夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

伊豆大島に行って来ました

2008-08-27 | diary
夏休みということで伊豆大島に行って来ました。おカネもないし、あまり長い休暇も取れないんで、近場で行ったことのない場所にしました。夜行の汽船で行って、民宿に一泊、その次の夕方の高速船で帰って来ます。2日足らずのお手軽な旅です。



竹芝桟橋に11時に出航するのを待っているところです。けっこう雨が降って寒いくらいでした。申し込むのも遅かったんで、席はありません。船旅にはよくありますが、指定席で乗船しなかった人がいれば出航後、席をもらえるし、いなければそのまま通路なり甲板なりでゴロゴロするしかありません。まあ、引揚船とかで苦労した人たちのことを思えばといったところですが、若い人はかえってフリースペースを楽しんでいました。



キャンセル待ちの順番が早かったので、レインボーブリッジをくぐるかどうかくらいで席というか、カーペットの上で寝る場所を確保することができました。安心してデッキで旅酒を楽しみますが、次の朝の5時半には大島に着いちゃうし(それでも横須賀辺りに停泊して時間調整するそうですが)、すぐにレンタカーを運転しなくてはいけないんで、少なめ早めに切り上げます。



船には弱い方で、うねるような揺れに何回か目を覚ましたもののわりと眠ることができました。5時過ぎにはもう着岸です。頭はぼおっとしてるし、口の中はにちゃにちゃして徹夜と旅行の疲れの気分が体に充満しています。相変わらず元気そうな若者もいますが、一人で所在なげにケータイをいじっている人が多い気がしました。

島に降り立つと宿の人もレンタカー会社の人もいて、いろいろ教えてくれます。その間にパラパラと強い雨が降って来ました。レンタカーで出発しますが、ふだんのクルマが自家用車にはめずらしいコラムシフトなので勝手が違って手が空を切ります。

着いたのは島の北端に近い岡田港で、反時計回りにいちばんにぎやかな元町港を目指して走ります。コンビニはないから朝ご飯は事前に調達しておかないと食べれないと聞いていたので、元町を過ぎた辺りの酒屋さんの駐車場にクルマを停めて東京で買っておいたサンドイッチやおにぎりを食べます。人通りはなく、クルマもあまり通りません。



これらのことだけでもおおげさに言えばカルチャーショックで、この旅の印象を予め言っておくと我々はいかにコンビニ的・東京的生活にどっぷり漬かっているか思い知らされたということです。それは本土ではよほどの秘境でもない限り知ることはできませんし、たとえそうした生活をどれほど悪し様に言おうと捨てることはできないでしょう。

画像は元町の次の集落の野増から少し行ったところにある地層切断面です。150万年前から数百回に及ぶ三原山の噴火による火山灰によって、こういうきれいな模様ができたそうです。巨大なミルフィーユといったところですが、そのほんの1枚くらいが我々の手の届く時間と思うとなんだかがっかりしてしまいます。



南端にある波浮港です。古くから有名な港で、林芙美子を始めとした文学者が逗留したり、都はるみの歌謡曲などに唄われて広く知られています。町並みも小さく、狭いながら情趣を感じさせます。今は船便の主役は元町港と岡田港に譲っていて、昔ながらの観光地という感じがしました。まだ7時前ということもあってか、人通りもなく、お店も開いていません。

きつい坂を上ってきたおばあさんと話をしたら「あとでお茶を飲みにいらっしゃい」と言われたのに少し驚きました。この島の人がよそ者にも親切だと感じることはこの後もしばしばあって、それもまたコンビニ的・東京的でない面を示しているんだろうなと思いました。



波浮港は元々火口湖だったのを江戸時代に開削して、海につなげたものだという由来書がありました。我々の祖先の偉業だと思いますが、それだけに港の入り口は狭くて座礁する船も多かったそうです。捕鯨銛を打ち込んで救助することもあって、その砲台も残されていました。いにしえを偲ぶエピソードに事欠かない町です。



島の4分の3ほど回ったところにある動物園に着いてもまだ8時過ぎで、開園の8時半には少し時間がありました。雨は相変わらず降ったり、やんだりで三原山は全く見えません。途中の筆島を望む道は土砂崩れで閉鎖されていて迂回しなくてはいけないような山道でした。霧に包まれて10メートルほどしか視界が利かず、センターラインだけを頼りに時速20キロそこそこで走っていると眠気が襲って来ました。空き地に停めてちょっとだけ眠って、なんとかここまで辿り着いたわけです。

開園するかしないかで中に入ったので、他の客はいません。家畜ばかりの悲しくなるような動物園かなと思っていたんですが、けっこう広いし、動物の種類も多い方だと思いました。ウミガメが産卵しに来る島で、ゾウガメがわしわしと草を食べてるのがおもしろいなと思いました。



動物園よりも隣の椿園の方が有名で、人を集めているはずですが、8月に椿の花が咲いているはずがありません。入り口の建物の中には様々な種類の椿のドライフラワーがありますが、ここで咲くものに毎年取り替えていると聞いてよけいさみしくなりました。「見渡せば花ももみじもなかりけり」が現実では情趣もないので、ようやく見かけた洋花が散り敷いているのを撮りました。



島を一周して岡田港の近くの野田浜です。写真の岬から手前にずっと長い海岸沿いの道があります。大磯や湘南よりもよけいな建造物がないので砂浜を眺めながら運転できます。貝や海草を採っている漁師のおじさんや一日ダイビング体験をやってる人がいました。



「リス村」といった観光施設ならうるさいくらい「あと何キロ」といった看板がありそうなのにこの村にはありません。なんだかヨーロッパの田舎を旅行しているような気分ですが、あやうく見落としてしまうところでした。リスはひまわりの種を持って丸太を組んだ巣の前に立っているだけでワラワラとやって来て取っていきます。噛まれるとまずいのでミトンをしていますが、爪を立てる感触や食べている様子は萌え~と思わせるものがあります。地面にいるのにしゃがんであげようとするとあっという間に腕まで上がって来ます。係りの人に訊くと野生のリスを餌付けして人に慣らしているそうで、お互いいろいろ苦労がありそうでした。



リス村のウサギです。棒状の甘い香りのビスケットをちぎって投げると食べます。もっとよこせと前脚立ちになるのもかわいいです。指でつまんで与えると噛まれかねませんが、手のひらに載せて静かに差し出すとうまく食べてくれます。いろんな毛色のがいるのでこちらの方が楽しめるかもしれません。

売店でリス村まんじゅうとリスせんべいを作っているところが見れました。焼きたてのせんべいはまだ温かく、湿気を帯びているのに口に入れると乾いていくのが不思議な食感でした。

元町の近くで昼食を摂りました。白身魚を甘醤油に漬けたべっこう丼やぶり大根のようなカマを煮たものがおいしかったです。民宿に着いて、さすがに疲れが出たんで、少し昼寝をしてから町をぶらぶらしました。やっぱり商売気のない町です。資本投下が乏しいと言ってもいいかもしれません。

静かなお土産屋を覗くと「あした葉」を使ったパイやクッキーがやたらありました。夕食にそれのおひたしが出て、「これかー」と思って食べましたが、ぬるっとした香草のような感じでした。食器も地味で、お皿に目一杯刺身が載っていたりして、見た目以上に食べ応えも内容も充実していました。固形燃料を使った紙鍋なんていう空虚な演出とは対極にあるようです。民宿の夕食はせっかく地元の焼酎を飲んでいい気分になりかけても、さっさと終わってしまいます。歩いて元町港から少し行った御神火温泉に入りました。昼間は見えなかった下田辺りの灯りがぼんやり見えます。



翌朝も曇っています。山も見えませんし、海も入るには寒いでしょう。でも、他の観光スポットと言っても「見るべきほどのことをば見つ」という気分になっているので、バスで山頂を目指します。細い山道をガスの中、けっこうなスピードで登って行きます。さすがプロだなと思いましたが、降りる時に運転手に訊いたらやはり怖いことは怖いそうです。頂上はすぐ近くのはずですが、数メートル先も見えません。

何も見えないから途中で戻って来たという若い人のグループに会いましたが、山登りをしていればこんなのはしょっちゅうです。一日中歩いても見えるのは足元だけ、登山道をはずれないように気をつけて、ようやく頂上について「○○山頂」の現場写真を撮って降りてくる。それもまた楽しと思えないようなら登山なんてしない方がいいと思っています。

4WDなら登れるようなコンクリートで固めた広い道を行くと霧の中から降りて来る人が浮かび上がって来ます。「少し休んで、絶景をお楽しみください」という看板に苦笑しながら、お年寄りも来るんだろうなと思います。

山頂から火口の淵まで行ってみても何も見えませんでした。少し下ったところにある御神火神社は86年の全島民が避難した噴火の際に溶岩流が「ふしぎにも」祠の直前で方向を変えたと由来書にありました。控えめな表現がかえって信仰の深さを感じさせます。でも、麓の火山博物館で当時の噴火の様子や避難に尽力した人たちへのインタヴューを編集したヴィデオを見ると火山そのものをご神体とする気持ちはよく理解できました。

麓までは歩いて降りました。ガスってるのを山道を行くのは危ないので車道を5キロ足らず降りるだけで、単なる下山ですが、かたつむりがいっぱいいたり、溶岩のせいなのか植物相がなんとなく違うのがおもしろかったです。人里近くなってガスも切れた頃に脇道を入ると火口に身を投げた人たちを弔う碑がありました。毎月、自殺者のために法要が行われているそうです。「人身事故」を通勤の邪魔でしかないと考えるのもわかりますが、そういう我々の心の古層を思い出すのもいいんじゃないかと思いました。



博物館に行った後、魚介類にも飽きてラーメンを食べました。地元の人ばかりでやや奇異な目で見られたかもしれません。山の次は海だということで元町港に近い弘法浜に行きました。おそらく弘法大師が奇跡か何かやった伝説でもあるんでしょう。真っ黒な砂浜で人は数えるほど、足をつけるととても全身を漬ける気にならない冷たさです。海泳ぎをしていればこんなのはしょっちゅうです、とは思えません。ビキニの女性が太ももくらいまで入ったものの5分も経たずに浜に上がるのを遠目に眺めてから、引き上げました。

海産物店でイセエビやくさやをちょっとだけ買って、岡田港までバスで行って、あした葉入りの焼酎を買って、飛行機のように早くて、身動きが取れないジェットフォイルに乗って、椎名林檎を聴きながら東京に帰りました。


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なんかいろんなものがあるサイトです。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
たまたま… (ぽけっと)
2008-08-29 23:50:28
娘が友達と沖縄に行くはずが諸事情wのために伊豆になってこれから行く予定らしいので、興味深く見せていただきました…が、
女子大生グループで行って、おもしろいかなあ…
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えへへ… (ぽけっと)
2008-08-30 11:07:58
もう一度聞いたら伊豆半島の方でした。
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下田からなら (夢のもつれ)
2008-09-01 11:46:30
45分で大島まで行けるみたいですから、ついでにってことで
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