ナビオの満員のエレベータ内で女子高生がヒソヒソ話しをする。「勉強ができるのと、頭がええのって、全然違うやんかあ。」「そうやな。」「あの子、めっちゃ勉強できるけど、頭悪いわあ。」・・・私が30を過ぎて言葉にできたこの台詞を、我が子のように幼い女子高生が短い言葉で語る。その先を聞きたいが、直通エレベータは、あっという間に8階のロビーについた。
朝一の本作を観終えた大学生らしき男衆数人が話している。観る前に聞きたくないが、耳に入ってくる。「あのハゲのおっさん、なんで最後にあんなんなったん?」・・・あのハゲのおっさん?エド・ハリスしかいない。そんなあ!エド・ハリスのことを「あのハゲのおっさん」とは!
「アース」のポスターの前で、OLらしき二人が歩きながら、「アースやて。」「しょうもな!」と、トイレへ向かう。一人でいると、話す相手がいないので、いろんな人の声が耳に入ってくる。感心したり、憮然としたりしながら、開場を待つ。今日も、早めに予約したので、プレミアムシートである。「次回のナショナル・トレジャーは、満席となりました。」というアナウンスが流れる。
1作目は先行オールナイトで観た記憶がある。それも、座席数の少ない東宝系の「敷島シネポップ」というところで、後に、本作が興行的によかったのか悪かったのかはわからない。前作は、2時間の上映時間に対し、多くの情報を詰め込みすぎていて、スピーディな展開なので、私はついていくことができなかった。それほど話題にならなかったような印象があるけれど、第2作目は大宣伝で、テレビ予告も半端な数ではなく、また、東宝だけではなく、松竹と東映のシネコンでもやっている。パート2の方が力を入れている気がしているけれど、敢えてなのか、「ナショナル・トレジャー2」とはしていない。今日の夜、第一作が地上波でオンエアされるが、第一作を観なくてもよいように作られている。「インディアナ・ジョーンズ」のように、話しがまったく違う。どちらを先に観てもよい。作品の内容は、「インディアナ・ジョーンズ」に似ているのだが。
正直言って、私の頭の脳力では、前作のように、情報量が多い上にスピード感があって、ちょっとついていくことができない。これは私の観る能力の低さにあるのだけれども、懸命に追いかけていくという自分の中の作業をこなしながら、それでもとても面白い。一流の作品だと思う。ラスト近くに出てくるあの巨大なセット、大洪水なんて、ハリウッドにしかできない自慢のシロモノを用意して、私たちの度肝を抜く。インディアナ・ジョーンズを思わせるが、それでいいのだろう。制作者の意図でもあると思う。前作の謎解きより、さらに大きな仕掛けが用意してあるからか、さらにエンターテイメント性があるからか、本作をお正月の大目玉にもってきたのが頷ける。アメリカならではの凄まじい映像、音響、編集技術・・・。世界の皆様、これがハリウッドだぜ!と、ニンマリされた気分。
「あのハゲのおっさん、なんで最後に・・・」と言われたエド・ハリス。昔からエド・ハリスは、こういう役が多い。悪人だけれども、最後まで悪人にはなり得ない男。渋くて格好いい。悪いのか?と、思わせておいて、最後は助けるなんて、エド・ハリスの適役。でも、エド・ハリスがこういう役をやると、しばらくすると、ちょっと態度が変わるんじゃない?と、映画をたくさん観ている者には、はじめからわかる。そういう意味では、適役ではないのかもしれないけれど、わかるという楽しさもある。
大統領の誘拐までもってきて、もう無茶苦茶で、絶対にあり得ない世界だが、そのあり得ないエピソードの連続性で、あり得ない集まりのかたまりを楽しむことになっている。こんなストーリーは、とても日本では創造できまい。そのままの設定でやれば、クソ真面目なシャレの通じない作品になりそうだ。こういう荒唐無稽な映画を、ドキドキと時間を忘れさせて鑑賞させてくれるハリウッドは、やはり悔しいけれど、羨ましい。時々、ハリウッドの悪口を書いてしまう私だが、それは、悔しさを込めての時が多い。 <80点>
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