小屋の裏手に、煌々と電燈が灯り、プンプンと酒の匂いがする別の小屋があった。
十畳いやもう少し広いだろうか、板塀の小屋だった。
小さな窓から中を覗き込むと、七、八人が車座になっている。
そして並々と注がれたコップ酒を、次々に空にしていた。
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月明かりだけが頼りだった。けれどもその月にしても、時折雲間に隠れてしまう。ややもすればくじけそうになる、心の移ろいそのものの月だった。
ござの隙間から中を覗いてみるが、真っ暗で何も見えない。 . . . 本文を読む
計画自体は、大雑把な計画だった。小屋から連れ出すことだけで、その後どこでどうするということまでは考え付かないものだった。
ともあれその夜、友人宅に泊まるからと自宅に連絡を入れた。そして午前一時の柱時計の報を聞くと、眠い目をこすりながら行動に移した。
家人に気づかれぬようにそっと出ると、目指すはあの小屋である。できるだけ暗い道をと回り道をしながら歩いた。 . . . 本文を読む