長い期間、同じ予告を何度も見せられた。撮影の進捗状況にあわせて、違った長めの予告も何度も見せられた。正確ではないが、50回は見せられた。こういうことをされると、期待は膨らむに決まっている。しかし、人間には期待度の限界というものがあり、ここまで引っ張ると、もうどうでもいいような気持ちになる。「下妻物語」の監督というのがコピー。ということは、必ず、ヒットする。映画館は、人でいっぱいだ。
あの深田恭子を女優にした監督だ。だが、深田恭子は「下妻物語」だけで、後の「天使」は見るに耐えない。台詞のない、ト書きから演ずるだけの役はとても難しく、彼女の抜擢の意味がわからなかった。つまり、深田恭子は「下妻物語」のみ、評価される対象である。テレビの「富豪刑事」は、素人以下だ。だから私は思った。監督が深田恭子を女優にさせたのだと。演出は、俳優を変える力も持っていなければならない。「下妻物語」は、深田恭子の代表作で、それ以前、それ以降は、役者の玉子にもなりきっていない。
東宝は「下妻物語」の大成功を喜び、大きな予算を組み、中島監督に次回作を撮らせたのだろう。中島監督は、もともとCMの人である。細かく映画の仕事にかかわっているが、監督作品(第一作)と呼べるものは「下妻物語」だろう。私の手帳には「下妻物語<80点>」となっている。さすがはCM出身だけあって、短いシーンの中に情報を詰め込み、カットにもこだわっていると感心した。ストーリーも楽しく、構成もわかりすく、役者を活かした。こういう作品を観ると、やはり次回作も期待する。期待しなければよかった。確かに前作の手法で撮られているが、これはなんぞや。本篇よりも予告篇の方が数段、面白い。ポスターの年表の方が何倍も楽しい。あれだけ幅広い分野で活躍する俳優たちを集めに集め、豪華に使っているのに、もったいない。ストーリーも流れもしっかりしいるのに、すかしっ屁をくらったシーンの嵐。激しい映画になるのかと思ったが、意外にスロー。「松子」の人生は、それほど際立ったものではないし、悲劇に和やかさを出そうとするMTVのようなカットもたいしたものでもない。『奇抜な発想』なのに、映画そのものは『どうでもいい』ものだった。奇抜な発想をどうでもよく見せるなんて・・・。次回作もあるだろうが「嫌われ松子の一生の監督が送る・・・」といコピーは使えないだろう。次回作も「下妻物語の監督、脚本!」で、ポスターを作れば、成功するだろう。今作も興行は成功するだろうが、それは、ポスター、予告篇、TBSの大宣伝の巧さにつられて観にきただけ。とても辛辣な書き方をしているが、褒めようがない。私は映画館に(予算をかけた豪華な)テレビドラマを観にきたわけではない。映画を観にきたのである。
と、ここまで書いて、みんなのブログを読むと、ほぼ大絶賛。私への批難、甘んじて受けます。覚悟してます(涙)。<35点>