昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[ブルーの住人]第五章:蒼い情愛 ~はんたー~

2024-05-04 08:00:39 | 物語り

(十)It's me!

 ○刑囚はゆっくりと大きく吐き出し、煙の行方を目で追った。
 そして○刑囚の目に映ったものは。

 社会機構のなかで身うごきできない世界が、あたかも煙を吐きだすように○刑囚の人生を変えてしまった。

 毒々しいけむりに焚きつけられて、いつのまにか時間の暴力にのみこまれていた。
 そののみこまれた世界は、だれもいない浜辺だった。

 うす気味わるい灰黒色の雲におおわれた浜辺で、ネイビーブルーの海をたったひとりで泳いでいる○刑囚を、だれかがうつろな目で見ている。

「だれだ、おまえは!」
 視線に気づいた○刑囚が問いかける。

「It's me!」
 声がかえってきた。



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