んで翔んでの年になります」――これは昨年暮れ、占いにも造詣の深い美輪明弘のご託宣だったが、これをきっちり具現した。

まず歌――テレビ『非情のライセンス』の主題歌『昭和ブルース』は放送終了後の今も着実なペースで売れ、実数で五十万枚を突破。四月、初めて作詩して歌った『うしろ姿』も有線放送を中心に出足は快調。六月には日劇で初めて“歌手”としてワンマンショーを持った。

次いでテレビ――七月から関西系で『雲霧仁左衛門』がスタートした。平均視聴率は二十パーセント台と驚異的な人気。そして今月のコマの十年振りの出演である。歌、テレビの好調にすっかり気を良くし、余勢をかっての登場は猛暑にうだる浪花っ子を涼味満点のステージ展開で爽快にしてくれることうけ合い。

鞍馬天狗ようのコスチュウム始め、浪人、町人などおよそ時代劇に登場する全ての人物を早変わりで見せたり、コマの舞台機構を縦横に駆使し、テレビでは味わえないナマの迫力で客席を魅了しつくす。そして市川猿之助のケレン芝居にどこまで追いつけるかチャレンジすると言い切る。さらに、ジャン・ギャバンやアラン・ドロンの見せる悪の愉しさといったニュアンスが雲霧から出せたらとも。それには「登場人物の人間性を深く掘り下げ、芝居の味付けを濃密にすることで悪の魅力が生まれるのではなかろうか。雲霧が何故、盗賊になったか。狙うのは今様にいえばロッキード、グラマンをめぐる黒い商社といった設定で、行為は悪だが、それが弱者救済につながっているといった展開でなければならない」天知独得の識見である。

芸能界入りして三十年だが、初めて世に名前が出たのは二十六年。新東宝の『恐怖のカービン銃』だった。芸名の由来がふるっている。天知は当時の中日ドラゴンズの監督、茂は現巨人のコーチで当時の投手だった杉下の茂から。杉下はフォークだったが、天知は現代劇でスタートしたものの時代劇もこなすスイッチ・ヒッターとして活躍した。初舞台は三十九年のコマ。木暮実千代と共演の『雪夫人絵図』。だから今度のコマ出演を「里帰りしたような気持ちです」と言うのもうなづける。

「俳優は虚像を無くしてはいけません」が口ぐせで、「トイレの中まで紹介するなんて無茶苦茶」と言う。一歩、家を出ると町を歩いていても喫茶店に入っても天知茂の顔、すなわち虚像を保ちつづける生活でなければいけないというわけで、だからこそ昔の俳優はスターであり得たというのである。ファンもまたそこに夢を托すのである。

眉間にシワを寄せ、美しい目がするどく光る時、そこはかとなく哀愁が漂う。男臭さの中にふと見せる男の孤独感とアウトロー的な生きざま――『非情のライセンス』における天知ふんする主人公、会田刑事のキャラクターは天知の極め付けである。アウトロー刑事のふきだまりである警視庁特捜部。法律でどうしても裁けない悪も存在する。そうした悪にややもすれば警察機構からはみ出して敢然と立ち向かう。はみ出し刑事と冷笑されながら生命を賭けるいさぎ良さ。がんじがらめの管理社会にへきえきした人たちの心を打つのも当然である。もちろん警視庁にそんなセクションは無く、ロケ撮影もいっさい許可されなかった。それでいて警察雑誌への寄稿を依頼されたり、機動隊を励ます会に出席してスピーチをするなど、テレビを通じての付き合いは深く固いというからおもしろい。「仲の良い刑事さんにドラマで使ったネクタイ、背広をプレゼントしたこともあるほど親しくしています。『――ライセンス』は四年前に終わりましたが、今だに再放映の声が高く、パートII製作の話が持ち上がっているほどです」――天知のライフワークである会田刑事はまた天知の営業用の素顔である。「私がだれかれなくニコニコしておれば営業面で失敗です。ただし心は別ですが……」と。

男のたくましさと哀愁を漂わせるカッコいい天知に、一つだけイメージにそぐわないエピソードがある。趣味である。およそ遊びとは全く無縁なのである。酒はいっさい口にしないし、ギャンブルもやらない。「結局、私は無器用なんですよ」と片づける。「役者が好きでこの道に入った。そして三十年やって来た。テレビのこと、歌のこと、舞台のことなどあれこれ考えているとすごい快感をおぼえるんですよ。何物にも代えがたい快感を。だから無趣味になったのかな」――趣味は仕事とはキザに聞こえるかもしれないが、天知がこう言って腕組みして考え込む表情からは人の良さしか感じさせない。誠実な人柄なのである。

誠実といえばこうも話している。「三十年かかってまだこれしきのことしか出来んのかと自分を怒りつけています。夢の十分の一も果たしていないじゃないかとね。三十年を一つの区切りに新たな出発をと自分で自分のシリを叩く意味で三十年記念と舞台やショーのタイトルにつけているんですよ」と。

(どて・よしお デイリースポーツ文化部)

【コマ芸能ニュース】
「夏芝居らしく本水を使ったり、天守閣の屋体くずしを工夫したり、楽しいものにして思い切りあばれ回ってみたい。テレビで出せないナマの迫力が舞台の魅力」(毎日新聞7月16日付夕刊の記事より)と、天知茂は去る7月11日の記者会見で熱っぽく語りました。今年は芸能生活30周年。「“雲霧仁左衛門”を、これから31年目い向けて、夢や可能性を果たしていく出発点にしたい」(スポーツニッポン12日付)とも。当日の制作発表には主役の天知のほか、カルーセル麻紀、東てる美、茶川一郎、西尾美栄子が出席、にぎやかな雲霧一党の顔合わせでした。

*「雲霧」放映真っ最中(視聴率も20%を越えていたらしい)の1979年8月1日~25日の間に上演された「雲霧仁左衛門/うしろ姿のバラード」。早変わりはあるわ水は出るわ、一大スペクタクルだった模様。しかも1カ月公演…今なら毎日でも行くのになあ。

*ただ、非ライのパートII(第3シリーズ)は要らんかったと思う。
コメント (2)
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退屈な時間

2009年05月08日 | 舞台公演
(1957年8月20日付け読売新聞より引用)

新劇を勉強
新東宝の若手が公演


いま新東宝の若手俳優たちは撮影のひまをみては、新劇の勉強に余念がない。去る5月上旬から勉強会のつもりで集まっていたグループが、この秋東京六本木の俳優座劇場で公演することになったからだ。

そのグループ名は「演技道場」。三ツ矢歌子、城実穂、江畑絢子、田原知佐子、北沢典子、松本朝夫、天知茂、御木本伸介、杉山弘太郎、国方伝の男女5名ずつの10名で、森本薫の「退屈な時間」を上演する。

俳優座の演出家島田安行氏に撮影所に来てもらって、これら新東宝のホープたちはセリフの勉強やら立ちげいこなど暑さも吹きとばす勉強ぶりである。


*朝日新聞には記事が載っていないようなのでこれ以上の詳細は不明だが(ヨミダス歴史館&かまたさんに大感謝)、こういう劇もちゃんと勉強して上演していたとは驚いた(…そういえば、北町嘉朗さんと出会ったのは棒術の稽古をつけに行ったときだったそうだし、いろいろやってたんだなあ)

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新橋演舞場公演(S39年9月)

2009年04月15日 | 舞台公演
S39年9月 新橋演舞場公演パンフより

タレント電話対談
聞きて:大木豊

プー、プー、プー……
発信音はしているのだが、なかなか相手がでてこない。
やっと、通じたと思ったら、交換嬢の声で『まちがってかかりましたから、おかけなおし下さい』ときた。
ブラウン管に咲いた“悪の華”、イカス男性の声を早くききたいと焦った(?)せいか、どうやら番号をかけまちがえたらしい。

二度目――こんどはまちがいなく天知の声だ。
『初舞台で、感無量でしょう』
『ええ。いまのうちにできるだけ舞台の経験をつんでおこうと思いましてね』
『こんどの演舞場は、友情出演という形になっているんですね』
『「道場破り」で、映画は丹波哲郎さんのやった役をやることになっています。仲よしの長門君のために、すこしでも手助けができればと思って、一生懸命やりますよ。彼とはお互いに持ち味もちがうし、これからもいっしょに仕事をすれば、必然的にホーム・グラウンドもできるわけで、比較的やりたいものもできるからでしょうから楽しみです』

いまのところ、十月は大阪梅田コマ劇場で、木暮実千代との初顔合わせ(*「雪夫人絵図」)がウワサにのぼっているし、十二月には名古屋の名鉄ホールで主演の話(*実際は翌年一月の「初笑い清水港/ミスター・シャネル」)もあるというから、ことしの下半期、天知は舞台で暴れそうである。

*とりあえず間違い電話はだめでしょう、大木さん(ネタですか)…てっきり誰かとのおしゃべりが長くて通話中のプープーかと思ってしまった。

*長門さんとは「男ならやってみな」で初共演してから仲がよくなったようだ(それ以前にも、「これが法律だ」で一緒に出ているようだが接点はなかったのかもしれない)

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御園座公演(S57年8月)

2009年02月15日 | 舞台公演
(昭和57年8月 御園座公演パンフより引用)

天知茂のスペインロケ
永野靖忠(監督)

歴史の中をさまよい歩いている錯覚にとらわれるスペインへ、この6月、サッカーのワールドカップが開かれている最中ロケに行った。
ローマ時代に造られた水道橋が、そのまま眼の前に突立っている驚き、その見事なバランスの美しさ。しかも今でも給水用として使われているという喜び――。このような経験を、到る所で味わったものである。と云っても、スペインを隈なくロケした訳ではなく、僅かセゴビア、マドリッドとその近郊、及び地中海に面したバルセローナでの仕事であった。

この限られた時間と限られた場所ではあったが、その印象は強烈なものであった。木造文明に育った我々が、石造文明の強靭さに対して抱いた畏怖。時の流れが直に身体を揺さぶる興奮。天知茂も私と同じように、いや、むしろそれ以上に感動を受けたようである。なにしろ、スペインでの映画づくりを5年前から企画していたのだし、それをテレビ朝日、東映制作の土曜ワイド劇場「第三の女」(夏樹静子原作)として実現出来た歓びが、スペインの風物や人情に投影して跳ね返ってきたのである。

5年前、天知茂さんは私が演出を担当したテレビドラマ「孤独の賭け」に主演しており、たまたま来日中のスペインのトップフラメンコダンサー兼女優のラ・ポーチャと知り合い、特別出演して貰ったのが、そもそもの始まりであった。それまで、映像とか、スペイン料理店でのあまり上等とはいえないフラメンコにしか接する機会のなかった我々は、彼女の踊りにまさしくフラメンコの神髄を見、スペインの“女”を強烈に印象づけられたのである。

ラ・ポーチャを通して、ポール・ナチィとも知り合う事が出来た。ポールはスペインで映画監督兼俳優として活躍しているスペイン映画界の第一人者である。
そして、天知茂とポール、ラ・ポーチャ、それに私の4人は幾度となく映画について語り、人生について語り合うようになり、心底から理解出来る友人としての絆が結ばれていった。
以来、天知さんと私はスペインでの映画製作と、2人の共演を共通の夢として持つことになり、その実現への様々な努力を重ねたのである。そして今回の土曜ワイド劇場「第三の女」として実を結んだのである。

「第三の女」は2人のスペイン人の協力なくしては完成しなかったであろう。ポールとポーチャは、我々を深い友情で迎えてくれた。その上、無報酬で出演してくれたのである。彼等は、我々ロケ隊がスペインに滞在中、出番があろうがなかろうが、朝早くから夜中まで、まるで自分の作品のごとく行動を共にしてくれたのである。我々は今迄に経験したことのない深い感動につつまれた。

多才なポール・ナチィは云った。
「人間の能力には限界がある。その能力を一つの仕事に集中させてこそ、いい仕事も出来るし、有意義な生き方が出来ると思う。あくせく稼いでみたとて、俳優にとって、どんなプラスがあると云うのか?」
私たちは日頃考えていたことを言い当てられて返事が出来なかった。これは俳優にとどまらない。日本の映画人全体を含めてのことである。

天知茂は、ポールとラ・ポーチャを、いやヨーロッパの映画人を知ったことにより大きく変わったようである。それは次のことから推量出来る。
「第三の女」の日本での撮影が、スペインから帰国後、数日して行われた。ポールとラ・ポーチャも出演シーンが残っていた。撮影が完了する日まで、天知茂は、自分の出番がなくとも、ホテルに彼らを出迎え、撮影所に通って来た。そして甲斐甲斐しく2人のために尽くしたのである。
天知茂のこの行動の意味することは歴然としている。天知茂は、自分が受けたスペインでの厚遇に対する返礼として行動しただけではなかった。
「自分の仕事を大事にすべきだ」
ヨーロッパの映画人から感じたことが、自分の血肉となり、行動として現れたに過ぎないのだと思う。

天知茂は、ポールとラ・ポーチャの友情に充分応えた。そして、国際俳優として、いや国際人として大成する日の近いことを私は信じて疑わない。それは9月に名古屋テレビで放映される「第三の女」と今度の舞台での彼の演技を通し、ファンの方々にも分かっていただける筈である。

*花シリーズ第3作「花のなごや金の鯱」(共演:高田美和さん)公演時のパンフより。公演内容そっちのけで「第三の女」の番宣になってしまっているが、資料的には興味深い。
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明治座公演(S50年8月)

2008年11月19日 | 舞台公演
(公演パンフより引用)

天知茂――愛嬌と色気――

ある週刊誌で、整形手術の座談会で、男の人の希望に“天知茂”のようにというのが一番多いと書いてあるのを読んだ。
という事は天知茂の風貌は、万人から見てもっとも“今日的”だということかもしれない。
一昨年の“木暮実千代35周年記念公演”に明治座に初出演して以来、昨年は8月公演をあけ、本年は又、競演と、天知茂の舞台の人気はあがるばかりだ。

天知茂の魅力というと、あのすごみのある渋みをあげる人が多いが、舞台の場合は、渋みだけでは通用はしない。彼のもっている派手な一面――愛嬌といってもよいし、色気といってもよい。
「花と龍」の金五郎の黒の紋服の姿のよさ。「本所あづま亭」の芸人のぞろりとした感じ、又、「濡髪小僧」の髪のほつれに切れ長の目の悲壮さ――、ご婦人方にはたまらない魅力だろう。

今後、舞台をつづけていく天知茂には、映画やテレビのスゴミや渋みは、そこにおいておき、舞台の上では、歯をくいしばって悪と対し、甘い恋に身を投じるとかいう二枚目がいい。もっと、その美貌を活用すべきだ。

(記事となりにあった美貌の写真こちら


*そうだったんですか当時の整形希望のおとーさんたち!
たしかに二重瞼で鼻筋通ってて整った面立ちではあるけども、そこまで“今日的”とは思っていなかった。…まあ、散髪屋で希望聴いてるわけじゃないし?(←おい)

*というより、あんまり男前だとモデルにしにくいから、庶民的な顔、ってことなのかもしれない。あんなコワモテの庶民はどうかと思うが。
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浅草国際劇場公演(S40年12月)[2]

2008年03月25日 | 舞台公演
(1965年・S40年 12月 浅草国際劇場パンフより)

イカしてる野郎たち

作:今村文人・三芳加也・安藤豊弘
演出:片岡政義・中原薫
振付:福田一平
音楽:深田浩一・山本丈晴
装置:国東清
衣裳:武藤哲
照明:相原誠一郎
舞台監督:大越靖雄・山田元彦
進行:荒井恒昭
音響効果:川北茂
殺陣:間一格

第1景:バレエ練習場
イカしてる野郎たち――原潜の辰(天知茂)、ズタ袋のジョージ(高城丈二)、へそ天の政(水原弘)の3人は脱獄したのも束の間、逮捕されて再び志古木刑務所へ。

第2景:志古木刑務所・運動場
志古木刑務所の運動場。足首に大きな鉄の玉のついた鎖をはめられた3人。看守長(柳田豊)を催眠術にかけ眠らせ、鉄の玉からウイスキー、チーズ、ピーナツからおしぼりまで取り出して娑婆を恋しがりながら酒盛りがはじまる。

第3景:東京のスカイラインを見渡すビルの屋上
(出演は天っちゃんと野川由美子さん)

第4景:南国の楽園
(出演は高城丈二さんと、Wキャストのロミ山田/沢たまきさん)

第5景:横浜港の夜景
(出演は水原弘さんと志摩ちなみさん、“紳士”役で宮口二郎さん)

第6景:刑務所内雑居房
第1雑居房では原潜の辰が囚人を相手に得意のポーカーを戦わせている、ツキまくる、囚人たちはあまりツクのでイカサマだと騒ぎ出すので、催眠術にかかったままの看守長から拳銃を取り上げて一喝する。恐れ入る囚人たち。
第2雑居房では特別の仕掛けがあると云う錠前を相手にジョージが得意の腕前を披露している。ジョージの手に掛っては特製の錠前も簡単に外されてしまう。腹の減った一同に、ジョージは便器の中から大きな鯛を釣り上げる。ガツガツと鯛を取り合って騒いでいる中に、天井から降りてきた釣糸にさらわれて鯛は上へ上へと――
第3雑居房では釣り上げた鯛を持って政が現れ、得意の庖丁の腕をふるう。

第7景:志古木刑務所近くの道
再び脱獄に成功した3人。仕事を求めて横浜へ――

第8景:横浜のナイト・クラブ
「赤狐(レッド・フォックス)」ではカオリ(志摩ちなみ)が人待ち顔。やって来たのはちんぴらのトリガラの鉄(小柳修二)とチビ安(久野四郎)、勿論お呼びではない。そこへ自分の持っているお守袋と同じものを持っている妹を探しに一郎(富士一郎)が来る。こんな人達と付き合うのは止めなさいとカオリに云われて帰る一郎は、大事なお守袋を落としたのに気がつかない。、ジョージ、政の3人がやって来る、カオリの待っていたのはこの3人だった。仕事と云うのは10億円のダイヤモンドだと聞かされ、張り切る3人。

第9景:横浜のナイト・クラブ
はギャンブラー、ジョージはマネージャー、政はバーテンとして「赤狐(レッド・フォックス)」で働くことになる。カオリに呼びつけられた3人は10億円の仕事の内容を打ち明けられる。
仕事と云うのは――南太平洋の楽園、ナカセル共和国の文化使節として、近く来日するナカセル舞踊奇術団の団長タスカルノ(山口正夫)は、かつて独立運動の志士として日本に留学したこともある大物で、副団長のダニラ(伊吹武)が反乱軍の指令を受け、10億円のダイヤモンドを日本へ運び込み、現ナマに代え、これを反乱軍の軍資金にすると云う。このダイヤモンドを奪おうと云うのだ。

第10景:ヨット・ハーバー
団長の令嬢で、舞踊団の花形である美紀(磯野千鳥)、兄を探している秀子(林田秀子)、児玉財閥の御曹子健一(宮口二郎)、どうやら健一は美紀にご執心の模様。

第11景:ボラレル・ホテルの大ホール
今宵ホテルの大ホールではナカセル舞踊奇術団のクリスマス・パーティが盛大に行われている。
体の具合の悪くなった美紀をジョージが介抱し乍ら部屋へ。心配する秀子は大事なお守袋を落としたのも気が付かない。
そこへガラ鉄、チビ安、一郎がやって来ていんねんをつけるが、の一発で張り倒される。床に倒れた一郎は秀子の落としたお守袋に気がつく。一郎は秀子が探していた妹だと判るが、チンピラ・ヤクザの身を恥じて、俺はあんたの兄貴ではないと立ち去る。唇をかみしめて立ちつくす秀子を優しくなぐさめるカオリ(ここから野川由美子さんに役柄変更)。

第12景:ボラレル・ホテル5階ダニラの部屋
ホテルのダニラの部屋へ、ブラック・ガイズ(天っちゃんのEPのバックコーラスを担当しているあのブラック・ガイズ)が豪華な衣裳箱を運んで来る。ダニラはこの中には例の大事な物が入っているから、厳重に監視する様に言いつける。そこへ料理を乗せたワゴンを運んでがやって来て、素早く室内を観察する。視線は金色の箱に止まる。窓から忍び込んだ政はブラック・ガイズに捕えられ、ダニラからあの箱はカモフラージュだと聞かされる。
美紀を介抱したジョージは、タスカルノから明日の早朝、ダニラがもっとも大切にしているドロンの金色仏が横浜から国際劇場へ運び込まれることを聞き出す。

第13景:浅草国際劇場
舞台ではナカセル舞踊団の民族舞踊が華やかに繰り広げられている。クライマックスはナカセル舞踊奇術団が世界に誇る奇術ショウ、金色の仏像に人間が入り念仏を一唱、手を合わせると人間が一瞬にして消えてしまう。と云う。希望者を席から募ると老人夫婦に化けたガラ鉄とチビ安が舞台に上がる。
舞台のソデでは、ジョージ、政と一郎の4人が、仏像の中にダイヤモンドがあると睨んで見守っている。が一回転した仏像には入っていない。怒ったダニラ、サソリ(田村ゆきえ)、ブラック・ガイズの一味は拳銃を団長と美紀に突きつけ、ダイヤを返せとおどす。その時一回転した仏像の扉が開いて自動小銃を構えたと、パイナップルを1つずつ持ったジョージと政が現れ、ダニラ達をしばり上げる。
引き上げ様とする3人に警官が現れ、3人を逮捕する、パイナップルの中味はダイヤモンドだったのだ。シュンとする3人。カオリは実は防犯課経済係の捜査係長だった。
一郎と秀子は晴れて兄妹の体面をし、美紀と健一は結婚することになる。
3人は揃って刑務所へドライブと洒落込む。

第14景:フィナーレ
全員総登場して華やかなフィナーレ。

*たった10日間しか上演されなかったらしいこのドタバタ劇、見てみたかった・・・!

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