昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛の横顔 ~地獄変~ (十二)娘の世話

2024-05-15 08:00:24 | 物語り

そしてその翌夜のことでございますが、娘がわたくしの肩や腰をもんでくれました。
勿論、はじめてのことでございます。
「急にどうした?」と問いただしても、
「いいから、いいから」と、笑うだけでございます。
妻の部屋から出てきて、すぐのことでございました。

もっともその折りのわたくしには、そのことの詮索よりも……。
娘は、わたしの腰にまたがり、足のふくらはぎ・足首をもんでくれました。
親孝行のつもりかもしれません。
しかしわたしにとっては、……。
娘と分かってはいても、暖かく柔らかいお尻の感触が悩ましいのでございます。

娘は、薄いパジャマ姿でございました。
お風呂上がりのせいもあるのでございましょうか、少し汗ばんでいたのでしょう、湿り気を感じました。
若い女の体臭とでも申しましょうか、なんともその。

ぷーん、と
良い匂いでございます、ぐふふ。
申し訳ございません。
娘でございます、分かっております。
分かってはいるのでございますが、ムクムクと、またしても。

わたくしはこの一年の間、女性との接触がまったくありませんでした。
いえいえ、性欲がなかったわけではありません。
むしろ若い頃よりも、ある意味では高ぶることが多くなっておりました。
ひとり、恥ずかしい話ではございますが、自慰にふけったことも一度や二度のことではございません。

いいえ、実はこれからなのでございます。
そろそろお気づきになられた方もおいでになるかもしれませんな。
他の方には、まだ内緒にしてくださいよ。
謎の紐解きの面白さが失われてしまいますからな。

その後も、何やかやと娘はわたくしの世話をやいてくれます。
妻は目を細めて、そう冷ややかな目でそんなわたしたちを見ております。
その頃には床上げも済んでおります。
そして朝食の用意もしておりました。
は? ぐふふ、いえいえご心配なく。
娘はわたしと一緒を選んでおります。
妻はそそくさと部屋に戻っていきます。
小憎たらしいことに、娘にはにっこりと微笑みかけながらも、わたくしとは目を合わせようとしません。



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