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私的コラム&雑記(&メモ)

最近の興味深かった話題(2024年第37週)

2024-09-15 | 興味深かった話題

Sony PlayStation 5 Pro発表 (1) 価格編

「PlayStation 5 Pro」登場。性能45%向上 - PC Watch
Sony PlayStation 5 - Wikipedia

 SonyがPlayStation 5 Proを発表した。日本での反応は各メディアで報じられているが、各国で同様の反応らしい。つまり「高い!」である。


PlayStation 5
(Nov 2020)
PlayStation 5 Pro
(Nov 2024)
Delta
(in US$)
USUS$ 499US$ 699+ 40.1%
EU€ 499 (US$ 591.8)€ 799 (US$ 885.5)+ 60.1% (+ 49.6%)
Japan¥ 49,980 (US$ 479.8)¥ 119,980 (US$ 851.6)+ 140.1% (+ 77.5%)

 各国の値上げ率を見てみると、米国で+ 40%・欧州で+ 60%となっている。インフレーションは分野によって異なるが米国の過去5年間でのインフレーション率が8.00%とのことなので2020~2022年頃の半導体不足などを計算に入れても値上げされていることが解る。
 面白いのは米国価格・欧州価格での米ドル換算での値上げ率で、米国+ 40%に対し欧州+ 50%と、米ドル基準で値上げしているように見える。ちなみに、米国はVAT別表示・州毎にVAT率が異なるため、VAT +20%とすると、2020年のPS5は約US$ 599・2024年のPS5 Proは約US$ 839となり、欧州の価格に近い価格設定であることが解る。…謎なのは日本での価格設定で、米ドル換算でも+ 77.5%の値上げとなっている。

Sony PlayStation 5 Pro発表 (2) スペック編

Sony PlayStation 5 Pro costs $699, launches November 7 - Videocardz

 詳細なスペックは公表されていないため本稿では議論しないが、興味深いのはメジャーな欧米メディアは「Zen 2 + RDNA 3/4」と推測していることだ。ゲームコンソールでは高い後方互換性維持のため古いハードウェアを使い回すことが多いが、とはいえ2019年のZen 2を持って来るとしたら驚きである。
 高性能GPUを実現するため新しい製造プロセス=TSMC N5/N4Pを採用するとしたら、Zen 4/5が妥当だが、Zen 4/5ではAVX-512対応など命令セットおよび実行レイテンシーの非互換性・大幅なトランジスター増があるため避ける可能性は否定できない。CCDのトランジスター数はZen 4はZen 2の+ 66.6%で、同じ製造プロセスなら恐らくダイサイズも同程度増加する≒GPUに割り当てられるダイサイズが減ることになり、もしSonyがGPU性能を重視するならZen 4/5を採用しない可能性はある。

 しかし、Zen 3ではなくZen 2を選ぶ理由はあまり考え難い。命令セットもダイサイズもほぼ同じでIPC +19%を達成している。いずれにせよTSMC N5/N4Pを使う時点で物理実装を新規に起こす必要がある。
 あえてZen 2を採用するとしたら、気になるのはPS5でSonyが行ったと言われるZen 2のカスタマイズ(Chips and Cheeze)で、PCで採用されているZen 2→Zen 3であれば後方互換性維持はあまり関係無さそうだが、PS5カスタマイズ版Zen 2と通常のZen 3とではAVXの遅延が大きく違うはずで、後方互換に問題が生じてもおかしくなさそうな気がする。

AMD RDNA・CDNAはUDNAに統合される

AMD announces unified UDNA GPU architecture — bringing RDNA and CDNA together to take on Nvidia's CUDA ecosystem - Tom's Hardware

 個人的には開発リソースの効率化の最適化だろうと思う。
 従来AMD・NVIDIA共に「FP64スループット重視」のデータセンター用/コンピュート用と「FP32スループット重視・レイトレーシング等のグラフィックスの追加機能重視」のグラフィック用の2系統に分類していたところ、AI/深層学習の爆発的な市場拡大に伴い、リソースをMatrix演算ユニットに向ける必要がでてきたのだろう(だとするとAMDの判断は遅すぎるが…)

 2015年~頃の従来の考え方だとデータセンター/コンピュート用とグラフィックス用とに分けるのは理にかなっていた。
 NVIDIAは2016年に発表した"Parker"で同一コード名ながらコンピュート用とグラフィックス用とに分化(参考)・その次世代でもコンピュート用="Volta"とグラフィックス用="Turing"とに分化させている。同様にAMDがデータセンター用=CDNAとグラフィックス用=RDNAとに分化したことはおかしな事ではなかった。
 そして、コンピュート用とグラフィックス用の違いは「FP64スループット=実装コストの高い高スループットのFP64演算ユニットのSIMDエンジンを搭載する代わりにSIMDエンジンの数は少ない。ディスプレイ出力なども搭載しない」か「FP32スループット重視・追加機能重視=FP64が低スループットのFP32重視のSIMDエンジンをより多く搭載する。レイトレーシング等のグラフィックス用機能を多く搭載し、ディスプレイ出力も搭載する」といったものである。

 その状況が変わったのがAI/深層学習におけるMatrix演算の需要増加である。
 科学演算におけるFP64の必要性自体は恐らく変化していないだろうが、より経済規模が大きな市場が出現したことにより求められる演算性能の優先度が変化してしまった。
 深層学習での精度はどんどん下がっており、かつては学習でFP32・推論でFP16/bFP16が使用されていた時代もあるが、最近は学習でTF16/bFP16・推論に至ってはFP8・INT8・INT6・INT4などが使われている。また、GPUで伝統的なVecror演算ではなくMatrix演算が求められる。Vector演算用のSIMD演算ユニットでも複数サイクルかけてMatrix演算を処理できるが効率は良くない。
 Vector演算の精度の違いは、Vector演算/Matrix演算の違いに比べたら些細な違いでしかない。

 問題は実装である。AMDはVector演算ユニットを拡張することでMatrix演算機能を実装した。この方式は「Vector演算とMatrix演算の両方で高い演算性能が求められる」という前提では実装コストの効率が良い。例えば従来FP32を32-way SIMDで演算していたところ、FP8を128-wayで演算できるようにするわけだ。もし16x16のマトリックスなら計256要素なので2サイクルで演算できることになる。
 しかし、現在の市場の状況はMatrix演算で高い演算性能が求められるもののVector演算の需要は相対的に低い。現在の市場の需要では上述の例でいえばFP32 32-way Vector演算のスループットを上げるよりもFP8 16x16 Matrix演算のスループットを上げたい。ところが上述の実装方式ではVector演算ユニットを拡張してMatrix演算に流用しているから、Matrix演算性能を強化するにはVector演算性能を強化する必要がでてくる。
 例えばCDNA1では演算性能は同じ512-bit Vector演算ユニットで処理していたため同精度ならVector演算とMatrix演算で共通だった。CDNA1からCDNA2で512-bit Vector演算ユニットをMatrix演算のみ1024-bit Vectorで処理可能になったため、同精度ならVector演算とMatrix演算で1:2になった。とはいえ、レジスタファイルと演算ユニットをMatrix演算用に512-bit拡張しただけのため、スループットは2倍にしかならない。

 NVIDIAも"Maxwell" / "Pascal"世代では同様にVector演算ユニットを拡張して深層学習のMatrix演算を行っていたが、Volta/Turingで専用のMatrix演算ユニット=TensorCoreを実装した。
 TensorCoreはVector演算ユニット=CUDAコアとは別の実装なのでCUDAコアとは無関係に拡張することができる。実際、Volta/Turingに続くAmpere/Hopper/Adaでも継続的に拡張され続けているが、TensorCoreのスループットはCUDAコアのスループットとは無関係に強化されている。

 実はこれは単なる「新方式の演算ユニットの実装方法」という表面的な話ではなく、AMD(旧ATI Technologies)とNVIDIAの文化・フィロソフィーによるものの可能性がある。新方式の演算ユニットを実装する場合、伝統的にNVIDIAは新規の演算ユニットをGPUに追加する力業で実装する「Brute Force(力業)」方式の傾向が強く、AMD/旧ATI Technologiesは既存の演算ユニットを機能拡張する傾向が強い(参考)。
 ただし、さすがにここまでAI/深層学習市場が拡大し売上・株価に影響を与え始めるとAMD/旧ATI Technologies方式では無理があると言わざるを得ない。

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WiiM Amp (2)

2024-09-14 | オーディオ

WiiM Amp ファースト インプレッション

 Amazon.deからWiiM Ampが届いたため、とりあえず自宅のPolk Audio R700と繋いで使ってみた。
 WiiM Ampの外装はアルミニウムで安っぽくなく好印象である。入力インターフェースはRCAアナログ・HDMI ARC・S/PDIF(光)・USB Type-B・Ethernetが各1系統、あとはWi-Fi・Bluetoothのみ、出力はスピーカー出力のみとシンプルである。

 操作は基本的にすべてスマートフォン/タブレットのWiiM Homeで行うのが基本だと思う。リモコンは付属するが液晶ディスプレイなどがあるわけでもないため現在の状態が分かり難い。あくまでも「楽曲を再生中」といったような現状が分かっていて、停止/スキップ等の操作をするためのものだと思う。

 ストリーミング再生する場合は入力をEthernetに切り替えてSpotify / Amazon Music等から選択・USB接続の外部ストレージから再生する場合は入力をUSBに切り替えて楽曲を選択することになる。いずれの場合も選択肢は膨大だろうから、CDやカセットと違いシーケンシャルに操作(メディアを入れる→再生ボタンを押す、早送りボタン/巻戻しボタンを押す、など)できないので、アルバムのアートワークなどを見ながらスマートフォン/タブレットで操作するのが直感的で簡単だろうと思う。

 USBメディアについてだが、WiiM AmpのUSBポートのバスパワーは最大5V / 650mAとのことである。USB2.0までは最大5V / 500mAだからUSB2.0でバスパワー駆動のデバイスならそのまま動作するはずであるが、USB3.0のバスパワーは最大5V / 900mAだからUSB3.0でバスパワーで駆動するデバイスでも電源不足になる可能性がある。
  筆者はSamsung T7 SSD 1TBを試用してみたが問題なく動作した。音楽CD1枚(16-bit / 44.1kHz、約60分)がFLACで約250MBと仮定すると約4000枚分を保存できる計算でオーバースペック気味である。仮にUSBメモリースティックだと256GB(音楽CD約1000枚分・24-bit / 96kHz HD音源 約250枚分)あたりが妥当ではないかと思う。

室内音響補正(予行練習)

 実家に導入する前に、自宅でセットアップを試行してみることとする。この場合、スピーカーも設置場所も室内音響も異なるので音響補正結果はまったく役に立たないが、手順の確認・機材の確認・予行練習できる。


筆者自宅両親宅
Integrated AmplifierWiiM Amp
SpeakersPolk Audio Reserve R700Tannoy Mercury F2 or F3
StorageSamsung T7 SSD
MicrophoneMiniDSP UMIK-1
MesurementRoom EQ Wizard / WiiM Home

 WiiM Homeに搭載の室内音響補正機能は現時点では「なんちゃって」レベルなので、今回はRoom EQ Wizard(REW)で測定・解析しParametric Equalizerの補正値を生成し、その補正値をWiiM HomeのParametric EQに入力することで室内音響補正を行うことになる
 前回、筆者自宅のオーディオ=通称SchilthornシステムではDirac Liveで室内音響補正を行ったが、REWは操作の多くがマニュアル操作となるため操作に慣れておきたいところである。

 Dirac LiveとRoom EQ Wizardの音響補正の違いを説明すると
 Dirac Liveでは、まず測定前に測定範囲を指定し、ワイドエリアの場合で計17箇所で測定した結果を基に計算する。測定結果はクラウドでシミュレーションされ、補正結果をマニュアル操作で好みに調整し、保存・反映させる。
 他方、Room EQ Wizard・WiiM Homeの測定は基本的に1箇所のみで、1回または左右で分けて測ることができる。

 ちなみに、筆者宅のオーディオ=Schilthornシステムで使用しているMiniDSP Flexに搭載のAnalog Devices SHARC ADSP-21489(2.7 GFLOPS @ 450MHz)でDirac Liveのフィルターを実行しているが、WiiM Pro / WiiM Pro Plus / WiiM Ampは、LinkPlay A98モジュールに搭載されているAmlogic A113X内蔵のDSPで処理することになる。
 Amlogic A113XはAmazon Alexa対応スマートスピーカー用のアプリケーションプロセッサーで、ボイスコマンドを処理するためにTensilica HiFi 4 DSPが搭載されている。 Amlogic A113Xの公式ページを見てもDSP性能に関する情報は無いが、HiFi 4 DSP自体は300 MHzで2.4 GMACS(固定小数点か浮動小数点かはオプション)なので同等の演算性能はあるのではと思われる。

Room EQ Wizard(REW)による測定・補正

 REWを最適な方法で使用する場合、PCとUSB接続されたオーディオ機器をUSB接続された測定用マイクでの計測が理想で、それ以外の場合は色々と面倒になる。例えばマイクがアナログ接続の場合はキャリブレーションする必要があるし、接続にアナログ接続が含まれる場合はインターフェースの特性も考慮に入れる必要が出てくる。
 WiiM AmpはUSB Type-BインターフェースしかなくPCとUSBで直接接続できない。このため、S/PDIF(光)接続かHDMI ARC接続で接続することになるが、どちらもPCで一般的なインターフェースとは言い難い。理屈の上ではアナログ接続・Bluetooth接続も可能だが音響的にフラットでないため測定に適さない。そこでUSB接続でSPDIF出力対応のDigital-to-Digital Converter(DDC)が必要になる。

 とりあえず接続できれば良いのであればBehringer UCA202/UCA222(3000円ぐらい)の入手性が高い。Audio Science Reviewのレビューを見る限り造りは悪そうであるが単にDDCとして使うのであればPCM 16-bit / 44.1/48 kHz出力が可能なので測定する分には最低限のスペックを満たしている。その他に比較的入手し易そうなオーディオインターフェースとしてはESI U24 XLがある。
 筆者は豊富なデジタルインターフェースのあるDDCが欲しかったためDuok Audio U2 Proを入手した。ちなみにDuok Audio U2 ProはLeaf Audio CMD-17のOEM製品である。

 PCとWiiM AmpをDDC経由・S/PDIF(光)で接続して測定することになるが、ここで昨今で特有の問題がある。
 筆者は最近ASUSTeK製PCを入手して試用中だが、ASUS製MyASUSユーティリティー・Windows 11のSound > Enhance機能・Realtekドライバー付属ユーティリティーの自称「音質向上」機能でオーディオ入出力が勝手に改変されてしまい、測定がうまくいかない。
 特にMyASUSとRealtekユーティリティーはAIベースのノイズ除去機能で非常に相性が悪い。そもそも音響測定はピンクノイズやホワイトノイズを使用するためノイズは除去されてしまう。また、10 kHz~20 kHzは電気的にノイズが乗り易い一方で人間の声(約100~1000 Hz)からかけ離れているため、COVID-19以降で一般的なリモート会議用の設定ではノイズと見做され除去されてしまう。
 筆者の場合は、測定→異常なグラフを目撃→原因らしき機能を無効化、という操作を3回以上繰り返してようやく正常なグラフにすることができた。ただし、1度無効化しても、デバイスを抜き差しした場合などに有効化されてしまう場合がある。こういった元データを改変してしまう「お節介な機能」は標準で無効化されているべきだと思う。

以下はMyASUSの設定項目である。

 ここまでやって、ようやく本題の音響測定・補正に辿り着くわけだが、REWの使い方はネットを探せば手順を説明したページが大量に見つかるため割愛する。

補正前

補正後。まだまだ補正し足りないが、ワークフローの確認・様々な制約が確認できたので今回はここまでとする。

REWからWiiM HomeにParametric Equalizerの値を設定する上で以下の制約がある。

  • Parametric Equalizerの設定値が10バンドしかない
  • 設定値のうちGain値が-12.0 - 12.0 dBの範囲で、これはREWの出力の範囲と異なる
  • 設定値のうちQ値が0.1 - 24.0の範囲で、これはREWの出力の範囲と異なる

 実際に測定・補正してみて思ったのは、使用するスピーカーの仕様は把握しておいた方が良いということだ。
 筆者は自宅ではPolk Audio R700を使用・実家ではTannoy Mercury F2またはMercury F3を使用予定だが、そのスペックが以下の通りである。


TweeterMid-rangeWooferCrossoverFreq Response
(±3dB)
Sensitivity
Impedance
Polk Audio R7001x 25 mm1x 165 mm2x 203 mm350 Hz, 2.7 kHz38 Hz - 38 kHz88 dB8Ω / 6Ω / 4Ω
Tannoy F31x 25 mm1x 165 mm-2.7 kHz35 Hz - 20 kHz89 dB
Tannoy F21x 25 mm1x 165 mm-2.8 kHz48 Hz - 20 kHz88 dB

 例えばFrequency Responseは±3 dBの範囲だが、「その範囲は±3 dB以内に収まる」わけなのでシステム全体・室内音響を加味するとイコライジングは± 3dBを超えるかもしれないがイコライジングは相対的に小さくて済む可能性がある。逆に「その範囲外は± 3dB以内に収まらない」ので測定してみないと判らない。単にその範囲を超えるだけ(± 6dBとか)でイコライジングの幅は相対的に大きくなるかもしれないし、補正が不可能な歪みがあり補正を諦めるべきかもしれない。その判断の基準としてスピーカーのスペックは参照されるべきだろう。
 もっとも、業界の標準としてスピーカーのスペックは無音響室でスピーカーユニットから1m離れた位置で計測するのに対し実環境ではそうとは限らないからスペックの値と大きく異なる可能性がある。具体的には、低音域は壁など室内で反射されてで増幅されるし、高音域は距離に応じて減衰しやすい。

音響補正後の音

 音響補正前は低音過多・高音過少だったせいだろう、籠もったような不明瞭な音で聴き取り辛く絶対にコンサートホールで聴こえるような音ではなかったが、音響補正後は見通しが良いスッキリした音になりリアリティーが増した。

 もっとも…筆者自宅のオーディオシステム=Schilthornシステムと比較すると、性能差なりの音質の差はある。SNRが高いせいだろう無音時の静寂さに違いがあるし、より高度に補正されているせいだろう音の数が増えた印象があるし、アンプの制動力の違いだろう繊細な音まで隅々と聴き取れる感じがする。
 もっとも、もしかすると何も知らない人を連れてきて聴かせてみるとWiiM Ampの方が高音質と感じる人がいても不思議でない。悪く言うと歪んでいる音は良く言うと艶があり非日常的で耳あたりが良い。それに対してSchilthornシステムは音の正確さを狙って構築しているので、音はリアリティーは高いが艶が無く日常的で耳につく音ではない。

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WiiM Amp (1)

2024-08-31 | オーディオ

続編記事 Wiim Amp (2)に合わせ一部加筆

動機

 10月の一時帰国に合わせ、実家用にWiiM Ampを発注した。
 WiiMはAmazon Music・Spotify等に対応したストリーマーを製造・販売しており、WiiM AmpはDクラスパワーアンプを統合したモデルである。

 以前も書いたが、筆者自身はWiiM Pro Plusを使っているし、アンプ統合製品であれば欧州の著名オーディオショップAudiophonicsがHypex製NCore Dクラスアンプを統合したDAW-S250NCを導入するところだし、あと1~3カ月ほど待てば音質を改善したWiiM Amp Proが発売される。
 ただし、今回は10月に実家に導入するので話は少し違う。音質は良いに越したことはないが (1) 省サイズと物理的・操作性のシンプルさが重要で本体ですべて完結しており、(2) 10月に導入できる必要がある。よって、WiiM Pro Plus(別途アンプが必要)もDAW-S250NC(サイズが大きい)もWiiM Amp Pro(10月に入手できるか不確実)も候補としてはイマイチ、ということでWiiM Ampが最適という結論に至った。
 さらに、Amazon.deの特価販売でEUR 265とかなり安価で購入できたことも大きかった(欧州人の感覚では26500円・円安下の為替レートでは43000円ぐらい。価格コムでは52000円~)。

 筆者の自宅ではなく両親宅にWiiM Ampを導入する理由は、両親にCD等のレガシーなメディア・レガシーなオーディオ装置から現代的な方式に移行してもらいつつモノと占有スペースを削減するためである。
 特に母親はモノを捨ててシンプルなリビングルームを目指しているが、利便性を損ねるわけにもいかない。WiiMで既にCDで所有している楽曲はFLACファイルに変換してUSBメディア・最近の楽曲はストリーミングに移行することで、巨大なCDラジカセから小型なWiiMに移行し、嵩張るCD等のレガシーメディアを処分できる。これにより物質的にも管理的にもシンプルになる。

WiiM Amp

 WiiMに関しては以前の記事で紹介した通り。Amazon Music・Spotify等に対応したストリーマーだが、対応するサービスが豊富で本体の価格も安価なのが魅力である。それでいて音質についてはモデルによるが概ね必要十分な水準を達成している。
 WiiM Amp/WiiM Amp Proに類似の製品としてはMarantz M1(Heos・2x 100W @8Ω・EUR 1000)・Denon Home Amp(Heos・2x 100W @8Ω・EUR 800)・Sonos Amp(2x 130W @8Ω・EUR 800)・NAD M10(BluOS・2x 160W @8Ω・EUR 2500)、あとは販売終了済だがHarman/Kardon Citationなどが存在する。対応するフォーマット・ストリーミングサービスやアンプの出力なども異なるため単純に比較できないが、いずれも価格は2倍以上になる。
 ここで「単純に比較できない」といってもWiiM Amp/WiiM Amp Proが音質が劣っているわけではない。例えばWiiM Amp SINAD 89dBに対しNAD M10 SINAD 86dBと上回っているし、Marantz M1・Denon Home Ampに採用されて話題のAxign製コントローラー(※)の特徴はPFFB回路による高SNR・THD+Nだが、WiiM Amp ProにはPFFB回路が搭載されており高SNR・THD+Nを実現している。
※余談だが、Axign製AX5688AX5689はPFFB・アンプ制御・PWM変換だけ・PWM出力するICなので、増幅段は別のDクラスアンプを使用しているはずで、Axign AX5689採用のSabaj A30の場合は増幅段にST Microelectronics STA516Bを搭載している。

 WiiM Amp ProではWiiM Ampで優秀とは言い難かったSNR・THD+Nが劇的に改善されている。DAW-S250NCも含めたスペックは以下のようになっている。


WiiM AmpWiiM Amp ProDAW-S250NC
ASR ReviewWiiM AmpWiiM Amp ProDAW-S250NC
MSRPEUR 369
USD 299 (excl VAT)
EUR 449 ? (estimate)
USD 369 (excl VAT)
EUR 899
LinkPlayLinkPlay A98MLinkPlay A98M ?LinkPlay A98M
DACESS ES9018K2MESS ES9038Q2MESS ES9038Q2M
Supported
digital format
USB-B, DLNA
MP3, AAC, ALAC, APE, FLAC, AIFF, WAV, WMA, OGG, DFF, DST
USB-B, DLNA
MP3, AAC, ALAC, APE, FLAC, AIFF, WAV, WMA, OGG, DFF, DST
DLNA
MP3, AAC, ALAC, APE, FLAC, AIFF, WAV, WMA, OGG, DFF, DST
Digital inputSPDIF Optical:
PCM up-to 24bit 192kHz
SPDIF Optical:
PCM up-to 24bit 192kHz
USB-A:
PCM up-to 32bit 768kHz
DSD DoP up-to DSD256

SPDIF Coaxial/Optical:
PCM up-to 24bit 192kHz DSD DoP up-to DSD64
NetworkWiFi 5
Bluetooth 5.0
1x Ethernet RJ45
WiFi 6E
Bluetooth 5.3
1x Ethernet RJ45
WiFi
Bluetooth 5.0
1x Ethernet RJ45
Supported
network protocols
AirPlay 2
DLNA
Chromecast
AirPlay 2
DLNA
Chromecast
AirPlay 2
DLNA
Chromecast
Inputs1x Stereo RCA
1x SPDIF Optical
1x HDMI ARC
1x USB-A
1x Stereo RCA
1x SPDIF Optical
1x HDMI ARC
1x USB-B
1x SPDIF Optical
1x SPDIF Coaxial
AmplifierTPA3255TPA3255 with PFFBNCore NC252MP
OutputsStereo Speaker
1x Subwoofer output
Stereo Speaker
1x Subwoofer output
Stereo Speaker
1x RCA Pre-Out
Output power2x 120W @4Ω
2x 60W @8Ω
2x 120W @4Ω
2x 60W @8 Ω
2x 250W @4Ω
2x 150W @8Ω
SNR98 dB120 dB121 dB
THD+N0.002% (-92 dB)0.0005% (-105 dB)0.0015%
Control appWiiM HomeWiiM HomeWiiM Home
Compatible voice assistantsAmazon Alexa
Google Assistant
Siri
Amazon Alexa
Google Assistant
Siri
Amazon Alexa
Google Assistant
Siri
Dimensions190 x 190 x 60 mm190 x 190 x 63 mm3000 x 2950 x 60 mm

現行製品ではWiiM AmpをDAW-S250NCが全面的に上回っており、WiiM Amp Proはその間に割って入る形になるが…いかんせんDAW-S250NCが高価なのでWiiM Amp Proは性能の割には割安に思える。

 構成部品だけで見ればWiiM Amp ProとWiiM Ampの違いは大きくない。
 Wi-FiやBluetoothのバージョンが更新されていたり、DACチップが更新されていたりと細かな違いはあるが、それだけで劇的に音が変わる種類のものではない。本命はDクラスパワーアンプで、チップ自体はTexas Instruments TPA3255と同じだが、PFFB = Post-filter Feedback回路が追加されSNRとTHD+Nが劇的に改善されている。
 ちなみに、2x 120W @4Ω・2x 60W @8Ωというスペックは少し不可解である。TPA3255なら2x 260W @4Ω・2x 150W @8Ωが可能だし、このクラスならTPA3255ではなく低出力だが低歪率のTPA3251がある。同じ200-250WクラスでTPA3255採用パワーアンプだとTopping PA5 II(2x 100W @4Ω)やFosi Audio V3 Mono(1x 240W @4Ω)があるのでWiiMが特殊というわけでもないが、Topping・Fosi Audioの場合はさらに高出力な製品Topping PA7 II(2x 200W @4Ω)・Fosi Audio V3 Stereo(2x 300W @4Ω)でも同じくTPA3255が採用されているので、単純に部品の共通化・調達や設計の効率化を狙っている可能性が高いが、WiiMはそういった形のファミリー展開は見られない。
 ところで、Topping PA5 IIやFosi Audio V3 Monoは同じTPA3255採用パワーアンプで非常に優秀なSNR・THD+Nを達成しているが、その理由の一つがPFFB回路の採用である。

 もっとも、PFFB回路による「劇的に改善」というのはスペック表での机上の話なので、人間の聴感で違いがあるかは判らない。WiiM AmpでもSNR・THD+Nは人間の聴力の限界SNR 90 dB・THD+N 1%以上の性能を達成しているし、実用上でそれほど大音量で再生するとは考え難いからである。
 DAC等の装置あるいはパワーアンプ単体でSNR 100 dB以上・THD+N 0.001%以下といったようなハイスペックが好まれるのは、複数台の装置を組み合わせたシステム全体で高いSNR・THD+Nを得るためである。これは高度に統合済のWiiM Ampの場合、後段にはスピーカーしかないためSNR 98 dB・THD+N 0.002%というスペックでも問題とならず、あとはスピーカー次第ではないかと思える。

室内音響補正

 実は以前の記事を書いてからの更新として、WiiMがiOS/Androidアプリに室内音響補正機能を追加した。

 実のところ、この可能性についてはWiiM公式発表前の前回の記事でも触れている。WiiMの装置は構造的に (1) アナログRCA入力はADCでデジタル信号に変換され、デジタル入力と共にDSPを通ってからDACで出力される構造になっており、(2) DSP機能としてParametric Equalizerが搭載されているので、簡易的な音響補正は以前から可能だった。もっとも、以前はParametric Equalizerで補正するとしても補正値を自分で測定して入力する必要があるから、ユーザー側の難易度からすると容易とは言えなかった。

 今回追加されたのは、WiiM Homeアプリに室内音響補正のウィザードが組み込まれ、iOS/Androidデバイスのマイクでの集音・測定からParametric Equalizerの補正値を作成・適用までを一連の流れで実行してくれるという代物である…。問題は、iOS/Androidデバイスのマイクの性能は高くない上にキャリブレーションされておらず、補正値が正しいか怪しい点である。
 そもそもiOS/Androidデバイスのマイクの本分は電話なので人間の声の周波数帯に最適化されている可能性が高い。例えば可聴域全域20 Hz~20 kHzがフラットである(オーディオとして科学的に音が良い)ことよりも人間の話し声100 Hz~1 kHz付近が高音質である方が重要で、むしろ10 kHz以上は電子機器のノイズの可能性が高いためカットした方が電話のマイクとしては音が良いかもしれない。

 では外部のマイクを使えないか?というと、それはそれで問題がある。
 まず、3.5mm音声端子が省略された時点でマイクのアナログ音声入力が行えないが、仮にマイク入力があったとしても特性がフラットとは限らない。ではBluetoothはというとBluetoothはaptX・AAC等のCodecで人間が聴こえ難い帯域をカットされる(恐らくAACなどのファイルを見れば14kHzあたりでLPFが入っているはずである)。
 結論から言えば、唯一の選択肢はUSB接続のマイクが最適ということになり、有名どころではMiniDSP UMIK-1がある。実際、AndroidスマートフォンのUSB端子にMiniDSP UMIK-1を接続してみると、WiiM Homeでの自動室内音響補正で使用することができた。ただし、WiiM Homeにはキャリブレーションファイルを取り込む機能は無いので測定用マイクのキャリブレーション結果は反映されないことになる。

 今回追加された室内音響補正機能はともかくParametric Equalizerは筆者としては是非とも活用したい機能である。
 筆者の自宅の場合は音響補正は(WiiMの簡易機能ではなく)MiniDSP Flex搭載のDirac Liveと専用の測定用マイクでオーディオシステム全体を対象として行うため問題無いが、実家でWiiM Ampで行う場合はREWでの測定・補正値出力とParametric Equalizerによるマニュアル補正だけでも便利である。

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最近の興味深かった話題(2024年第20週)

2024-05-20 | 興味深かった話題

2024年 6月版 Top500 が公開

TOP500 LIST - JUNE 2024

 今回意外だったのはORNL/HPE (Cray)/AMDのEl Capitanが登場しなかったことで、それ以外は実に順当な結果となった。ただ、ランキング自体は順当なものの話題はAI(という言葉は漠然としているので機械学習とか深層学習という言葉の方が適切に思えるが…)に話題を攫われているので、HPL(High-Performance Linpack)の存在意義がより一層怪しく感じられる気もするが…

 今回のランキングでは、恐らく動作周波数を落としているという意味ではフルスペックではないが、ANL/Intel/HPEのAuroraが2023年11月のランキングから約2倍に構成を拡大して(ハードウェア構成的には)フルスペックでのランクインとなった。下の表はTop500からノード数・CPU数・GPU数を逆算して纏めたものだが、ノード数・CPU数・GPU数が昨年Intelが2023年5月に発表していた予定の構成と一致していることが判る(参考)。

HPCNodesTotal CPUTotal GPURmax
(PFlop/s)
Rpeak
(PFlop/s)
Rmax/Rpeak
Frontier (2023.11)8,63117,26234,5241,194.001,679.8271.08 %
Frontier (2024.06)8,63117,26234,5241,206.001,714.8170.33 %
Aurora (2023.11)5,43910,87832,634585.341,059.3355.26 %
Aurora (2024.05)10,62421,24863,7441,012.001,980.0151.11 %
Aurora (Planned)10,62421,24863,744?2,069.19?

 今回の結果は、Argonne National LaboratoryとIntelとしてはある意味で予定通りだったのではと勘ぐってしまう。国民の税金を5億ドル費やしたフラッグシップHPCの一台でFP64精度で2 EFLOPS超を公約していたシステム・初登場時1位を獲るべきシステムが(とはいえIntelが遅延による違約金3億ドルを支払ったで実質2億ドル+2年超の遅延だが…)、実際には2024年に登場し2年前に登場した6億ドル・1.2 EFLOPSのシステムに及ばないなどというのは冗談でも笑えないからで、だからこそ、あえて50%程度の不完全な構成で2023年11月に登場させ、批難を分散させたのではないか?という推測は穿った見方が過ぎるだろうか。

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WiiM Pro Plus

2024-03-30 | オーディオ

WiiM Pro Plus

 以前、自宅オーディオシステム=通称Schilthornシステムを構築した際に残課題(?)となっていた、オーディオストリーマーとしてWiiM Pro Plusを選定した。Amazon.deで値下がり時に購入してEUR 178だった。

 実はオーディオストリーマーを所有していなかったこともあり、サブスクリプションに加入しているのはAmazon Primeだけだったりする。ただ、筆者はクラシック好きなので他に以下のようなサービスに対応している事も重要だった。

  • Qobuz
  • Tidal
  • Spotify

 機種選定にあたって当初はFiiO R7なども検討していたのだが、FiiO R7が約US$ 700・WiiM Pro Plusが約US$ 200ほどで、筆者個人の使い方ではFiiO R7でないとできない事があるわけでもなくWiiM Pro Plusで十分と判断した。
 筆者はストリーマー ー MiniDSP Flex間をアナログ接続を想定したためWiiM Pro Plus(US$ 220ほど)を採用したが、もし、デジタル出力が前提であればWiiM Pro(US$ 150ほど)やWiiM Mini(US$ 110ほど)でも良いかもしれない。また、スピーカーと直接接続するためパワーアンプが必要であれば、WiiM Amp(US$ 300ほど)もあるが、欧州在住ならAudiophonics DAW-S250NC(EUR 900ほど)が御勧めである。ESS ES9038Q2M DACとNCore NC252MP D級パワーアンプとを組み合わせたAudiophonics DA-S250NCに、WiiM Proと同じLinkPlayモジュールを組み込んだ製品である(後述)。
 WiiM Pro・WiiM Pro Plus・WiiM AMP、さらにAudiophonics DAW-S250NCはいずれもAmlogic A113XベースのSoMモジュール=LinkPlay A98Mをベースとしてデジタル段以降を別基板にした派生製品である。デジタル出力なら基本的に同じと思われ、デジタル出力やMP3音質のRCA出力ならWiiM Pro、HD音源のアナログ出力ならWiiM Pro Plus、スピーカー出力ならWiiM Ampという棲み分けだろう。一応、Bluetooth入力/出力も可能なのだが、対応コーデックがSBC・AACのみでLDACやaptX HDなどには未対応のため使う気にはなれない。

 後述するが関連会社のArlyicブランド製品も同じLinkPlay製モジュールを使っているので使い勝手は概ね同じと思われるが、搭載するSoMモジュールはLinkPlay A31で、これはMediaTek MT7688ベースなのでWiiM Pro系のAmlogic A113Xと比較すると処理性能が低い可能性がある(未使用のため推測)。
 Amlogic A113XはArm Cortex-A53 1500 MHz x 4-core・MediaTek MT7688はMIPS24K 580 MHz x 1-coreなので性能的には比較にならない(ざっくり24倍ぐらい?)。オーディオストリームをデコードするだけでは高い処理性能は必要ないが、アプリ操作やAlexaの音声認識など一部の処理ではMIPS24K 580 MHzでは処理が追い付かない可能性がある。例えば初代Amazon EchoではArm Cortex-A8搭載のTI DM3725を使用していたし、あるいはWiiMに似たVolumioの場合もRaspberry Pi Zero(性能的にはMediaTek MT7688に近い)ではなくRaspberry Pi 3/4(性能的にはAmlogic A113Xに近い)を推奨している。

 WiiM Pro/Pro Plusの不思議な特徴としてアナログ入力がある。
 アナログ入力するとADCでデジタル信号に変換された後、DACでアナログ信号に変換されて出力される。一見すると存在意義が謎だが、WiiMにはスマートフォンのアプリから操作するイコライザー機能が存在しており、入力したアナログ信号をWiiM内蔵のイコライザーで調整して出力できる。
 機能だけを見るとMiniDSP等のアクティブクロスオーバーに似ていなくもないが、音響測定して解析した結果をUSB接続のPC経由でDSPにフィードバックして補正するMiniDSPと違い、WiiMのイコライザーはユーザーの聴覚頼りになる上、入力されるアナログ信号の周波数特性がフラットであるという保証も無いので、やはりMiniDSPとは似て非なる変な機能である(一応、測定用のキャリブレーション済みマイクで測定・DEWで解析して、スマートフォン上のアプリのパラメトリックイコライザーでマニュアル補正というのも理屈上では可能だあろうが…WiiM Pro Plus約3万円のユーザーでそういう発想・技術のある人はどれだけいるのだろう?)

音質

 WiiM Pro PlusはさすがにS/N比が高く明瞭な音が出る。
 US$ 200程度と安価なクラスとしては周波数特性も優秀でSINAD 114dBに達する(参考:Audio Science Review)。DACはAKM AK4493Sであるが、Op-ampは驚くべきことにTI SA5534Aが使われている(1979年からある有名なNE5534と同等品。1回路内蔵)。同じDACを搭載していて評判の良いS.M.S.L SU-1(参考:Audio Scieonce Review)には若干劣るが、人間が聴き分けられるほどの差があるか疑わしい。高性能DACと接続する場合はともかくS.M.S.L SU-1のような低価格DACを組み合わせるぐらいなら音質面でも使い勝手の面でもWiiM Pro Plus内蔵DACで十分ではと思う。

 WiiM Pro Plusが優秀な一方で、WiiM MiniWiiM ProWiiM Ampは人間が聴き取れるレベルで測定値が良くない。ノイズフロアは可聴域ではないが高め(約-120 dB)で、ノイズの一部は可聴域(約-90 dB)に達する。デジタル出力専用で使うのが妥当と思う。スピーカーに出力するのであればAudiophonics DAW-S250NCがオススメだが、LinkPlayモジュール無し版のAudiophonics DA-S250NCだとSINAD 104 dBでWiiM Ampとは別次元の性能である。

 QobuzのHigh Resolution音源24-bit / 192kHzを再生してみたが、音質は良好でスマートフォン上のアプリから快適に使用できる。MiniDSP Flex側のデジタル入力が既に埋まっている都合でアナログ入力しているが、Bluetooth以外でデジタル入力する方法を考えたいところ。

蛇足

 WiiMはLinkPlay社のオーディオブランドでLinkPlay社は米国カリフォルニアに本社を構える米国企業である。もっとも、LinkPlay社・Rakoit社・Arlyic社の創業者・CEOは同一人物と見られ、創業者と幹部は中国系である。Rakoit社・Arlyic社製品はいずれもLinkPlay社製モジュールが中核を担っている。上述の通りLinkPlay社は米国に本社を構えるが出資者にはBaidu(百度)・Edifierなど中国企業が並ぶ
 LinkPlay社製モジュールは他のブランドでも採用されているようで、LinkPlay社サイトの採用事例を御覧頂ければ解るが、ヤマハ・Samsung傘下HarmanのブランドHarman KerdonJBL・ギターアンプで知られるMarshallなどが含まれる。

 核となるLinkPlay社製モジュールはアプリケーションプロセッサーSoCとWi-Fiモジュールとソフトウェアを統合したSoM(System-on-Module)で、これとAndroidアプリ/iOSアプリが通信することでストリーミングコンテンツを操作する。このソフトウェアはWiiM製品もArlyic製品も共通のようである。

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