この時期になると、毎年のようにクリスマス、サンタクロースにまつわる映画が公開される。総じて、駄作はないように思う。それは、監督たちの子供の頃のクリスマスの思い出、青春の中での思い出を画にできるという気持ち、心が作る者にあるからだろう。だから、そんなにうまいとはいえないであろう脚本でも、映像で大きな羽をばたつかせる。
映画を通し、監督の童心のような心、青春の心、親になった心をうかがい知ることができる。私は勝手にそう思っている。アメリカ人にとって、365日の中で一番の日だからこそなのだろうか。私は、こういう映画を観るたびに、監督の心そのままだと思いながら観る。本当に楽しい日もあったろうし、一人ぼっちの寂しい日もあったろうし、運命を変える日もあったろう。それを実体験の中からこぼれないように、フィルムに焼き付ける。そんな気がする。
本作は、子供の為の御伽噺のようで、大人だけの御伽噺のような内容だった。つまり、とても中途半端なコメディ映画だ。それでも私は、監督の無邪気さを楽しんだ。実写とCGの合成も素晴らしく、私は猛スピードで北極へ連れて行かれた。とてもあり得ないことだけれど、とてもあり得ると信じられる作風で、というのも、サンタクロースは実在していて、世界中の子供たちにプレゼントを配っているのだと、ふっと錯覚してしまったからだ。私は自分で完全なる馬鹿だとは思っていないけれど・・・錯覚させてしまうほどの映像の力がある。しかしそれは、子供の頃から、私の頭は止まっていて、結婚もせず、子供もいなく、一人暮らしを四半世紀以上も続けてきたからとも言える。私に常識は通じない。また、私は非常識の塊でもある。
本作をサンタクロースを信じている子供たちにみせてあげたい。サンタクロースは、父でも母でもなく、北極に住んでいて、年中、子供たちのために、プレゼントを作っているのだと信じてくれるだろう。一言もいないという台詞はなく、親が持ってくるというシーンもない。間違いなくサンタクロースがくれるのである。ところが本作は、日本語吹替え版がありそうで、ない。ファンタジックな映像に対して、物語がやや複雑で、大人の為の御伽噺の色が濃いからだろう。言っていることと別でもいいから、吹替え版を作って、マジにサンタクロースは存在するこの世界を子供たちの純粋な目でみてほしいと思う。
コカコーラの看板のサンタクロースの衣裳から、現在のサンタクロースの形は定着した。これは事実である。それまでは、無形のものだったのだろう。商標登録はしなかったのだろうか。どこでもあの衣裳なので、みんな勝手に使っている。今のサンタクロースの原点となったコカコーラの看板に大きく、赤い服を着た白ひげのサンタクロースが描かれ、それをトナカイに乗ったサンタクロースが突き破るカットがある。あの看板こそが、サンタクロースを絵にした第一号である。それより遙か以前に、サンタクロースはあの衣裳で存在していたとばかり、突き破るカットは、知る人はクスッとなる。
それにしても豪華なキャスト!内容はどうあれ、私は数多くのスターを観ていられただけで、何本分かの得をしたと思った。とても誉めてはいるけれど、素通りしても悔いはない作品である。 <55点>
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