フォルクスワーゲン・シロッコ

助手　「新しいゴルフを見に行ってきましたよ。」

所長　「ほぉ、どうじゃった。」

助手　「やっぱりゴルフっていいですよね。売れるのも頷けます。アクセラもいいですけど、ボクならゴルフですね。まぁ、価格を考えるとアクセラも魅力的ですが。」

所長　「そうか。」

助手　「一緒にシロッコも置いてあったんですけど、これがまたカッコいいんですよ。」

所長　「シロッコか、確かに格好いいの。」

助手　「写真で見たイメージではボルボのC30みたいなクルマだと思ってたんですけど、実際はもっとスポーティーな感じですね。」

所長　「ワシはスポーツ・シビックみたいじゃと思っとったんじゃがな。」

助手　「ああ、わかります。リアクォーター・ウィンドウのカタチなんか、似てますよね。でもシロッコはサイドの張り出しが大きくってもっと迫力ありますけどね。」

所長　「ふーん、そうか。」

助手　「ボクも実際に見るまでは、ロングルーフのハッチバックですから、クーペと言うのはどうかな、って思ってたんですけど、見ればクーペと呼ぶのに相応しいクルマでしたね。」

所長　「ま、エレガントなクーペではないんじゃが、昔あったスペシャリティーカーに近いキャラクターなんじゃろうな。」

助手　「クラスは違いますけど、アルファのブレラなんかが近いかもしれませんね。」

所長　「かもしれんの。」

助手　「ロングルーフの恩恵で後部座席も案外広いんですよ。幅がないから中央に寄ってるんですけど、かえって見晴らしがよくなってますから、ファミリーカーとしても使えるかもしれませんね。」

所長　「ほぉ、それはいいのぉ。」

助手　「ただシロッコってカッコいいんですけど、値段も立派なんですよね、安い方の1.4LのTSIで392万もするんですよ。おんなじエンジンを積んでるゴルフと比べても80万も高いんですよ。」

所長　「ゴルフでさえ安くないのにな。」

助手　「ですよね。1.4Lのクルマが大方400万ですからね。国産だったら3.7LのZが買えてしまいますよ。」

所長　「1.4Lと言っても例のツインチャージじゃから、2Lクラスのクルマと考えないといかんのじゃが、それでも400万はハードルが高いの。」

助手　「でしょ。聞いた話だと本国ではゴルフとほとんど変わらない価格設定らしいんですよ。日本ではスポーツモデルの付加価値を高く見積もり過ぎなんじゃないですかね。」

所長　「ま、昔のシビックとCR-Xのような関係じゃと理想的なんじゃろうな。ゴルフの少し高いぐらいじゃと買い易そうじゃしな。じゃが実際売れる量がゴルフとシロッコでは全然違うし、そう簡単にはいかんのじゃろ。」

助手　「でも安けりゃ売れると思うんですけどね。」

所長　「バブル期ならともかく、この不況時に格好がいいという理由で、外国製のクーペを選ぶとは思えんがの。」

助手　「そりゃ、まぁ、そうかもしれませんけど。」

所長　「じゃから好きモンが買うだけじゃったら、価格が少し安くなったぐらいでは効果は得られんじゃろ。」

助手　「そうですか。」

所長　「欲しいモンは多少無理をしても買うじゃろうしな。あと50万安かったら買う、とかいうモンがそれほどおるとも思えんしの。」

助手　「かもしれませんね。やっぱり今の時代、輸入車はキツそうですね。」

所長　「じゃな。それか思いきって100万ぐらいドーンと下げるか、じゃな。」

助手　「それは無理でしょ。」

所長　「今のままじゃと無理じゃろうな。本国の値付けを見ても日本とそう変わらんしの。」

助手　「じゃあ、どうやって下げるんですか。」

所長　「価格の高い理由は、メーカーが利幅を取り過ぎとるのか、もしくは日本車と比べてコストが掛かり過ぎとるのか、じゃろ。じゃったらやり様によっては、まだまだ下げられると思うんじゃがの。」

助手　「・・・・。」

所長　「例えばゴルフのエントリークラスが200万を切るぐらいの価格で、GTIで200万台の後半、シロッコの安いのが200万ちょっと、高いほうで300万を切るぐらいの価格じゃったら、日本車と勝負できると思わんか。」

助手　「そこまで安くなれば、確かに国産とも張り合えるかもしれませんけど。」

所長　「多少高いのはフォルクスワーゲンのブランド力を考えれば十分埋められると思うしの。」

助手　「でもいくらなんでも無茶でしょ、そんな価格。」

所長　「そうは思わんがの。考えてみぃ、日本ってアメリカ、中国に次いで3番目に大きい市場なんじゃぞ。そこに本腰を入れて販売せんかったのは欧米メーカーの怠慢以外の何モンでもないんじゃ。日本のメーカーを見てみぃ、北米でもヨーロッパでも各国の販売ランキングの常連じゃろ。やる気になればその国のメーカーとも十分に戦うことが出来るんじゃ。」

助手　「・・・・。」

所長　「それに比べて日本での輸入車のシェアってどれぐらいか知っとるか、たったの5、6％しかないんじゃぞ。日本に自社工場をつくるとか、まぁ国産メーカーとの合弁でも構わんのじゃが、安くする方法はあると思うんじゃ。品質と信用度が上がれば中国工場という手もあるしの。それなのにいつまで経っても、外車イコール高級車とか趣味で乗るクルマ、から変わっとらんじゃろ。」

助手　「確かに輸入車って特別な存在ですよね。でも特別な存在だから選ばれてる側面もありますよね。国内や中国でつくったクルマに、果たして今のブランド力が通用しますかね。」

所長　「これがベンツとかアウディとかじゃったら、ドイツ製を前面に出して高級品として売るべきじゃと思うんじゃが、フォルクスワーゲンはあくまでも大衆車として数を売らんといかんのじゃ。じゃったら世界中のどこでつくっとっても変わらぬ品質を保つ日本車を手本にすべきじゃろ。」

助手　「昔、日産でサンタナをつくってましたけど、そんなに売れてたとは思えませんけど。」

所長　「そうじゃ。じゃから日本で国産車と比較して選ばれるようになるのには、日本車に負けない品質と技術力、個性が備わってないとダメじゃろうな。それが出来ないんじゃったら、今まで通り高いクルマとして細々と売るしかないじゃろ。」

助手　「・・・・。」


参考資料
フォルクスワーゲン・シロッコ（フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社）
フォルクスワーゲン・ゴルフ（轟クルマ文化研究所）
フォルクスワーゲン・サンタナ（『GAZOO．COM』　トヨタ自動車株式会社）

Yahoo！グループ　轟クルマ文化研究所