昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[ブルーの住人]第五章:蒼い情愛 ~はんたー~

2024-05-18 08:00:36 | 物語り

(ラスト)自由

 燃え上がった絶頂に光をうばわれた花火のように、それは見た目にも味気ない。
 しかし披露宴時に殺害されたという光が、大衆の中に、一時的に写された。

『わたしが後世のことなぞかまっていたら、だれがいまの世の人を笑わせますか』
 この世から笑いという笑いが消え、哀しみという哀しみが消え去る――
 そう、『人でなしの国』。

 そしてそれが、『超人の国』だろう。
 裁判官という、超人の。

 いつか煙は消えていた。看守の靴音にオドオドしながらの一服ではあった。
 が、それでも美味かった。

 看守の靴音が遠ざかることを確認すると、最後の煙をひと吐きした。
 そしてその煙に、どことなく穏やかな色を、部屋全体に感じた。

 そのときの○刑囚は決して自由のないことを恨むこころではなく、
 むしろ束縛下の小さな自由を感謝した。

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 ヒーローは、何千何万の人間を救う義務があるのに、
 なぜ、己一人を救う権利がないのだろう……

 

*『』内は、多分ですが(若気の至りで、出典元を明らかにしていませんでした)
ゲーテ作「ファウスト」だと思います。



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