AMD Ryzen Embedded V3000はRembrandtがベース?
AMD Ryzen Embedded V3000 SoCs Based on 6nm Node, Zen 3 Microarchitecture - techPowerUp!
Zen3世代Ryzen Embeddedのウワサが報じられている。ウワサによると"Cezannne"系ではなく今年後半に登場予定の"Rembrandt"系になるのだという。
- 最大8 Cores / 16 Threads
- PCIe 4.0 20レーンレーン(dGPU用はx8)
- DDR5-4800 4ch(ECC対応)
- 10G Ethernet x2
- USB 4.0 x2
- TDP 15-30 Wと35-54 Wのモデルがある
- iGPUはRDNA2 12 CUs
Zen3 CPUコアとRDNA2 GPUの組み合わせなどは"Rembrandt"のスペックとして以前から報じられていた通りであるが、一部で組込用に仕様が変更されている。
具体的にはメモリーのECC対応・10GbE x2といったあたりで、Zenファミリー登場当初からRyzen Embedded・Epyc EmbeddedではCOM Express仕様を強く意識した仕様となっている。
まず、DDR5メモリーのECC対応は以前のモデルからRyzen APUではECC非対応・Ryzen EmbeddedではECC対応で一貫している。ちなみに4chとされているのはDDR5では1DIMMモジュールでx32×2chとなるからで、特におかしな仕様ではない。
10GbE対応という点は意外に思われるかもしれないず、ネット上でも混乱が見られるが、過去のRyzen Embedded・Epyc Embeddedでも10GBASE-KRに対応製品があり、COM Express対応のためにも重要な機能である。
10GBASE-KRはPCB(基板)上でのバックプレーン接続を目的としたEthernet規格で、RJ-45などのコネクターで外部と接続することを目的としていない。組込では例えばCiscoなどのエンタープライズ/データセンター用Ethernet Switchなどでスイッチチップー管理用CPUとの接続に用いられる。
個人的に気になるのは、Ryzen EmbeddedよりもむしろZen世代のように2 chiplet構成でEpyc Embeddedが展開されるか否かの方である。
COM Express Type-7では10GBASE-KR x 4が含まれており、Zen/Zen+ではZeppelin chipletに10GBASE-KR MACが2基搭載され、Zeppelin x 2の構成で10GBASE-KR x 4を実現していた。しかし、Zen2世代ではRyzen APU "Renoir"がRyzen Embedded V2000として投入されたもののEpyc Embeddedは投入されなかった。"Renoir"ではCOM Express Type-7を満たすにはI/Oが明らかに不足しており、例えば10GBASE-KRに限って言えばPCIe接続でコントローラーを追加することも可能だが、それではPCIeレーン数の規定を満たせないため当然とも言える。
その点、"Rembrandt"の仕様であれば2 chiplet構成にできればCOM Express Type-7の仕様を満たせそうに見える。ただし、過去のAMD APU製品は複数chiplet構成をサポートしてこなかったため、その辺りがポイントとなりそうだ。
COM Express Types | AMD Embedded Processor family | |||||
Zen/Zen+ | Zen2 | Zen3 | ||||
Type | COM Express Type-6 | COM Express Type-7 | Ryzen Embedded V1000 | Epyc Embedded 3000 | Ryzen Embedded V2000 | Ryzen Embedded V3000 |
DRAM | - | DDR4-3200 ECC | DDR4-3200 ECC | DDR4-3200 ECC | DDR5-4800 ECC | |
PCIe lanes | 24 | 32 | upto 16 lanes | upto 32 | upto 20 | upto 20 |
SATA | 4 | 2 | upto 2 | upto 8 | 2 | ? |
10GbE | 0 | 4 | upto 2 | upto 4 | - | upto 2 |
1GbE | 1 | 1 | upto 2 | upto 4(?) | - | ? |
USB4.0 | - | - | - | - | - | 4 |
USB3.1 Gen2 | - | - | - | - | 4 | |
USB3.0/3.1 Gen1 | 4 | 4 | 4 | 4 | ||
USB2.0 | 8 | 4 | 1(?) | 0 | 4 | 4? |
Video | LVDS A&B | 0 | LVDS | 0 | DP-Alt, LVDS | ? |
ところでウワサの出所によると「two 10G ethernet PHYs」という記載になっているようだが、厳密にどういう意味なのか判然としない。
まず、昨今のEthernetでいう「PHY」とは昔からあるOSI参照モデルでの物理層=PHYという意味と、MACコントローラーチップから物理層に接続するシリアルインターフェース(OSI参照モデルでいうとデータリンク層と物理層の間のインターフェース)のSerDes PHYの2種類がある。
例えば上述の10GBASE-KRはOSI参照モデルでいう物理層は実装されないが、SerDesのPHYは搭載されシリアル信号でバックプレーン接続されるし、昨今のPCIeやAMD Infinity FabricなどはEthernet/InfiniBandで培われたSerDesを応用しているから(参考)、昨今のマイクロプロセッサーはEthernet MAC層の搭載数や搭載有無に関わらず膨大な量のEthernet PHY(SerDes)を搭載している。例えばZen/Zen+ Zeppelin chipletは上述の通り10GBASE-KR MAC層を2基搭載していたが、搭載されていたSynopsys Enterprise 12G Ethernet PHYは計32レーンである。
筆者が想像するに「two 10G ethernet PHYs」のPHYとはシリアルインターフェースのSerDesのことと推測する。
そもそも、組込SoCで管理用の低速Ethernet(例:1000BASE-T)を除きMAC層と物理層を統合することは好ましくない。上述の通り10GBASE-KRのように物理層を実装しない規格もあるし銅撚線ケーブルを使った10GBASE-Tや光ファイバーを使った10GBASE-ERなどで物理層が異なるため、組込SoCの用途を制限してしまうからである。