概要
世の中ではグローバリゼーションだのが叫ばれて久しく、もはや死語のようにすらなっている。その中でも筆者の住む欧州はEU/Euro圏を中心に市場統合が進んでいる地域であるが、それでも国境が無くなったわけではなく、特に各国で法規制が強かったり・市場の寡占が進んでいる市場、例えば銀行・郵便・電話(固定電話・携帯電話)・電力や、古くから普及している規格が存在して今さら置き換え不可能な場合などは現在でも各国がバラバラで残っており統一されていない。
だから、なのかと思うが…電源プラグ/プラグ受けは各国で異なる。実は欧州は電気的には50Hz・220-240Vで概ね統一されているのであるが、電源プラグ/プラグ受けの物理的形状は完全に互換ではない。
「互換性がまったく無い」わけでも「完全な互換性がある」わけでもなく「完全に互換ではない」と表現を濁したのは、微妙な非互換性があるからだ。
上述の通り、欧州の場合は電気的に見れば英国/アイルランドの240V 13A 50Hz以外は、欧州大陸の220V 16A 50Hzで統一されており、プラグ/プラグ受けも接地極が無い場合に関しては一部を除いてタイプC=通称「Europlug」で統一されている。Wikipediaに詳細がある(ただし、事情が複雑なので解かり難い)が、英国/アイルランドのタイプG以外は、接地極が無ければタイプCだが、接地極があると接地極のピンの位置や形状が違ってくる。
とはいえ、接地極を無視すればタイプCで互換性があるので、旅行などで数日間ほどスマートフォンの充電などで接地極の無いプラグを使用する場合であれば欧州で規格が統一されていると見做していい(なぜかと言うと、日本では欧米と異なり接地極付のプラグが一般的ではないから、変換する場合にも接地極を考える必要が無い=タイプCに変換すれば欧州で使える)。
ただし、筆者(在欧10年目)のように欧州に長期間住むとなれば少し見方は変わってくる。
例えば消費電力の大きいデスクトップPCなどを所有するなら接地極は接続すべきだが、接地極の位置やプラグの形状が欧州各国で微妙に異なり、大別すると:
- フランス型(タイプE:丸形のプラグ受け側に接地極のピン)
- ドイツ型(タイプF:丸形のプラグの側面に接地極の電極)
- スイス・リヒテンシュタイン型(タイプJ:+極と-曲の間にある接地極のピンがズレて配置)
- デンマーク型(タイプK)
- イタリア型(タイプL:+極と-極に並んで中間に接地極のピン)
などが存在する。地理的に離れたポルトガルとかポーランドとかならまだしも、なぜ隣接し文化的な交流も深いフランス・ドイツ・イタリア・スイスで異なるのか不可解だが、まったく非互換というわけでもなく電気的には互換なので物理形状を変換すれば使用できる(理論上は。自己責任でどうぞ)。
運用
欧州でも一ヶ所に定住するなら現地に合わせればいいため困ることも無いが、筆者のように欧州内で移住を繰り返すと、接地極の位置が異なるプラグに遭遇することになる。しかし、わざわざケーブルを全交換するわけにもいかないので、効率の良い運用方法が必要になる。
これは筆者個人の場合だが、筆者の自宅内は接地極なし=タイプC/接地極あり=タイプFで統一している。アイルランド在住時(~今年8月)でもそうしていた。
その理由は、①欧州で電気製品を買うなら現地かドイツから買うことが多く、フランスやイタリアから買うことは少ない(→つまり電気製品を購入した場合に変換の必要が無いケースが多い)こと②英国/アイルランドのタイプGなどよりも小型で取り回しがし易いためである。特にタイプCは日本から持ち込んだ家電のプラグAを変換しても嵩張らないので手軽である。
変換方法だが、(a) 変換プラグを使う方法もあるが (b) PCのACアダプターのようにケーブルが分離可能な場合はケーブルごと交換する方法や (c) 変換プラグでマルチタップの大元で変換する方法の3種類の方法が便利だ。(a) (b) については変換プラグやケーブルをAliExpressで1個あたり€0.10~€1.00ぐらいで10~20個ぐらい大量に購入してしまえば安価で済むし、(c) マルチタップは€10.00~€30.00ぐらいして安価ではないが上述の通りタイプFで統一済なので買い替の必要もない。
ただし、これで上手くいかない場合もある。
日本のようなタイプAに統一された環境でも起こることだが、電源タップなどでプラグ受けが高密度な場合にプラグ同士が干渉して効率よく挿せなかったりする。そういう場合は特殊なアダプターを別途購入することもある(そういう特殊なアダプターはAliExpressで見つからない場合が多く、それなりにコストがかかる…)。
筆者が今年8月に移住したスイスでは下の写真のような壁コンセントが一般的である。これはタイプJプラグ x 3を効率良く挿せる機能的でオシャレ(?)な優良デザインだが、筆者のようにタイプFプラグ(大きい丸型)を使うと干渉してしまう。
そのような場合は干渉しない形状のアダプターを探す必要があり、実はAmazon.deで売られている(パッケージ写真の図を参照:通常のアダプターでは左上図のように干渉してしまうので、右上図のようにズラして変換するアダプターである)。