ハリソンさんはカノ紳士 ーフランス通過編 ー(後半)

今は昔の18世紀欧州が舞台の歴史大河ロマン。

エンシェント・クリスマスソングの記憶「知ってる曲」が1つも無かったCD

2023年12月25日 | 各話末エッセイ


このCDも前半の作者から譲られた物です。



【各話末エッセイ⑥の3】

 クリスマスソングを集めた
CDの中に「1曲も知ってる曲が無い」
なんて事、普通あります?↺

 子供やファミリー向け、
J-POP、アメリカの曲でなら
そんな事はあり得ないでしょう。

 ところが写真のCD中には
見事なくらいに
本当に1曲もありませんでした。

 「ノエル・バロック・アン・フランス」

 17〜8世紀には存在していた、
(中には27話冒頭に出て来た
中世起源の曲もある)フランスの
クリスマスソングを
当時の作曲家達がオルガン変奏曲に
編曲した作品が収録されています。

 構成はドリフの少年少女合唱隊の
ように、オルガン曲が流れる中、
子供達が入場。
並んでアカペラ合唱後に
オルガンの変奏が演奏され、
曲ごとにそれが繰り返されて、
最後はまたオルガン曲に合わせて
子供達が退場して行くといった感じ。

 作曲家は
ニコラ・ルベーグ
アンドレ・レゾン
クロード・ベニーニュ・バルバートル

 ☝️ 学者さんかよっぽど通(つう)の
人にしか分からん方々。


ジャン・フランソワ・ダンドリュー
ミシェル・コレット
ルイ・クロード・ダカン

 ☝️ フランス・バロック音楽の愛好家、
楽器をやってる人だと
分かるかもしれない方々。

 私もルベーグ、レゾン、
バルバートル御三方については
このCDで名前と作品を
初めて知りました。

 フランス発の伝統的聖歌でも、
「荒野の果てに」
「神の御子は今宵しも」
そして、
ビゼーの「アルルの女第2組曲」中の
「ファランドール」の元ネタ
「王の行進」は意外にも
入っていませんでした。

 クリスマスの曲を
集めたCDなので
全体的に楽しい曲が多く、
素敵な曲も沢山ありますので、
漫画パートにもまた出て来る
かもしれません。

 前半の作者はこのCDを
1998年の12月初旬、
アヴィニョンの街の
偶然入ったCD店で
帰国の前日にギリで見つけた
のだそうです。

 

エンシェント・クリスマスソングの記憶「諸人こぞりて」の元ネタは?

2023年12月24日 | 各話末エッセイ


この本も前半の作者から譲られた物です。



【各話末エッセイ⑥の2】

 昔から歌われていて
知名度が高いクリスマス・キャロル
「諸人こぞりて」。

 この曲は幼稚園時代に
クリスマスの歌が沢山入った
音源で聴いて知りましたが、
「荒野の果てに」と同じく
歌詞が意味不明でした。


 そしてこの曲も高校の音楽の
教科書に載っていました。
当時は作曲者がヘンデルと
なっていましたが、

どうもアメリカの
ロウェル・メイスンという
19世紀の音楽家が
ヘンデルの「メサイア」をもとに
作った曲だったようです。

 ので、
クリスマスだし
図書館でCD借りて
約50曲から成る「メサイア」
を聴いてみたのですが、
「どの曲のどの部分を
切り取ったのか?」

そのまんま持って来て
パッチワークしてる訳では
無いので特定が難しいです。

 候補なのは
①「イエス死んだ!」と分かる曲の
後で急に明るく開けた感じに
切り替わる「おお門よ、頭を上げよ」。

②「荒野の果てに」と
全く同じ場面を描いた
「いと高きところには神の栄光あれ」

 この2曲とも冒頭の音の並びが
「諸人こぞりて」とそっくり。

 メイスンという人は
これらの曲が脳内資料として
あった上で「自分はこう続ける、
こう後を展開させる」

譜面を書いてる内に
「諸人こぞりて」ができていた
といった所だったんでしようか?

 ヘンデルの
「いと高きところには
神の栄光あれ」は写真の本に
楽譜が収録されています。
「荒野の果てに」とは
対照的華やかさな調べの

楽譜の周りは中世や
ルネッサンスの絵画で
更に華麗に飾られています。

 「諸人こぞりて」とヘンデルの
参考曲かも?な2曲。
これと出だし音型が
相似なのがもう一曲ありました。


 これまた高校の音楽の教科書に
載ってたジョルダーニ作曲の
「カロ・ミオ・ベン」。


 ジョルダーニも18世紀の
英国で活躍してたそうなので、
ヘンデルの曲調が頭や
心の中に入り込んでいたのかも
しれません。


エンシェント・クリスマスソングの記憶「荒野の果てに」とドリフ

2023年12月23日 | 各話末エッセイ


ドリフの少年少女合唱隊、
たいてい最後はこうなってたらしいが…。



【各話末エッセイ⑥の1】

 メンバーの生き残りが
どんどん減って行く一方、
評価はどんどん高まっている
ザ・ドリフターズ。

 全盛期にリアルタイムで
「8時だヨ!全員集合」見ていた
人達の話では
「少年少女合唱隊」のコーナーで
印象に残っている曲は
夏に歌われた
「Vacation」と
クリスマスの時期に歌われた
「荒野の果てに」だそうです。

 「上と下に分かれての
二重唱が綺麗で好きだった」
と言ってた人がいました。

 私自身はこの曲、
クリスマスシーズンになると
商業施設の有線で
聞こえて来るので知りましたが、
高校の時には音楽の教科書にも
載っていました。

 教科書には「フランス古謡」
とあり、17世紀くらいのかな?
と思っていましたが、
「18世紀の頃から伝わる古いもの」
と書かれている本が多いです。

 歌詞で日本語の部分は
聴けば分かるとして、後半に
何語?か分からない言葉を
引き伸ばして歌っているのが
気にはなりましたが、

教科書を見るまでは
何て歌ってるのか
全く分かりませんでした。

 Gloria in excelsis deo

ラテン語で
「天のいと高きところには神に栄光あれ」

 「四季」の作曲家ビバルディや
モーツァルトにもこの歌詞がある
曲があって、
前半作者から譲られたCDの中にも
「グロリアニ長調」(ビバルディ)
「戴冠ミサ」(モーツァルト)
がありました。

 「荒野の果てに」
野宿をしている羊飼い達の前に
天使達が現れて
救世主が生まれた事を告げ、
天へと帰って行く場面を
歌っているそうです。

 しんみりとした雰囲気が
いい感じの曲なのですが、
同じ場面を歌っていても
作曲者によっては
全く雰囲気違う曲に
なるのです。


 「全員集合」の少年少女合唱隊、
たいてい途中で志村けんさんが
突然「ワァ〜オ!」と叫び出し、
前にしゃしゃり出て来て、

神父で指揮者役のいかりやさんの
制止も聞かず
「東村山音頭」を4丁目3丁目と
歌って行き、
2丁目は無くて1丁目の時には
何故か「白鳥の湖」の格好に
なってたのが凄いインパクトで

記憶に残ってる人が多いようですが、
「荒野の果てに」の時も
そうしてたんでしょうか?


塗油の儀式ではやっぱりあの曲が使われてた

2023年05月11日 | 各話末エッセイ
【各話末エッセイ⑤の6】

 「18世紀に作曲されて以来、
代々英国王戴冠式で必ず使用されている」

 と音楽番組や音楽事典で解説されているものの、
エリザベス女王の長期在位中に
他の使い道を見出されてしまった

曲があります。

 18世紀初めに英国王の主家が途絶え、
現在の王家の先祖となる、
遠縁のドイツ貴族が王位を引き継ぎました。

 ドイツ貴族に仕えていたのがヘンデルで、
次の2代目の国王の戴冠式のために
アンセムを4曲作ります。
その中の一曲が「祭司ザドク」です。

 今では主にサッカーと結びついていて、
サッカー好きの人と話しても
「え?もとはそういう曲だったの?!」
と言われてしまうくらい、
そちら方にカスタマイズされて
馴染んでしまってるのでした。

 他にも「日本一受けたい授業」で
先生が登場する時にかかる曲として以前
使われていました。

 私は実は戴冠式招待者皆様の
ファッションよりも、
「本当に『祭司ザドク』は演奏されるのか?」
の方に興味がありました。

 が…しかし、
「池上彰のニュースそうだったのか!!」
では、儀式の進行はTV画面の端に
小さく表示され、音声は全く聞こえて来ない。
そして、池上さんが「世界の王様の華麗な生活」
を解説して、タレントがコメントする構成でした。

 所々で現地の生中継が入り、
塗油の場面も映りはしましたが、
非公開だとの事で王様は衝立に囲まれ、
その間の外部の絵面が平板で映え無いからなのか、
すぐに画面が池上解説に戻って、
この番組の視聴内では確認できませんでした。

 「こりゃ〜日本のTV視聴での確認は無理かも〜」
と思った矢先、
続いて放送されたニュース番組で確認できました!

 チャールズ3世が秘儀を受けている
箱の外で演奏されていたのは
ヘンデル作曲「祭司ザドク」の
前奏のアルペジオでした。

 曲の終盤が少し聴こえる場面も映り、
確かに「祭司ザドク」の
♪「アーメン、アレルヤアーメン」
と合唱してました。

 という訳で、
クラシック版イントロクイズみたいに
なっていましたが、

「ヘンデル作曲の『祭司ザドク』は
代々英国王の戴冠式で塗油の儀式の際に
歌われる合唱曲である。」


 これは本当だったのです。
 






 


 

牧歌劇「アミンタ」はモーツァルトも作曲ネタにしてる?

2023年05月02日 | 各話末エッセイ
【各話末エッセイ⑤の5】

 その後、
タッソは自作品が実際は高評価なのに
異端審問に引っかかるのでは?
とビビり続け、
狂気の高まりが抑えられずに
突発的奇行を繰り返しては罰せられ、
一つ所に落ち着けない旅ガラスとなり。
桂冠が贈られたのは永眠後でした。

 それから170年後の1765年の夏、
ハリソンさんはロンドンで
友人夫婦とコンサートへ行き、
まだ子供の頃のモーツァルトの演奏を
聴きます。


▲ 前編15-3より


 更に10年後の1775年、
ザルツブルクにハプスブルク家の皇子が
立ち寄り、歓迎のために演奏会形式の
オペラが上演されました。

 そのモーツァルト作曲のオペラが
「羊飼いの王様」といい、
主人公の名がアミンタというのでした。

職業も牧畜業で同じです。

 が、同じなのはここまで。
ヒロインは妖精のシルヴィアでは無く、
貴族の姫君エリーザ。

 牧歌劇「アミンタ」は
ギリシャ・ローマ神話の世界観を
引き継いだ北イタリアの緑生い茂る
郊外の雰囲気で、
時代もハッキリしていない。

 オペラの方では
紀元前4世紀の
中東にあるシドン市中と周辺の
田園地帯が舞台とされている。

 そして、恋人達を散々悩ましておいて、
最後に結び合わすのは
アレクサンダー大王なのだった!

 大王が遠征中に征服した。
フェニキアの中の都市国家シドンの
僭主に変わる人物として、
元王家の血を引くアブダロニュモスを
探し出して新王にしたという
史実の資料に基づいて、
メタスタージオ翁が書いた
台本を更に改作してから
モーツァルトが曲を付けたのでした。

 史実ではアブダロニュモスは
貧乏暮らしではありましたが、
羊飼いでは無かったようで、
庭師だったという絵が残っているとの事。

 18世紀には「田舎で牧畜しながら
のどかに暮らしたい」という考え
(現代の「都会を出て田舎で農業して暮らしたい」
みたいな―か?)があったらしく
史実と時代の理想を取り混ぜ、
「羊飼いなら名は有名なアミンタで行こう!」
更に話を面白く盛るため、
アミンタにはアーサー王伝説にでも
出て来るみたいな出生の秘密も付け加えよう!
―となったのでは無いかと思われます。

 確かにアミンタ同士、
どちらも恋愛に対して諦めの悪い所等、
性格はそのまんまなようですが…。

 とはいえ、
「羊飼いの王様」の原作が「アミンタ」だと
言うには薄まり過ぎたといった感じです。


 原作だったとしても、
タッソとの間にアレクサンダー大王や
アブダロニュモス、メタスタージオが入り、
最後には「どんなに人真似しても
自分の世界になってしまうモーツァルト」

が来てしまっちゃあね〜!?

 全然別物になってしまうわな〜こりゃ!

 以上が牧歌劇「アミンタ」についてでしたが、
いずれこのブログの本体の話とも繋がって行く
事になるでしょう。