Globalfoundriesが7nm開発中止・AMDはTSMCへ移行
AMD、次期「Zen 2」および「Navi」はTSMCの7nmプロセスで製造へ - PCwatch
別々のニュースとして取り扱われていますが、米Globalfoundries(GF)が7nmプロセスの開発を中止し、AMDはCPUの製造をGFから台湾TSMCに移行するようです。一概に一部ではAMD・GF間で締結されているウェファーのシェア契約がどうなるのか?という議論もされていますが…そもそもその契約はGFが最先端クラスの製造プロセスを提供している前提だと推測するので「痛み分け」的な処理になりそうな気がします。根拠はありませんが、そもそもAMDが製造部門をGlobalFoundriesに分社化した理由が、最先端プロセスの開発コストおよび開発失敗の際のリスクの増大が原因で、そのリスクが契約に盛り込まれていないとは考え難いと推測します。
ところで、増大するチャイナリスクと米・豪・日・露政府によるZTE・Huaweiの通信機器の締め出しに関連して「台湾で半導体を起こすと中国に漏れる」というデマを見かけたのですが、根拠はないと思います。台湾のファブといえばTSMCとUMCですが、最先端のプロセスを提供しているのはTSMCのみで、TSMCから設計が漏れたという話は聞いたことがありません。そもそも、TSMCで使う物理設計やマスクが漏れたとしても他社(例:中国SMIC)の製造プロセスでは使用できません。
ついでに、もしTSMCにリスクがあるなら、IntelやSamsungのファブビジネスはシェアが大きくなっていたことでしょう。
HotChips 30 - 富士通 A64FX
Hot Chips 30 - 富士通が発表したPost-Kスパコンのプロセサ 第1回 第2回 第3回 - マイナビ
マイナビに寄稿されたHisa Ando氏によるHotChips 30の発表の解説です。
技術的な観点では興味深いとは思うのですが…見れば見るほど無駄に思えてきます。他でまったく使われていないTofuネットワークを内蔵しているほか、Armv8.2-A SVE対応で512~2048-bit SIMD拡張命令に対応するというスーパーコンピューター向け仕様はともかくSVE以外ではIPCでCavium Vulcan・Apple Hurricane・Samsung Mongoose 3に勝てないでしょう。
例えば開発中のゲーム機など、プロセッサーが無い状態でソフトウェアを開発することはよくありますが、この場合は類似のハードウェアを用意するなどしてエミュレートします。エミュレートするだけなら全く異なるハードウェアでも可能でしょうが挙動があまりにも違ってくると開発になりません。ポスト京ではSVEとTofuという独特の仕様のため恐らくエミュレーションは困難で、システム全体が2022年完成予定にも拘わらず2018年にチップが出てきています。
京コンピューターに搭載されたSPARC64 IXfxのHPC向けSIMD拡張命令HPC-ACEやその後継HPC-ACE 2は128-bit/256-bitでIntelプロセッサーでいうSSE/SSE2/AVX相当といえ一般的によく使用されています。しかし512-bit以上のSIMDはIntelもXeon Phiなど一部でしか採用していませんし、GPUやDSPといったコプロセッサーを使うのが一般的です。仮に富士通がA64FXの派生品をUNIXサーバーに持ってくるとしてもSVEをそのまま(512~2048-bit可変長論理レジスター・512-bit物理レジスター)を持ってくるかかなり疑わしいと思います。
そう考えるとSVEユニットがパイプライン化されているのは汎用性を捨てている気がしてなりません。欧州もArmベースのスーパーコンピューターを開発予定ですが、構成はCavium VulcanにNVIDIA GPUをアクセラレーターとして外付したもので、Vulcanは普通のLinuxサーバー用にクラウド業者も採用しているものです。
個人的には性能を犠牲にしてでもTofuはPCI-Express経由で外付にすべきだったと思います。この場合はPCI-ExpressでInfinibandやOmniPathなどに取り換えることで他社がA64FXを採用する可能性が生まれます。100GbEを使うことでクラウド業者からの引き合いが生まれたかもしれません。Tofuインターコネクトの内蔵はそういう可能性を蹴ってまで必要だったのか疑わしく思います。