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蓬莱の島通信ブログ別館

「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

日本の苦難の時代を迎えて(2)─慰安婦決議案に狂喜する中国─

2007年06月29日 | 「謀略」に抗するために
1.中国ニュースの面白さ「日本は敵」
 中国のニュースの出方には、いろいろな特徴がある。一つは、軍事的には韓国を同盟軍扱して、日本を敵と表現する場合だ。
 5月にF22が話題になったころ、こんなニュースが出ていた。
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韓国国防相、日本の最新鋭戦闘機・F22導入に懸念表明(読売新聞) - goo ニュース
 【ソウル=加藤理佐】韓国訪問中の自民党の加藤紘一・元幹事長、山崎拓・前副総裁らは2日、金章洙(キム・ジャンス)国防相とソウル市内で会談した。
 金国防相は、日本が米軍の最新鋭ステルス戦闘機「F22ラプター」を次期主力戦闘機の調査対象機にしていることについて、「何のために導入するかを明確にしてもらいたい。この問題は、中国が敏感だろう」と懸念を表明した。
 また、国防相は、北朝鮮問題に関し、「核と拉致は分離して考えることができるのではないか」と指摘し、日本が拉致問題を理由にエネルギー支援などに消極的となることをけん制した。
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 早速、『朝日新聞』がホームページに載せている『人民日報』を見ると、以下のような記事が出ていた。
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 韓國研製新型“宙斯盾”戰艦 性能力壓日本
韓“宙斯盾”驅逐艦比日本的強大
 據報導,韓國海軍首艘裝備“宙斯盾”作戰系統的導彈驅逐艦將於本月末下水,韓國因此成為繼美國、日本、西班牙、挪威後世界上第5個擁有“宙斯盾”驅逐艦的國家。該艦被命名為“世宗大王”號,是韓國自行研製的第三代KDX驅逐艦的首艦。韓國媒體報導說,“世宗大王”號比今年3月實戰部署的日本最新型“愛宕”級宙斯盾驅逐艦系統更強大,具有除美國之外世界最強的性能。
(要旨:韓国は世界で第五番目のイージス艦保有国で、世宗大王号は、今年配備された日本の愛宕型イージス艦よりさらに協力で、アメリカを除けば世界最強である。)
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 この特集では、9Pに渡って、韓国軍のミサイルなどが紹介され、”強大さ”が宣伝されている(韓国軍は中国に新兵器をすぐに公開しているらしい)。一方の日本に対しては、以下のように報道されている。
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日本舉行海空閱兵式
26日,日本海上保安廳聯合海上自衛隊等部門共出動艦船64艘、飛機20架、人員約2000人在東京灣舉行海空閱兵式及包括反恐、消防、緊急救援等項目的海上綜合訓練。
(26日、日本の海上保安庁は海上自衛隊などの部門とともに64隻の艦船、航空機20機、人員2000人が、東京湾での反テロ、消防、緊急救援などの会場相互訓練を含む閲兵式を行ないった。)
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 この記事は、10ページの組み写真で、「5月26日,日本海上保安廳的武裝巡視船和艦載直升機在海上進行分列式(日本の海上保安庁の”武装”巡視舩と船載ヘリコプターが海上を分列式をおこなった)」とわざわざ、沿岸警備艇の「武装」を強調し、”自衛隊”が、こうした訓練をしているかのように、記事を誘導している。
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海上保安庁:東京湾で観閲式と総合訓練
 観閲船(手前)の前を連なって航行する巡視船など=東京都羽田沖で26日午後2時35分、本社ヘリから内藤絵美撮影 海上保安庁は26日、羽田沖の東京湾で観閲式と総合訓練を行った。海保のほか海上自衛隊や東京消防庁、警視庁などの船艇とインド沿岸警備隊の巡視船1隻の計64隻とヘリコプターなどの航空機20機が参加した。
 訓練では、逃げる不審船に対して高速特殊警備船が空砲で射撃して停船させたり、火災を起こした船に取り残された負傷者をヘリコプターでつり上げ、観閲船に乗り込んだ招待客約4000人に海保の実力を披露していた。【長谷川豊】
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 日本の記事にある、警視庁など沿岸警備担当部署をはずすことで、中国側の記事では、日本の沿岸警備で”軍事演習が行なわれている”かのように、事実を捏造しているわけである。同じ頃出た、以下の記事では、日本が諜報活動で、東トルキスタンを測量していたり、中国近海で海洋測量をしているという話題が出ている。
 日本再次向中國伸出非法測繪手
 前者は2006年に紹介された記事(真シルクロードさん:新疆ウイグル、ホタンで日本人学者逮捕!(現在は釈放済み))、後者は国連海洋法条約に合わせた「白鳳”號、“拓洋”號、“昭洋”號」などの海洋調査のことで、いずれも事実無根である。
 こうした記事の配置は、何を意味しているか。憶測すれば、実際には存在しない日本の軍事的脅威を捏造し、宣伝するため以外には考えられない。
 一方の、中国はといえば以下のように、続々と新兵器を誇示している。
 2007年5月25日軍事頻道更多頭條
 こうした、中国の軍国主義路線と対日開戦準備工作は、中国のニュースの基本的文脈と考えざるをえない。

2.慰安婦決議案で狂喜する中国
 そうした文脈で読むと、今回の慰安婦決議案に関する、中国の報道は、大変興味深い。
 慰安婦決議案の内容は以下で。
 誰かの妄想さん:アメリカ下院決議案121号(2007年)
 『新華社』、『人民日報』こぞって、記事を出している。列挙すると、以下のようになる。
 『新華社』29日朝・ホームページ一面トップと国際欄
 中方要求日本政府妥善處理“慰安婦”和勞工問題
 本網記者現場紀實:美高票通過“慰安婦”議案
 日裔議員本田:挺身而出推動“慰安婦”議案
 国際欄の中
 日本在“慰安婦”問題上欲蓋彌彰
 決議案が出てから、だいたいこうしたペースで記事が出ている。日本のマスコミでは、『産經新聞』の古森記者の”中国系資金がホンダに流れ込んでいる”スクープを否定する論調が多いが、『新華社』は、以上のように、ホンダの功績をたたえ、その他の民主党議員はあげていない。論功行賞の一つと見るべきである。
 『人民日報』29日朝
 中方要求日本政府妥善處理“慰安婦”和勞工問題
 このサブ記事に以下の記事が出ている。
 美國為何不在“慰安婦”問題上給日本面子
 この記事には多数のリンクがあって、以下のような見出しが並んでいる。
 日本律師向安倍遞交請願書 要求解決慰安婦問題
 日本各界歡迎美眾議院外交委員會第121號決議案
 為罪惡歷史翻案不得人心
 日本44名律師首次聯名要求安倍解決慰安婦問題
 美國會眾議院議長發表聲明支持"慰安婦"決議案
 "大赦國際"歡迎美眾議院慰安婦決議案獲得通過
 美國眾議院通過“慰安婦”問題決議案
 美眾議院通過一項譴責日本二戰中強征“慰安婦”的決議案
 鹽崎恭久稱美國會慰安婦決議案不會改變日方立場
 美眾院外交關係委員會26日有望通過慰安婦決議案
 29日の状況は、以上のようになっている。以下は、決議案が出てから目に付いた、両社の記事である。
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 連線李學江:美眾議院通過"慰安婦"問題決議案:人民日報の特別記事
李學江:我想這個決議案有這麼幾點,首先一個最重要的是一個是把慰安婦的這個問題,受到了一個國際上的廣泛關注,那麼過去尤其是日本輿論把這個問題說成是中國的問題、韓國的問題,把這個問題說成是雙邊關係的問題。那麼美國通過這 個決議案,現在據報導相當多的議員有考慮到這個問題,說明慰安婦的問題在二戰中的暴行不是僅僅是一個中國的關係、韓國的問題,這個是世界的問題,就像猶太 人的問題一樣,這個是世界的問題,所以說這個問題我覺得它的意義是國際化了,引起了世界各國的關注,這個是第一點。
(要点)慰安婦決議案の意義について最初にふれたいのは、国際的関心を集めてきたこの問題は、かつては日本の世論はこの問題について、中国・韓国と日本との関係の問題としてきた。しかし、アメリカでの決議案可決を受けて、問題は、中国・韓国の問題ではなく、世界の問題つまりユダヤ人の問題と同じ様な世界的問題になった。今回の決議案の意義は、国際化にあり、世界各国の関心を呼び起こす、これが第一の点である。
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 美國眾議院通過“慰安婦”問題決議案
 日律師向安倍遞交請願書要求解決"慰安婦"問題
 詳訊:美國眾議院外委會通過有關“慰安婦”問題議案
 “慰安婦”真相的國際戰役
 美將討論“慰安婦“問題議案 日歪曲事實作廣告
 美眾院計畫表決“慰安婦”議案 第9次呼喚正義
 内容は、お知らせするまでもない。以上の要点のように、中国が何を狙っていたか、『人民日報』の記事が端的に示している。「ユダヤ人問題」のように日本の歴史問題を扱う、これが基本的な今の中国の対日戦略で、日本はこうした視点で、中国の謀略に対抗する必要がある。

3.中国の目指すもの
 温訪日で、日本の世論は幻惑されているかもしれないが、こうした中国政府(『人民日報』に代表される勢力)の見解があって、一連の中国歴史問題キャンペーンが行なわれていることを忘れてはならない。そして、中国政府(『人民日報』に代表される勢力)は以下のように、日本を捉えていることも忘れてはならない。
 美國給日本敲警鐘ここには、慰安婦問題と絡んで、以下のような見だして、安倍政権崩壊の可能性が指摘されている。
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 安倍面臨三重考驗
日本共同社12日的文章分析說,安倍政權面臨的三顆“炸彈”分別是:農林水產大臣報假賬問 題;美國眾議院關於慰安婦問題決議案在日本和國際上引起的震動;圍繞全面禁止中央政府機關為退休或離職公務員再就業提供方便問題,自民党與行政改革大臣渡 邊之間發生的衝突。文章說,這三顆“炸彈”正在考驗安倍政府的危機管理和應變能力。
(要点)3月12日の共同通信によると、安倍政権は三つの爆弾を抱えている。農林大臣問題、慰安婦決議案、天下り規制法案での与党内の対立で、記事は内閣の危機管理と字体対応能力が試されるとしている。
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 日農林大臣自殺拖累安倍內閣
 為養老金記錄大量丟失擔責 安倍退還獎金234萬日元
 ここでは、以上のように安倍政権の不祥事を取り上げ、また、慰安婦問題によって安倍政権が崩壊の危機にあると宣伝している。
 さらに、
 特別策劃:美國借“慰安婦”問題敲打日本
 これは3月の記事だが、アメリカは日本を敵視する政策を取り始めていると宣伝している。
 以下は、日本の外交政策を取り上げて、軍事的台頭を目指していると宣伝している。
 関注内外日本外交
 日本第三次崛起路在何方?
 日本媒體對稱中國記者為軍事間諜事件道歉
 以上から、中国政府(『人民日報』に代表される勢力)の対日姿勢をまとめると、以下のようになるだろう。
①小泉政権継承内閣である安倍政権を崩壊させる
②日本が軍国主義化し、人権を無視しているとアメリカの力を借りて宣伝する
③アメリカの力によって日本を押さえつける

4.日本の採るべき道
 以上の三点について、それぞれ考えてみる。
①「小泉政権継承内閣である安倍政権を崩壊させる」への対策
 結局は、安倍首相自身の力量で、切り抜けるしかないだろう。間接的には、国民が、親中派マスコミや似権派の煽動に惑わされず、安全保障を第一に、選挙などで冷静な判断を採るしかない。市民の見識が日本を守るだろう。
 「鈍感力」という小泉首相のことばは、改革を目指す人の名言だと思う。
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年金逆風下の首相 小泉氏エールに「うれしい」 テリー伊藤さんと対談(06/28 08:39)
 安倍晋三首相は二十七日、民放ラジオの番組でタレントのテリー伊藤さんと対談し、七月の参院選で敗北しても首相が退陣する必要はないとの小泉純一郎前首相の発言に対して、「それはうれしい」と述べ、年金記録不備問題の逆風にあえぐ中で、先輩首相からのエールに思わず喜びを表した。
 小泉氏は二十六日に地元の神奈川県横須賀市で行った講演で「安倍さんも落ち込んでいると思うが、この山を越えると、だんだんたくましくなる。一年や二年で総理がクルクル変わったら改革はできない」と首相を激励した。
 首相は「六年近く総理を務められた。総理の重責を十分に知っている方のご発言だなと思った」と小泉氏を持ち上げ、最後まで高支持率を維持した小泉政権にあやかりたいとの思いもにじませた。
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 党を選ぶと思うと、自民党の守旧派も一緒にしてしまうが、60代、50代の指導者層、30代、40代の中堅世代は、安倍氏の迅速な対応力(例、日中外交、慰安婦のアメリカ議会での火消し、年金問題でのわずか2、3週間での行政サービス改革)、卓越した外交能力(これが分かる人は私の同士ですね)を見るべきで、伏魔殿のような内政を評価基準にするべきではない。
 たとえば、松岡農相自殺事件の真相、深層は何か?実は、簡単には分からない。その一方で、内政でも、安倍総理が教育を柱にしたのは、高い見識と言える。
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フリーター多いのは不健全 青少年白書 離職「七五三現象」も実態明記
2007年6月29日(金)16:11 * 産経新聞
 高市早苗少子化担当相は29日午前の閣議で、平成19年版「青少年の現状と施策」(青少年白書)を報告した。学校に行かず仕事も職業訓練もしないニートが18年平均で62万人、フリーターが187万人に上るなど、依然高水準が続いている現状を踏まえ、「社会的自立が困難な若者が多い状況は社会全体にとっても健全とはいえない」と問題視している。
 白書によると、フリーターの数(15~34歳)は、15年の217万人をピークに3年連続で減少。18年は前年比14万人減の187万人となり、ニートの数(同)も前年比2万人減の2万人だった。
 一方、15年春に卒業・就職した人の就業状況では、中卒者の70・4%、高卒者の49・3%、大卒者の35・7%が3年以内に最初の就職先から離れており、中・高・大の順に離職率が高い「七五三現象」として定着しつつある実態が明記された。中卒者の就職後1年以内の離職率はここ数年減少傾向にあるが、17年春卒は44・0%だった。
 白書では、「若者がせっかく職を得ても、自ら抱いたイメージと現実が異なるなどの理由で、数年で辞めてしまう事態が生じている」と指摘。職業観を身に付け、主体的に進路を選択する能力を育てる「キャリア教育」強化の必要性を強調した。
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 調べてみると90年代の『国民生活白書』では、こうした問題はほとんど取り上げられなかった。奈良・平安朝の律令制で言えば、「良民」がどんどん逃散している状態で、市民社会崩壊の危機が実は90年代から進んでいた。小泉首相時代に、やっと夲格的な調査が始まり、対策(再建策)が始まった。問題の所在が分かれば、対応できる。若者はだめなどと言う前に、社会体制が時代から外れていないか、見直すときがきている。安倍氏はそこまで自覚はしていないかも知れないが、変化に目を向けている。民主党のように90年代の夢よもう一度とか、田中派の再来を理想とするようでは、ただ「歴史は繰り返す」だけになっていまう。
②「日本が軍国主義化し、人権を無視しているとアメリカの力を借りて国際的に宣伝する」
 これは明らかに日米同盟崩壊を睨んだ中国の日米離間策で、アメリカ側、日本側双方に見識が求められる。ただ、これは、民主党ヒラリー政権などが誕生すれば、さらに日米関係全体として悪化するだろう。ただし、今、安易に中国・朝鮮の挑発に乗らないことである。日本では、慰安婦決議案だけが、注目されてしまっているが、アメリカ議会の決議案には、各種あり、
 アメリカ下院外交委員会のページでも、決議案がクローズアップされているわけでもない。一方で、中国特別委員会では、毎年報告書が出され、人権問題などが取り上げられている。
 日本では、中国の挑発にのって、歴史問題だけを取り上げるのは、罠にはまるようなもので、もっとアメリカの対中国政策と安全保障政策全体を見ながら、態度を決めても遅くはない。
 肅々と歴史の調査を進めることで、あった事実もなかった宣伝も明らかになるだろう。
③アメリカの力によって日本を押さえつける
 前回、述べたように、アメリカの2008年大統領選挙が、中国の対日戦略の成否を分ける。
 日本の苦難の時代を迎えて(1)─慰安婦決議案とアメリカ大統領選挙─
 多角化外交を進め、アメリカの政界、財界との日常的協議と交流を深めるぐらいしか手はないだろう。私たち一般市民は、もっとアメリカやイギリス、オーストラリア、インドなど同盟関係にある国々の日常を知り、できればチャンスを求めて移民することである。いずれも、英語で生活でき、退職金などで余裕のある世代は、経済移民も一つの選択である(生活は楽ではないでしょうが)。
 一般市民の勉強が、実は、日本の将来を変え、安全を守る。


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