夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

福島は希望をもって子育てできるようになったのか?

2015-06-10 | news
先日発表された2014年の人口動態統計について、合計特殊出生率(TFR)が1.43から1.42へと9年ぶりに低下したことが話題になった。また、福島県の出生率が2013年の1.53から2014年は1.58に大幅増加したことを取り上げた記事もあった。「福島の出生率が東日本一に」という記事には以下のようなコメントをした。

出生率について、こういうおっちょこちょいの議論をする人が多いから先日、ブログで「合計特殊出生率は便利で危険な数字」という記事を書いた。

論点はその記事で尽くしているので簡単に書くが、福島県での出生率の一時的な上昇は典型的なテンポ効果ではないか?
つまり大震災後、出産を控えていたことの反動ではないか?

次に出生率の上昇は出生数、すなわち子どもの数が増えるわけではない。
全国的に出産する若い女性が減少していることに加えて、被災地では流出に歯止めがかかっていないのではないか?

さらに人口動態統計は市区町村への戸籍上の出産、死亡等の届け出を集計しているので、実際の居住地での出産とは必ずしも一致しない。
例えば被災地においては住民票についても一致を求めない特例があるので、東京で出産したのに帰宅困難地域で出産したとカウントされていたりするのではないか?

最後に出生率向上のための政策について言えば、福島県の「18歳以下を対象にした医療費無料化、子育てや出産に関する電話相談、各自治体ごとの出産祝い金などの取り組み」程度で子どもが増えるなら誰も苦労しない。
「若者の雇用と収入を安定化させ、早期の結婚を後押しするとともに、経済的理由で産みたくても産めない第三子以降に重点的な経済支援をする」政策は必要だと思うが、問題は毎年どれくらいの規模で持続的に行うか、その覚悟だろう。
5兆円?10兆円?
5年?10年?
その程度では話にならない。
ヨーロッパの家族政策を勉強してからにしてもらいたいものだ。


また、「『私、赤ちゃん産めないよね』という少女の不安にこたえた福島の希望」という記事についてはさらに以下のようにコメントした。
「福島県の人口は10年の202万9064人から15年5月時点で192万8086人まで減少。しかし世帯数は11年10月時点の71万6428世帯を底に73万3165世帯まで回復している」を問題にしたい。
人口が減少しているのに世帯数が増えるということは、世帯人員が減少しているということだろう。
例えば3世代で暮らしていたのが祖父母と親子で別々に暮らすようになったりした場合だ。
そして子どもが東京に行けば人口は減り、世帯数は増える。
世帯人員が少なければ医療や介護の必要性は増す。
老人の単身世帯をイメージすればわかりやすいだろう。

実際、原発周辺を中心に年寄りは戻ってきたが、若い人たちは戻って来ないという話を聞く。
そうしたことを直視せずに心が軽くなっても困る。


テンポ効果について明らかにするために作成したのが上のグラフだ。同じ被災県でも福島は岩手や宮城と違って大きな変動が見られ、2011、2012年の減少分を補うように2013、2014年に上昇している。おそらく今後は2010年以前の動向に近いものになるだろう。
肝心なのは出生数なので、これについてもグラフを作ってみた。




2009年を基準にすると東京の出生数だけが100を上回っている。被災地の出生数は回復していないのだ。「なぜTFRが1.1前後の東京の方が1.5前後の福島より高いのだ?」と思う人が多いから、TFRは危険な数字だと言ったのだ。東京には子どもを産む若い女性が福島(や岩手や宮城より)多いのだろう。逆に言えば被災県は東京より(人口増加に寄与しない)高齢者が多いのだろう。つまり人口構造が違う。

言うまでもなく、福島を始め被災地の復興、特に子どもを安心して産み、育てられる環境を再建することをぼくも望んでいる。しかしながら、全国的な地域の衰退にさらに原発被害があることを考えると状況はあまりにも厳しい。実際に被災地をつぶさに見てみるとそれを思い知らされる。


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