桂木嶺のGO TO THE THEATER!~Life is beautiful!~

歌舞伎中心とした演劇・クラシック音楽・美術展・映画など芸術全般のレビューを書きます。優れた芸術は応援します!

名優の面影、かつらぎ篇~(その3)高倉健さん~

2017-05-09 06:30:00 | 芝居のエッセイ

このブログをお読みのみなさまは、

歌舞伎のこともしりたいとおもうと思うのですが、

映画会社に入る人間は、どんな才能がもとめられるのか?と

思われる方は多いと思います

じつは、あまりお勉強の才能はいりません(笑)

 

と申しますのは、わたしは、とある映画会社の宣伝部で8年半あまり

ポスターや販促物、看板、テレビスポットなどをつくる宣伝マンの

はしくれをやっていたのですが、

はっきりいって、学生時代のお勉強はまったく役にたちませんでした

ずばりもとめられるのは、「とんち力」「アドリブ力」「芸能ネタにどれだけつよいか」でした

その代表例がこちらのケースです。

 

 

高倉健さんのとある映画の完成披露試写会をしたときのことです。

とにかく大変な人望と尊敬をあつめる健さんなので、

豪華スターがたくさんお見えになられました。

健さんは、輝くばかりにかっこよく、背が高く、足が長く、

また背筋がビックリするほどまっすぐな方でした。

 

わたしは、宣伝部に配属されてまだ半年。

お見えになるスターさんのお茶くみ係と身の回りのお世話係、いわゆる控室係をしなさい、

といわれ、大緊張しながらすごしておりました。

印刷会社の営業さんでお世話になった方が、

「健さんは、京都のイノダコーヒーがおすきですよ(^^)/」と教えてくださったので、

イノダコーヒーを営業さんが京都に行かれるタイミングで買ってきてもらって、

スタンバイしておりました

 

すると、健さんのもとに、金髪に染めた、ショートヘアの妙齢の女性がいらっしゃったので

ビックリしていると、彼女は開口一番こう言いました。

 

「おにいちゃん!おひさしぶり~

 

その声をきいて仰天!!大原麗子さんではありませんか!!

おにいちゃん?えっ?健さんと麗子さんってご兄妹だったっけ?とおもってはいけません。

倉本聰さんの脚本でむかし「あにき」というテレビドラマで共演されていたことを

わたしは思い出し、「あ、なるほど」とおもってみていました。

すると、健さんが

 

「ビッチ!!元気そうだな!!

 

ビッチ、というのは大原麗子さんの若い頃の彼女のあだ名であることを

私もしっていましたので、

「わぁ~、ふたりは仲がいいんだな」とおもっていました(^^)

 

そして、麗子さんはとってもかわいらしい声でこう言い始めました。

「ビッチね、映画会社のひとに、完成披露のチケットもらったのだけど、

後ろのほうの席だからよくみえないの

おにいちゃんのこと見たいから、もっと前のほうでみたいわ~

すると、健さんはニコニコして、

「うん、わかったよ。映画会社のひとにきいてみてあげるからまってなさい」

と大変やさしくいって、付き人の方に「おいっ」と一転して、大変するどい口調でいいました。

すると突然、わたしも付き人さんもピリリと大緊張!

さっそくすごい勢いで、付き人さんが楽屋となった会場から出ていきました。

 

そして次から次へと、豪華スターの方が健さんにご挨拶に見えたのですが、

そのたびごとに私が、「〇〇さんがお見えになりました」「〇〇さんです」と

健さんの付き人の方にご報告していて、健さんがそのたびに

大変大声で、元気よく明るく(そうなのです、大変明るい方だったのです!)

「おおっ!〇〇!!元気か!」と声をかけられました。

声をかけられた大スターさんたちは、みな「はい!健さん、元気でやっております!!」といい、

中には、90度会釈して直立不動になり、ご挨拶される大スターさんもいらっしゃいました。

 

うわさにはきいていたけれど、こんなにすごいスターさんだったとは!!!と

ひっくり返りそうになりつつも、

ひたすら健さんにイノダコーヒーをお出しし、ほかの俳優さんのお世話をし、

映画の感想もちょこっとながらお話し、お茶をお出しし、無事に完成披露試写会が終わりました。

俳優さんたちが次々帰られ、健さんは、その姿を律儀に見送っておられました。

 

すると、ぐうぜん、健さんとわたしと、ふたりだけになりました。

もうわたしは、頭がくらくらするやら、大緊張しておりましたら、

急に健さんが、「キミ、宣伝部にきてまだまもないの?」というのでした。

わたしは仰天!!!

「は、はいっ、宣伝部に来て半年になります!!」

と、どもりながら答えると、

健さんは、ニコニコとしながら「キミ、よく控室係をつとめたね~。

けっこうこの役、むずかしいんだよ」とおっしゃったので、

わたしはますまず目がテン

「ありがとうございます!!」といったら、

「うん、おつかれさん!初日の控室係もやってね(^^)」

といってくださったので、大感激!!

 

そしてすぐに付き人のかたがお見えになり、

健さんを送りに行きました。

私も一応ついていき、「ありがとうございます!!」と最敬礼。

きっとこうして、映画の若手スタッフやキャストのかたを

はげまして、育ててこられたのだなぁ・・としみじみ感じ入りました。

 

健さんの映画は、実は「野性の証明」とか「海峡」ぐらいしかみたことがなかったのですが、

すっかり私も健さんの偉大さにしてやられました。

本当に・・・・・すみずみにまで目配りをされる方なんだなぁ・・と感服した次第。

 

初日も大変すばらしい思い出がありますが、

またの機会に(^_-)-☆

 

健さん、ありがとうございます!!!

 

 

 

 



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