バラにかたどられた扉が完成した。
平屋の外壁塗り替えと玄関ホールを蘇らせるという面白い依頼だった。
デザイナーとしては楽しい仕事である。クライアントのご夫妻は、私の傑作『月のブランコ』の妻のご両親である。
年齢66歳のご夫婦が暑く溶けだしそうな夏の炎天下の中で瞳を輝かせて完成を喜んでいた....この感動の顔が私のエネルギーだ。
巴座アートを発揮できる条件は決まっている。まずは、クライアントがデザインや色決めに口をはさまないことだ。
確かな技術の建具職人チームと塗装職人、左官職人、クロス職人がいれば私のアート・ワークは完成する。
今回のクライアントの奥様も最初は随分、ああだこうだ言ってきたが、最終的に私の好きにさせてもらうことで強引に押し切った。
が...しかし結果的には絶賛していただき、たいへん感動していただいた。
『最後には感動して私に感謝するので期待して待ってください。今は想像できなくても、不安でもかまいません。私の才能を信じてください』といつも力のある言葉をこぶしを握り締めて私は熱く語る。
有言実行はプレッシャーのかかることだが、私はいつも『私の才能を信じてほしい』と伝える。
そこからは緻密な創造の仕事なのだが...いつも産みの苦しみやプレッシャーの中に身を置きプレゼンの日に挑む。当然、脳がつまったり不調になったりする。そのたびに妻との小さな旅や会話をくりかえす....脳と気持ちを解放させたり刺激すると...スッと頭の中に企画が浮かぶことがよくある。
さておき...この薔薇の扉の写真を妻に見せてみると「やばい。私、これ欲しい!」と褒めてもらった。妻がほしがっても私は同じものは二度は作らない。次はこれを超える作品を生み出すだけだ。
そしてもうすぐバラが美しい国へと旅に出る。シェークスピアの生まれた街やヴィクトリア・ポターの生家にも再訪する。私に多大なる影響を与えてくれた国を妻と二人で歩く...ヒースロー空港に降り立ったら人生の折り返しの鐘の音が聞こえるような気がしている...
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