(1973年・S48・4月19日付読売新聞より引用)
“ホットな顔”も見せる天知茂
「通りゃんせ」(フジ系)で子連れ医者に
「非情のライセンス」(NETテレビ系木曜午後10:00)で、久しぶりに“一匹狼(おおかみ)もの”の主役を演じている天知茂が、ガラリと“顔”を変えて、フジテレビ系のホーム・ドラマ「通りゃんせ」(21日から、土曜午後9:30)にレギュラー出演する。男やもめの内科・小児科医という役柄だが、彼にとってホーム・ドラマは初めて。いままでに見せたことのない“新しい顔”を披露することになりそうだ。クールな顔とホットな顔を使いわける彼に、インタビューしてみた。
【初のホームドラマ 非情からの変身に苦労】
クールなほうは「非情のライセンス」の刑事、会田健。警視庁特捜部所属、38歳の“はみ出し刑事”で、非情な手段で、悪に立ち向かう。
36年に「休日の断崖」で初めてこういう役を演じて以来、「孤独の賭け」「廃虚の唇」「悪の紋章」「一匹狼」「夜の主役」など、一連のドラマで彼のイメージができ上がった。
「やっぱり一匹狼ものって自分のキャラクターに最も合ったものだと思うんですよ。ただ、同じようなものばかりやってきたでしょ。どうしてもマンネリになっちゃうんです。だからしばらく休んだ。今回の“はみ出し刑事”役もこの種のものとしては3年ぶりなんですよ」静かに天知は語る。
同時に初めてのホーム・ドラマにとりかかるわけなのだが……。
「ホーム・ドラマねえ。ときどき家で『ありがとう』なんかを見るんですよ。ドラマチックじゃない。ストーリーも別段変ってるわけじゃない。だけど“何か”があるんです。茶の間の人が見てくれる“何か”がある。いまの私にはわからないけれど……。それが何であるかをつかみたくて、ホーム・ドラマを積極的にやってみる気になったんです」
「通りゃんせ」は養父(松村達雄)、義妹(坂口良子)、養父の孫(相吉賢一)と一緒に生活し、主婦代わりをしながら呉服店を切り回している小柳しのぶ(大空真弓)が、下町の隣人たちの祝福を受けて、近くに引っ越して来た男やもめで子連れの内科・小児科医の貝原比佐志(天知)と結ばれるまでを描いた26回の人情ドラマである。
「私にも中学3年と小学校4年の子供がいましてね。ホーム・ドラマは“地”でいけばいい、ってよく言われますけど、私はそうは思わない。ホーム・ドラマ的な生活をしていないんで、私の場合はやっぱり演技です。演技といっても“いかに自然にやるか”ってことじゃないでしょうか」
現在「非情のライセンス」が週に5日、「通りゃんせ」が週2日というスケジュール。うち1日は、午前中“非情な顔”を出し、午後からは“子連れ医師”に変身する。
「正直言って、これは苦労しますよ。役者ってのはいつでもすぐに頭の切り替えができなくちゃいけないんでしょうが、私はこれが苦手でして。家で同時に2本のセリフ覚えるなんてとてもできない。だから分けて覚えるようにしてる。ドラマやってるときはその役柄になり切っちゃってるからパッと変身できない。だけど不思議なものでしてねえ、この“非情のライセンス”用の背広を着てると、刑事みたいな顔でいられるし、これをぬいで、白衣着て子役と2人になると、こんな顔に自然になってくるんです」と口をへの字に結んでみたり、やさしい顔で目じりをさげてみたり。彼はやはり相当の役者である。
新東宝(26-36年)時代から、役者生活もう22年、自然に身についたものだそうだ。そういえば、テレビ出演も12年以上になる。
「最近は視聴率というのをかなり気にするようになりました。映画や舞台でいえば、観客数と同じですからねえ。“非情のライセンス”は15.7%とまずまずのスタートでしたが、“通りゃんせ”はどのくらい見てくれますか、低いとやっぱり責任感じちゃいますから」
役者に徹し、今度のホーム・ドラマもやる気十分。どんな新しい顔を見せてくれるか楽しみである。
*非ライ用“会田背広”を着ながら目じり下げてる写真(こんなの)つき。
*「ホーム・ドラマ」と名の付くものに出るのは初めてかもしれないが、それこそ新東宝時代からライトな役とハードな役を交互にこなしていた天っちゃんだけに、結構キマっていたかもしれない(けど、残ってないんだろうかフィルム…)。
“ホットな顔”も見せる天知茂
「通りゃんせ」(フジ系)で子連れ医者に
「非情のライセンス」(NETテレビ系木曜午後10:00)で、久しぶりに“一匹狼(おおかみ)もの”の主役を演じている天知茂が、ガラリと“顔”を変えて、フジテレビ系のホーム・ドラマ「通りゃんせ」(21日から、土曜午後9:30)にレギュラー出演する。男やもめの内科・小児科医という役柄だが、彼にとってホーム・ドラマは初めて。いままでに見せたことのない“新しい顔”を披露することになりそうだ。クールな顔とホットな顔を使いわける彼に、インタビューしてみた。
【初のホームドラマ 非情からの変身に苦労】
クールなほうは「非情のライセンス」の刑事、会田健。警視庁特捜部所属、38歳の“はみ出し刑事”で、非情な手段で、悪に立ち向かう。
36年に「休日の断崖」で初めてこういう役を演じて以来、「孤独の賭け」「廃虚の唇」「悪の紋章」「一匹狼」「夜の主役」など、一連のドラマで彼のイメージができ上がった。
「やっぱり一匹狼ものって自分のキャラクターに最も合ったものだと思うんですよ。ただ、同じようなものばかりやってきたでしょ。どうしてもマンネリになっちゃうんです。だからしばらく休んだ。今回の“はみ出し刑事”役もこの種のものとしては3年ぶりなんですよ」静かに天知は語る。
同時に初めてのホーム・ドラマにとりかかるわけなのだが……。
「ホーム・ドラマねえ。ときどき家で『ありがとう』なんかを見るんですよ。ドラマチックじゃない。ストーリーも別段変ってるわけじゃない。だけど“何か”があるんです。茶の間の人が見てくれる“何か”がある。いまの私にはわからないけれど……。それが何であるかをつかみたくて、ホーム・ドラマを積極的にやってみる気になったんです」
「通りゃんせ」は養父(松村達雄)、義妹(坂口良子)、養父の孫(相吉賢一)と一緒に生活し、主婦代わりをしながら呉服店を切り回している小柳しのぶ(大空真弓)が、下町の隣人たちの祝福を受けて、近くに引っ越して来た男やもめで子連れの内科・小児科医の貝原比佐志(天知)と結ばれるまでを描いた26回の人情ドラマである。
「私にも中学3年と小学校4年の子供がいましてね。ホーム・ドラマは“地”でいけばいい、ってよく言われますけど、私はそうは思わない。ホーム・ドラマ的な生活をしていないんで、私の場合はやっぱり演技です。演技といっても“いかに自然にやるか”ってことじゃないでしょうか」
現在「非情のライセンス」が週に5日、「通りゃんせ」が週2日というスケジュール。うち1日は、午前中“非情な顔”を出し、午後からは“子連れ医師”に変身する。
「正直言って、これは苦労しますよ。役者ってのはいつでもすぐに頭の切り替えができなくちゃいけないんでしょうが、私はこれが苦手でして。家で同時に2本のセリフ覚えるなんてとてもできない。だから分けて覚えるようにしてる。ドラマやってるときはその役柄になり切っちゃってるからパッと変身できない。だけど不思議なものでしてねえ、この“非情のライセンス”用の背広を着てると、刑事みたいな顔でいられるし、これをぬいで、白衣着て子役と2人になると、こんな顔に自然になってくるんです」と口をへの字に結んでみたり、やさしい顔で目じりをさげてみたり。彼はやはり相当の役者である。
新東宝(26-36年)時代から、役者生活もう22年、自然に身についたものだそうだ。そういえば、テレビ出演も12年以上になる。
「最近は視聴率というのをかなり気にするようになりました。映画や舞台でいえば、観客数と同じですからねえ。“非情のライセンス”は15.7%とまずまずのスタートでしたが、“通りゃんせ”はどのくらい見てくれますか、低いとやっぱり責任感じちゃいますから」
役者に徹し、今度のホーム・ドラマもやる気十分。どんな新しい顔を見せてくれるか楽しみである。
*非ライ用“会田背広”を着ながら目じり下げてる写真(こんなの)つき。
*「ホーム・ドラマ」と名の付くものに出るのは初めてかもしれないが、それこそ新東宝時代からライトな役とハードな役を交互にこなしていた天っちゃんだけに、結構キマっていたかもしれない(けど、残ってないんだろうかフィルム…)。