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捜神記 「落頭民」

2009-06-19 | Asia 「圓」な旅
倉橋由美子の「首の飛ぶ女」の元ネタが気になったので調べてみた。東晋時代の人、干宝の著した志怪小説集「捜神記」巻十二に出てくる話である。原文を読むと妖怪「飛頭蛮」などという言葉は使われておらず、「落頭民」或いは「蟲落」と呼ばれていて、一部族として扱われている。因みに平凡社の日本語訳では「ろくろ首」と表現されていた。

秦時、南方有落頭民、其頭能飛。其種人部有祭祀、號曰「蟲落」、故因取名焉。呉時、將軍朱桓得一婢、每夜臥後、頭輒飛去、或從狗竇、或從天窗中出入、以耳為翼。將曉復還。數數如此、傍人怪之。夜中照視、唯有身無頭。其體微冷、氣息裁屬。乃蒙之以被。至曉頭還、礙被、不得安、兩三度墮地、噫咤甚愁、體氣甚急、状若將死。乃去被、頭復起、傅頸。有頃和平。桓以為大怪、畏不敢畜、乃放遣之。既而詳之、乃知天性也。時南征大將、亦往往得之。又嘗有覆以銅盤者、頭不得進、遂死。
夜間、下女の首が胴体から離れて耳を翼にして飛び去った後、残された胴体は幾らか冷たくなっているが息をしている。胴体に布団をかけてやると、明け方帰ってきた女の首が胴体に戻れずに地上に落下して死にそうになる。というところが、なんとも生々しくいろいろな想像をかきたてる。布団をかけて首が繋がらないようにして、首が困惑する様子を覗き見る行為というのは、サディスティックでどこかエロティックではないか。

倉橋由美子はさらに想像を膨らませている。まず、首の飛ぶ部族の女は、男を愛すると男のもとに通う夢を見て、その間に無意識に首が飛ぶようになる。という約束を設ける。そして、首の飛び去った後に残された無抵抗な女の胴体を、女を愛する主の男が凌辱し、女の純真な恋を知った男は嫉妬に狂った末に胴体に布団をかけて首を殺してしまうというドラマが創られる。残された胴体は既に妊娠しており、その後も生き続けて主の男の娘を出産するという落ちまで設けられている。物語には、首=形而上=純愛、胴体=形而下=性愛という二元論。その二つを併せ持つ妖怪としての女性(にょしょう)が潜ませてあるような気がする。

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