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梅田コマ劇場公演(S54年8月)[2]

2009年10月07日 | 舞台公演
(S54年8月 梅田コマ劇場公演パンフより引用)

雲霧仁左衛門

池波正太郎 原作
宮川一郎 脚本
山本和夫 演出
仲川吉郎 美術

演出補:中畑八郎
音楽:奥村貢
照明:鳥居秀行
効果:作本秀信
殺陣:安川勝人

【ものがたり】
雲霧仁左衛門――。
その名のように雲か霧か、文字どおり神出鬼没、権力に取り入ってあくどい商いにうつつをぬかす、悪徳豪商をねらって、今も暗夜を走る男。一度ねらいをつけた獲物は絶対に逃さない。数多の手下たちをまるで手足の如くあやつって、人一人殺傷せずに、めざす金蔵に押し入って、ごっそり頂戴つかまつる――。

手足となる手下の数はおよそ三百。主なるところを紹介すれば、小頭・木鼠の吉五郎(林成年)、因果小僧六之助(カルーセル麻紀)、おみつ(東てる美)、お松(西尾美栄子)、加うるに七化けのお千代(高田美和)と山猫の三次(茶川一郎)と、いずれもしたたか者揃い。

さて舞台は、そんな大盗賊が江戸に現れる、およそ五年程前に幕を開ける。

美濃国加納藩六万七千石、ここは勘定方辻蔵之助(御木本伸介)の屋敷。折しも、蔵之助の只一人の弟伊織(天知茂)が、藩内一の美女おりょう(高田美和・二役)と婚約間近、ひときわはなやいだ邸内の風情である。

二人は相思相愛の仲。やがて縁組の許しの出たおりょうをともなって、伊織が帰宅する。兄夫婦の喜びはひとしおだった。だが、その幸福もつかの間、突然やって来た藩の重役、八木重右衛門(伊藤雄之助)から、藪から棒に公金着服のとがにより上意討ち、と迫られる。寝耳に水の兄弟二人。このままむざむざと討たれては、それこそ無実の罪の証しもままならぬ。

老中職につきたい一心で、幕府に金品を贈っている殿の所行をかぎつけ、それを口実に藩政を握ろうとする重右衛門にとって、蔵之助兄弟は邪魔者。有無を言わせず討ってとる魂胆だった。

今死んではならぬ。何とか逃れて江戸へ出よう……伊織の眉宇に深い復讐の決意が刻まれて――。

火付盗賊改メ方長官安部式部(北町嘉朗)にとり、雲霧一味の跳梁を阻止することこそ急務だったが、そんな火盗改メの酷しい探索の手をかいくぐって、雲霧一味は不適な仕事ぶりを今夜も見せた。油問屋武蔵屋が襲われ、五千両が煙のように消えてしまった。

半年前から女中に化けて住み込ませた因果小僧六之助の手引きで、一家中を一服盛って眠らせておいたスキにユウユウと金蔵から運び出される千両箱――。そんな一味のやり口をこっそり見とどけていた奴がいる。これが人にきいた雲霧一味のやり口か……舌をまく七化けのお千代と山猫の三次の二人だったが、ついに六之助に発見され、首領の雲霧の前に連れて来られる。

生かすも殺すも勝手にしろ。そこは度胸の坐ったお千代だ、頭巾を取って、艶然と微笑む。初めてお千代の顔を見て、仁左衛門はあっと声をあげそうになった。似ている、おりょうに生きうつしだ……。この時のお千代には、仁左衛門のそんな驚きなぞ分かろうはずもない。俺と一緒に仕事をせよ、という言葉にただ意外に思うお千代だった。

常に先を読む仁左衛門である。筋書きをこしらえるのは早い。今度の一世一代の大仕事にこのおりょうによく似た女は役に立つ。松屋善兵衛(武藤英司)の想いものにさせて、じっくり時を稼いでおいて、ごっそりと根こそぎいただこう――。

新参者のお千代ばかりが重宝されて、お松とおみつは面白くない。

仁左衛門の思惑どおりに事は運んだ。京のさるお公家の若後家というふれ込みで接近させたお千代を、すっかり気に入った善兵衛は、宿の主人になりすました吉五郎に、ぜひ妻にとたっての懇望。今では首尾よく老中職に納まった加納藩主安藤対馬守にとりいって、これ又まんまと幕府御用達の豪商に成り上がった善兵衛だった。

今のお千代の気持ちは複雑である。お首領(かしら)のためなら何でもする気でいる。だが、当のお首領は自分をどう思っているのだろう。命を助けてくれ、そして自分を抱いてくれた。それもただの酔興だけではない気持ちで……お首領の心の中には何があるのだろうか。

そんなうちにも、善兵衛とお千代の縁組の準備はどんどんすすむ。気のすすまぬお千代だったが、これも一時のしんぼう、大仕事が終わったら、晴れてお首領と暮らせるのだ。その頃、やっと弟伊織の消息をつかみ、今の有様に驚き怒った蔵之助は、何とかして弟の気持ちをひるがえさせようとするが、無駄であった。

一方、雲霧一味を追う安部式部は、ふとしたことから邂逅した伊織の口から、脱藩のことをきき、事情を知るために家老八木重右衛門がいるのをさいわい、松屋を訪れる。

伊織とは若い頃、同じ道場で剣の道を学んだ仲だ。その彼が今どの様な人物であるか、神ならぬ身の、式部は知る由もない。重右衛門の口からきかされた伊織達の罪状の意外さ。

お千代ともどもに松屋へ入りこんだおみつの口から、御側室おりょうの方と面ざしがウリ二つ、ときいてハッと目をひらかれるお千代。だが、そうこうする間にも、時は刻々と迫って来る。

雲霧仁左衛門にとって、これは最後の大仕事になろう。松屋を襲うのは、これまでの仕事とは訳が違う。これが済めば、あとは八木重右衛門ただ一人……。兄上、わしが一人でやろうとしたのは、兄上をまきこむまい、との心からだ。首尾よくとげられるか、どうか……兄上、よく見守っていて下さい!

最後の独白、熱すぎですと言いたくなる気合いの入ったあらすじ。雲霧誕生秘話から始まるとはさぞ見応えがあったことだろう。…でもこの弟キャラ全開の雰囲気だと、原作みたいに兄さんが代わりに云々という展開ではなさそうな(クライマックスは江戸城の大屋根が舞台みたいだが、どうなったんだろう?)
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